078 芦ヶ久保丸山 [Nov 10, 2018]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

この秋は、伊豆ヶ岳、高山不動尊と続けて秩父(奥武蔵)を歩いたけれど、すぐ奥の芦ヶ久保もたいへん眺めのいいところらしい。期限切れが迫っている北総線休日切符もあったので、土曜日に行ってみることにした。

2018年11月10日、前日は雨だったが、夜中のうちに抜けて行楽日和になるという予報だった。例によって始発で都心に向かう。池袋まで行ってみると、6時半の特急がない。なんと、休日には6時50分まで特急はないのであった。

15分後の準急は飯能までだが、45分後に三峰口直行の快速急行がある。45分も待つのは何だし、飯能まで行けば接続があるだろうと思って準急に乗る。ところが飯能まで行くと接続は30分後で、結局池袋始発の三峰口行きになってしまうのであった。

(ちなみに、昔は快速急行という区分はなかった。以前の感覚だと「急行」と「準急」の間のように思うけれども、実際は特急料金のかからない特急というニュアンスである。最近ようやくこの名前に慣れてきた。)

芦ヶ久保に着いたのは午前8時半過ぎ。始発電車から3時間半後である。奥多摩に着くのもこれくらいの時間だから驚くことでもないが、最近、朝の移動が辛くなってきた。3時間を超える移動は歩く前からだるい。

前回、前々回は車移動だったり平日だったので、8時前には歩き始めることができたが、こういう体調で歩き始めるのはよくない。注意力が散漫になり、ケガでもしたら大変である。ちょっと考えなくてはならないと思った。

芦ヶ久保駅は結構下りる人がいた。天気は予報通り晴れだけれど、前日の雨でベンチが濡れている。乾いているところにリュックを下ろして身支度をする。今回参考としたのは西武鉄道推奨の「あしがくぼ果樹園村から丸山へ」である。

ルートはあえて逆回りにした。西武鉄道推奨のルートだと、日向山という隣山のコースと重なって混みそうな気がしたためである。国道を正丸方面に向かうと誰もいない。バイクやサイクリストが下りてくる逆方向に黙々と登って行く。

30分ほどで、集落に入る分岐となる。引き続き登り坂だが、傾斜は急になる。集落から登山道への入口に、「熊注意 11月1日にこの付近で熊の目撃情報がありました」と貼り紙がある。11月1日ということは、つい先週である。なぜこんな人里近くに熊が、と思っていたら、すぐ先にいくつか蜂の巣箱が置いてあった。冬眠前に蜂蜜を狙ったのかもしれない。

登山道はしばらく急登した後、ゆるやかな坂になる。そのまま谷川にかかる橋を3つほど越えて歩くけれども、なかなか先が見えてこない。川の近くを歩いているということは、本番の急登はこれからである。登山道に入って30分以上歩いたので、谷川沿いの広くなっている場所で一息つく。

このあたりは北向きの谷になっているのか、ずいぶん暗い。サングラスをかけていたので、普通のメガネに戻す。すぐ上の斜面に巨石がある。あれが転がってきたら木の2、3本じゃ支えにならないだろうと思う。水分補給して出発。ゆっくり休むのは、もう少し日当たりのいいところがいい。

予想通り、そこからスイッチバックの急登が始まった。ひとしきり登って谷からは抜けたのだけれど、行く手には植林された杉の木立がずっと上まで続いている。第一目的地の大野峠は標高850m、芦ヶ久保駅ですでに300mあるからそんなに標高差がある訳でもないのだが、なかなか峠地形が見えてこない。

ああ、これは体調がすぐれないせいだと乗り継ぎがうまくいかなかったことを後悔するけれども、悪いのは下調べを十分しなかった自分である。上を見ると落ち込むので、足下を見ていまの一歩に集中する。

ようやく峠地形が見えてきたのは、登山道に入って1時間半、芦ヶ久保からは2時間以上が経過した午前11時近くだった。左から尾根が下りてくるところまで歩けばあとは楽になる。そう思って進むと、その先は平らになり、車道をはさんで東屋があった。

たまらず、東屋にリュックを下ろす。水分とともに、エネルギーゼリーで栄養を補給する。最近は、昼食にパンとかご飯を用意せず、カロリーメイトやゼリー、フルーツパックですませることが多い。そのため、EPIガスも持ってこない。荷物が軽くなるメリットがある。

5分ほどして登ってきた単独行の女性が、東屋に寄らずにそのまま登山道を登って行った。私がいるから嫌だったのかなと申し訳なく思ったが、多分そうではなくて、あと10分歩かないうちに絶景の休憩ポイントがあったからなのだ。東屋を出発して間もなく、私もそれに気づくことになる。


国道から集落に入ると、まもなく熊注意の貼り紙が。こんなところに熊と思ったら、付近に蜂の巣箱がありました。


登山道に入って1時間半の苦闘の末、ようやく峠地形が見えてきた。


大野峠の東屋。車道の脇にある。登山道で疲れたのでここで休んだのは仕方なかったが、10分先に絶景が。

 

西武鉄道のHPに乗っているコースマップに「短いけれどこのコースで一番の急傾斜」と書いてある階段を登る。傾斜よりも、土止めの奥に入れてある土がなくなっている(整備から月日が経ったコースによくある)ので歩きにくいが、書いてある通りそれほどの距離はない。

登り切るとそこは開けた広場になっていて、絶景としか言いようがない場所である。隅の方に「こまパラグライダースクール」の看板があったのでパラグライダー場なのだが、やっている人がいないので展望広場となっている(伊豆の葛城山を思い出した。よく似ている)。

まだ東屋で休憩してから10分も経っていなかったが、あまりに景色がいいのでリュックを下ろす。風もなく、いい天気で申し分ない。3、4組がお昼休みをとっていた。午前11時を過ぎて大分回ったので、影のできる方向が北である。開けているのは右、つまり東である。

埼玉県西部には、あまり土地勘がない。川越には何度か来たことがあるが、それ以外で東北道より西に来たことはほとんどない。関東平野はたいへん広いので、どこがどこやらよく分からない。

もっといえば、この秋何回か秩父の山に来るまで、飯能と寄居の区別がよく分からなかった(どちらも秩父の入口という認識)。いまでも、八高線がどこを通っているのかはっきりと知らない。関越道の経路ということは知っているけれども、所沢と川越と熊谷の位置関係には自信がない。

そんな私だけれど、この眺めがすばらしいことはよく分かる。正直言って、新宿の高層ビルが見えるとかスカイツリーが見えるとかいうことに、それほど感慨は覚えない。実物をいくらでも見ることができるからだ。名前も知らない町や川が一望のもとにある(私が知らないだけだが)、これこそすばらしいことである。

左(北)側を見ると、アンテナが立っているピークが2つ見える。あれが丸山かなと思って見ていたのだが、帰ってから調べてみると白石峠をはさんで874ピークと堂平山らしい。堂平山の方は、拡大してみるとドームのようなものが見える。丸山はもっと左にあって、この角度からは見えない。

しばらく景色を楽しむ。カップルで来ている男は先ほどから、携帯電話で大声をあげて会話中である。さりげなく、後方に移動する。口は前についているので、後に行くのが唯一の対策だ。近くに他人がいるのにそれを気にしないというのは、ネット社会以前からそこら中にいるノータリンである。

私同様シニアの単独行は、無線かトランシーバーのアンテナを長く伸ばしている。さらに騒がしい中高年女性グループが上がってきたので、名残り惜しいが腰を上げる。考えてみればこの日は土曜日である。静かなのがよければ、私が平日に来ればいいだけのことだ。

パラグライダー場から丸山までは、大好きな起伏のない尾根歩きだった。1/25000図をみると何ヵ所かコブがあったのだが、それが気にならないくらいなだらかだった。いつもこういう場所を歩きたいのだが、標高差600mを登って来ないとこの感激は味わえないのである。

最後にパラボラアンテナが見えてからの坂が急だったが、それ以外は本当になだらかで、あっという間の30分だった。アンテナ設備の高さまで登ると、そこから先は平坦になっていて、やがて林の向こうから山頂らしからぬ構造物が現れる。

「二階建ての異様な建物」と西武鉄道が述べるところの、丸山展望台である。


大野峠上のパラグライダー場からの絶景。開けているのは東側だけですが、丸山山頂に勝るとも劣らない。


同じ場所から北を望む。アンテナが立っているのは丸山かと思ったら、堂平山らしい。


大野峠から丸山は、快適な尾根歩き。この時点では天気もよく、あとは下るだけだと安心しきっていた。

 

日本宝くじ協会の寄贈による展望台に上がる。昭和55年というから私が就職した年で、まだバブル以前の第2次オイルショック直後である。建物の資材そのものは億単位までいかないだろうが、どうやってここまで運び、工事したのか興味深い。おそらく資材はヘリで、人は県民の森から登ってきたのだろう。慣れれば15分ほどだろうか。

360度展望が開けているのは、さすが埼玉県指定記念物「外秩父丸山の展望」である。「外秩父」という区分けは聞いたことがなかったが、それは埼玉に土地勘がないためかもしれない。ただ、展望台がないと、関八州展望台ほどの眺めがある訳ではない。

展望台上は望遠鏡が余計なような気がしたが、確かにいい景色である。秩父方面が逆光なのと、雲がかかって両神山が隠れているのは残念だったが、特に群馬方向の眺めがよかった。榛名山や妙義山がよく見えた。

展望台の周りには、多くのハイカーがお昼を広げていた。こんなに歩いてくる人がいるんだと意外に思ったが、近くに駐車場があるのでおそらくそこまで車を使ったのだろう。それでも、そこから20分、標高差50mほどは登らなければならない。

本日最高点の丸山だったが混んでいるので、ベンチでフルーツパックを食べて早々に出発。ここから先は行先表示にしたがって森林館に向かう。直接下りるルートもあるらしいが、よく分からなかった。駐車場との分岐から車道歩きで、20分ほどで森林館に着く。

こちらは展望台と違ってひと気がなく、常設展示もあったが誰もいなかった。しかし、標高900mの場所で麓と同じ値段の自販機が置いてあるのはうれしいことで、炭酸飲料を飲んで一息つく。ここは、12月から冬の間は休業になるようだ。

森林館からは「芦ヶ久保駅」の表示にしたがって進む。しばらくは埼玉県民の森の立派な歩道だが、しばらくすると登山道に入る。この登山道、1時間ほどの間に標高を400~500m下げるので、たいへん傾斜が急である。

しかも、地面には落ち葉が積もっていて、その下は岩まじりの地盤で、うっかり踏み込むとつるっと滑る。まるでスキーのゲレンデのようで、ボーゲンのように斜面を斜めに歩かなければならなかった(おかけで、翌日ヒザが痛くなった)。

そして、登りでもそうだったが、行先表示はあるけれども距離が書いていない。1時間ほど下りたところにようやく、「丸山山頂2km 芦ヶ久保駅2km」とあったのでそのくらいだろうと思って安心したら、すぐ近くの別の案内には、「果樹園村1km 芦ヶ久保駅9km」と書いてある。いくらなんでも9kmもある訳はなく、実際そこから40分ほどで着いたので、謎の距離表示であった。

果樹園村といってもテーマパーク的なものではなく、果樹園農家が点々と続くだけであるが、そのあたりからは曲がりくねった舗装道路である。傾斜が半端なく急で、とてもすたすたと歩くことはできない。

ずっと下の方に、芦ヶ久保の駅と止まっている電車が見える。そして、目の前には武甲山の削られた山肌が迫っている。森林館を出る頃から日が陰り、黒い雲が急に広がって今にも降り出しそうになった。ひやひやしながら下ったのだが、丸山頂上では逆光だったのでかえって見やすくなった。

登山道に入って1時間半、丸山山頂からは2時間ほどで道の駅あしがくぼに着いた。ここで特筆すべきは、道の駅にシャワーがあるということである。HPにそう書いてあったのだが、一通り見てもそれらしきものは見つからない。仕方なく事務室に行って聞いてみると、「ありますよ、こちらです」と事務室の奥に案内された。

1室だけのシャワールームだが、着替えるスペースもあってお湯はすぐ出て来る。休暇村の日帰り温泉は終わっている時間だったので、たいへんありがたかった。料金は10分200円、延長5分毎100円とたいへん良心的であった。

この日の経過
芦ヶ久保駅(346) 8:40
10:00 巨石下休憩スペース(510) 10:10
11:00 大野峠(848) 11:10
11:20 ハンググライダー場(900) 11:30
11:55 丸山(960) 12:15
12:45 森林館出口(914) 12:45
14:10 道の駅あしがくぼ(312)
[GPS測定距離 10.7km]

[Dec 24, 2018]


丸山山頂の展望台。登ると、360度の展望が開けている。でも、すぐ下に駐車場があるので、お弁当を広げる人で一杯。


丸山からの下りは、急傾斜のうえ、落ち葉の下がすべる岩場でかなりハードでした。翌日ヒザが痛かった。


この回り方だと、目の前に武甲山をずっと見ながらの下りとなります。丸山山頂では逆光だったけれど、曇ってきてはっきり見えた。