3月は3日置きに雨が降って、まるで1月の水不足を取り返すような勢いだった。晴れた日にも突風が吹いたりして、出歩くには向かない天気が続いた。山歩きもしばらくおあずけである。
ようやく風がおさまった3月半ば、久しぶりに本埜村を歩いてみた。退職間際に単身赴任があってばたばたして以来歩いていなかったから、かれこれ4年振りくらいになるかもしれない。
家から10分も歩くと一面の田圃である。昔と比べてイノシシ除けの電線が増えているが、それだけ田畑を作っているということでもある。このあたりの田植えはゴールデンウィークで少し先だが、すでに何台かのトラクターが出て代掻きや畦塗りをしている最中であった。
しばらくぶりで歩くので、どこがどう続いているのか忘れてしまった。ずいぶん歩いて旧・村役場の近くまで来たのに、何となく以前の景色と違う。いつも目印にしていた巨木が見当たらないのである。
向こうから下りてくる坂の下にあったはず、とそのあたりを探すと、なんと、すでに地上数十cmのところからばっさり伐られているのであった。しばらく来ない間に、こんなことになっていたとは。
この巨木は2013年のNHKドラマ「アンと花子」のロケに使われた榎の老木で、樹齢100年は優に超えている大木であった。すでに4年前の時点で、「幹にはうろができて中が傷んでいる。また、根に近い部分はコケで青くなっている。枝振りはすごくいいのだが、一部の枝は枯れかけている」と書いているような状態だった。
それでも、「私よりは長生きするであろう」と書いたのだが、強風に耐えられなかったのか、それとも安全上の観点からなのか、伐採されてしまっていた。ありし日の姿を思い、なんともいえない気持ちになる。月日は移ろうのである。
つい最近読んだ本(金副隊長の奥多摩の本)に、「巨木には尊厳死がふさわしい。うろに詰め物などせず、人知れず倒れて朽ちるべきである」と書かれていて、全くそのとおりだと思った。
いつまでもあると思っていたのに、しばらくぶりで行ってみるとなくなっていた、というのは悪くないことではないかと思ったりする。
[Apr 17, 2019]
本埜村のランドマークとなっていた榎の巨木「アンと花子の木」、しばらく行かない間に伐採されていました。
ありし日(2014年秋)の「アンと花子の木」。遠くからでもよく目立って、お散歩のときにはたいへん心強かったのですが。