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奥多摩の山歩き

113 槇寄山・笹尾根 [Nov 17, 2021]

この図表はカシミール3Dにより作成しています。

2021年10月は3日ごとに雨が降り、朝晩も冷えて山という天気ではなかった。11月に入りいい天気の日が続いたのだが、10月の低温が響いて日光の山の上はすでに氷と雪だった。紅葉の前に雪、順番を間違えた気候である。

それでは、毎日天気だからいつでも山に行けるかと言うと、そういう訳にもいかない。この11月は、コロナワクチンの接種があって日程に制限があった。結局、10日間隔で日光鬼怒沼、赤杭尾根、今回の笹尾根と3連闘になった。

2021年11月17日、今回は奥多摩の奥の方になるので、日帰りには無理がある。そうでなくても、前回の赤杭尾根は朝3時起きでつらかったし、目標だったエビ小屋山まで到達できずに撤退している。いつまでも若くはないので、前・後泊することにした。

選んだのは東横イン秋川駅北口。ビジネスホテルに泊まるのは、お遍路の時以来になるだろうか。大き目のバッグに着替えとリュックと山荷物を詰め込み、当日はリュックに必要なものだけ持って歩く計画である。

秋川駅から始発に乗って武蔵五日市へ。バスは6時18分発の数馬行。これは朝2のバスだが、5時台のバスは五日市に泊まらないと無理である。乗客は2人、その1人は上川乗あたりで下りた。私の向かう笹尾根に、もっと遠くから登るのかもしれない。

7時10分過ぎに登山口のある仲の平に到着、身支度を整えて7時20分登山開始。バス停からしばらく集落の中の舗装道路なのだが、これがまた急傾斜でいきなりしんどい。前泊したので体は楽だけれど、急坂に足腰が痛む。

このあたりの民家はまだ人が住んでいる。バスでJR駅から1時間入ったにもかかわらず、どの家にも軽トラが止まり、すでに活動し始めている家もある。いちばん上の民家の右に、登山道が続いている。ここでようやく、傾斜がゆるやかになった。

この日前半戦の槇寄山(まきよせやま)の登りは、バス停から最終民家までが一番きつく、登山道に入って少し緩くなり、大平(数馬)からの登山道と合流してさらに緩くなる。登り始めが一番きつくて、だんだん楽になる面白い登りである。

この登りのコースタイムが、吉備人地図では1時間55分である。アルパインガイドの1時間35分とかなり違う。吉備人地図はコースタイムが相当いい加減なのだが、私だってこんなにかからないという設定であった。

この尾根は槇寄山北東尾根といい、標高が上がるにしたがって歩きやすくなる。地元の人が作ったらしい「国定忠治遠見の柱」(マジックで書いてある)が立つけれども、もちろん上州まで見えるわけではない。谷越しに浅間尾根が見えるだけである。

数馬から登ってくる大平分岐を過ぎると、小ピークを巻くトラバース道が続く。最後は急登を覚悟したのだけれど、そんなこともなく西原峠到着。西原(さいはら)とは、峠の向こうにある上野原の集落名である。

西原峠からひと登りで槇寄山到着。9時5分だから、登り始めて1時間45分である。吉備人の1時間55分を参考としていたから、予定より相当早く着いてしまった。

頂上には三角点と、テーブル付のベンチが2脚置いてある。私ひとりではもったいないくらいの広さである。風もなく日が差してきて穏やかだが、三頭山の方向を見ると雲が峰を隠している。この日までは好天という予報なのだが、山の上に来るとそうでもないみたいである。

仲の平バス停を下り、笹尾根を見上げる。一番奥に見えるのが槇寄山だろうか。

槇寄山までの登りで一番きついのは集落の中である。民家の間、急傾斜の舗装道路を登りつめて、登山道に入ってようやく傾斜が少しゆるくなる。

大平(数馬)方面からの登山道と合流した後は、ほとんどが小ピークを巻くトラバース道。それほど息が上がらずに西原(さいはら)峠を経て槇寄山に到着。

槇寄山からの笹尾根は、これぞ尾根道という感じのすばらしい歩き心地である。

なだらかなアップダウンで息があがるような場所はなく、木々が展望をさえぎっている点だけが玉に瑕である。しかし、楽なのは2つ3つ起伏を越えてクメタケタワの表示のある道標までで、そこから先は急登が始まるのだった。

それは、事前に1/25000図を見て見当はついていたのだけれど、実際に急登が始まるとこれまでがゆるかった分余計にきつく感じる。そして、最初は傾斜がきついだけだったのが、次第に岩交じりのとがった斜面となる。

木間から見える三頭山方面の稜線の高さまで来たと思っても、まだまだ登りは続く。この日の登りでは、バス停から集落内の舗装道路と、クメタケタワからハチザス沢ノ頭までのここの登りが一番きつかった。

とはいえ、槇寄山からハチザス沢ノ頭まで、吉備人地図には1時間45分と書いてあるので、きついのは当り前と覚悟していた。とはいえ、このコースタイムも大甘だった。クメタケタワまで25分、そこからハチザス沢の頭まで45分、合計1時間10分で着いてしまったのである。

この日は前泊したのでいつものように長い電車の疲れもなく、夜中に起きて早出した訳でもないのでテンポよく歩けたというのはあったにせよ、私レベルでコースタイムの7割なんてことは考えにくい。吉備人がちゃんと計っていないに違いない。

さて、いくつかの急登を乗り切ってハチザス沢の頭で都民の森に出た。右左に行先案内が林立し、ベンチが2脚置いてある。ここで一息つくことにしてリュックを下ろす。まだ10時半にならないけれど、テルモスに入れてきたお湯でインスタントコーヒーを淹れる。

お昼にしたのは、ファミマの練乳クリームフランスパンである。このところ、ヤマザキランチパックからバケット風に好みが移行している。引き続き風もなく穏やかだ。振り返ると、今来た急傾斜への登山道入口に「ここから先は都民の森ではありません」と書いてある。

都民の森でないからといって登山道がきちんとしていない訳ではないが、ここから先でケガとか道迷いしたら自己責任になりますということであろう。そういえば、奥多摩湖方面のハチザス山に向かう場所でも、そう書いてあったことを思い出した。

都民の森の方向から、2人3人と登ってくる人達がいた。仲の平から槇寄山を経てここまで、民家の庭にいた地元の人以外とは誰とも会わなかったのに、さすが都民の森である。直通バスでこの時間はきついだろうから、車で来た人達だろうか。

ハチザス沢の頭から大沢の頭まで標高差でさらに100mほど登るが、都民の森だけあって路面は歩きやすく遊歩道といった雰囲気である。ここは「深山の道」という遊歩道で、そう書いた看板がいくつか立っている。

大沢の頭は1482mの独標点で、都民の森では「大沢山」と表記してある。三頭山への稜線でここがひときわ高くなっていて、周囲の展望も開けていい景色である。ここにもベンチが置いてある。

山梨方面の峰々もよく望めて、雲が少なければ富士山も見えるのかもしれない。この日は残念ながら、2つ向こうの道志くらいが限界で、そこより遠くは見えなかった。そして、さらに人が増えてきた。ここから少し下った鞍部付近に、避難小屋があるはずである。

槇寄山からの笹尾根は、クメタケタワという地点を過ぎると途端に急傾斜になる。1/25000図で見当はついていたんだけど、やっぱりきつい。

ハチザス沢ノ頭で都民の森の標識に出会う。登ってきた方向には、「この先は都民の森ではありません」と書いてある。そういえば、ヌカザス山方面にもそう書いてあったなあ。

さすがに都民の森に入ると、登山道というより遊歩道らしくなる。この日の最高標高となる大沢ノ頭1482m(都民の森では「大沢山」と表記)付近では、景色が開けて眺めがいい。

大沢の頭から坂を下っていくと、5分とかからずにログハウス風の屋根が見えてくる。三頭山避難小屋である。

奥多摩近辺の避難小屋はどこも大きくて立派だが、この三頭山避難小屋もたいへん立派な造りである。御殿山避難小屋や鷹ノ巣山避難小屋より大きいのではなかろうか。

中に入ると土間とテーブル、一段高く広い板の間がある。そして、壁を隔てて、水洗ではないがトイレも備えられている。寒い時など、小屋の外に出なくてもトイレに行けるようになっている。

しかしながら入口ドアに貼り紙がしてあって、「新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、当面の間、緊急時を除き、避難小屋の使用を控えてください」と書いてある。緊急時として想定されているのは大雨や雷など急な天候急変だろうから、普通に歩いてきてここで宿泊するのはやめてくれということであろう。

とはいえ、知らないでここまで来てこの貼り紙を見たとしたら、都民の森に車を止めていなければ麓まで下りることは難しい。もう暗くなって危ないという意味で、緊急時に含まれるのだろうか。

トイレには小さなタンクが置かれていて、「使用時にはタンクから水を流してください」とあるのだが、残念ながら空であった。「親切な方は空になったら汲んできてください」とも書いてあるが、残念ながら水場の位置は書いてない。まさか、標高差200mほど下りた沢沿いの水場ではないだろうけれど。

原則として使用自粛とのことだから、中の様子をちらっと見ただけで失礼する。避難小屋から下りてすぐのところがムシカリ峠で、まっすぐ進むと三頭山、右に折れると三頭の滝方面の分岐である。

三頭山は前回登ったので、ここで下りる予定であった。ただ、道案内に「三頭大滝まで30分」と書いてあったのは予想外だった。まだ11時半過ぎ。大滝まで30分で下りられるのなら、予定の1本前のバスに余裕で間に合う。

結論から言うと、都民の森がどういう考えであの表示をしているのかまったく不明で、吉備人地図でさえ50分と書いてあるのだからせいぜい40分だろうと思う。もちろん私も30分なんてとんでもなく、50分近くかかった。

大滝まで下りる登山道は三頭沢沿いに続いていて、下りるにしたがって水量が増える。20分ほど下りたところにポリバケツに沢の水を集めた場所があって、おそらくここが避難小屋の水場だろう。盛大に水が出ていた。

傾斜が急なのと足元が石畳なので、滑りそうでスピードが出ない。「下りでは転倒しないよう注意してください」とわざわざ書いてある。そんなことを言うくらいなら、「大滝まで30分」などと案内するなということである。

12時半に三頭大滝着。ちょうど滝に対面して滝見橋という展望台兼の橋が架けられていて、たいへん迫力がある。混んでいる時にはここに大勢並んでしまうのだろうが、この日は私の他に2、3組しかいなかった。

三頭大滝からメイン施設の森林館まで、ウッドチップの平坦な遊歩道が15分ほど続く。森林館からエントランスまでは下り坂なので5分ほどで着き、予定1本前の1時5分発の連絡バスには、15分ほど余して下山することができた。

私の山行で、計画より短い時間で下りることなどほとんどない。今回は参考とした吉備人地図のコースタイムがあまりに余裕含みなのが大きな要因だったが、スケジュールにも余裕があったのがよかったように思う。前泊・後泊付けた時に限って、予定より短く下りてこられるというのはちぐはぐなような気もするが。

あと、今回の山で驚いたのは、これまでとは比較にならないくらい水を飲まなかったことである。

約6時間の登り下りで500mlが余ってしまった。そういえば、前々回の鬼怒沼、前回の赤杭尾根も用意した水を余したのだが、ペットボトル1本で足りたというのは自分でも体質が変わってきたと思う。かつては、水がなくて死ぬ思いをしたのだ。

今回の場合、下山途中に水場があるのが分かっていたから、リラックスしてのどが乾かなかったという要素もあるだろうが、なんといっても大きいのは10kg超の減量である。

肉の荷物が減ったのに加え、やたらと持っていた水を減らすことができれば、さらに登るのが楽になるはずである。

この日の経過
仲の平バス停(670) 7:20
8:20 大平分岐(965) 8:20
9:15 槇寄山(1188) 9:20
10:10 ハチザスの頭(1400) 10:20
10:45 大沢の頭(1482) 10:50
11:10 三頭山避難小屋(1433) 11:20
12:20 三頭の滝(1100) 12:25
12:50 都民の森エントランス(995)

[GPS測定距離 9.0km]

[Feb 7, 2022]

三頭山避難小屋は大きくて立派。トイレも水洗ではないが小屋の中にある。ただし、「コロナのため緊急時以外は小屋の利用を控えてください」とのこと。

避難小屋のすぐ下にあるムシカリ峠には「三頭大滝まで30分」と書いてあるが、とてもじゃないがそんな時間では着かない。吉備人地図の50分が普通の人の足で着く時間。

三頭大滝。正面に「滝見橋」という展望台兼の橋があって、かぶりつきから見ることができる。ここから都民の森エントランスまで約20分。