カテゴリー
books

380 リチャード・ワイズマン「超常現象の科学」 [Feb 17, 2022]

先月、「魂はない幽霊もいない」の記事を書いた時には、脳に関するいろいろな本を読んで考えたのだけれど、記事をupした後になって図書館でこの本を見つけた。

思わす、自分には予知能力があるのかと思ったが、もちろんそうでなくて、記事を書いた時に考えていた痕跡が脳のどこかに残っていて、関連がありそうな本の題名に注意を引かれたということであろう、それにしても、どんぴしゃのタイミングであった。

この本には、かつて超常現象と言われていたいくつかのケース、占い、幽体離脱、念力、霊界とのコミュニケーション、幽霊、マインドコントロール、予知能力について、実は脳の働きにすぎないということを最新の実験結果をもとに解説している。なるほど、心霊写真やこっくりさんを見なくなったはずである。(あと残っているのはUFOくらいだろう)

TRICKで阿部寛の役どころだった「本物の超常現象を見せたら賞金をさしあげます」というのも、米国で放送されたTV番組で実際にあった話である。1960年代に1000ドルだった賞金は1990年代には百万ドルまで引き上げられたが、いまだ賞金を獲得した人はいないという。

かつて心霊現象とか超常現象といわれた事象の多くはインチキ(注目を集めるためにトリックを用いた)であり、ポルターガイストなんてものはない。占いや読心術はコールドリーディングと呼ばれるテクニックであり、著者はこの本の中でタネ明かしをしている。

「人間は自分の見たいものを見る」というのは比喩ではなく、人間が進化する過程の中で、視覚から入ってくる膨大な情報の中から瞬間的に必要な情報を取り出すためにはパターン化をする必要があったからだという。

だから、幽霊を見たとか金縛りに遭ったとかいう経験者を調べると、そうしたパターン化の能力がすぐれていることが多い。つまり、獲物を見つけたり危険を察知する能力が高く、生き延びるのに有利な素質を持っていたということである。

よく言われる「この目で実際に見た」というのも、目から入ってきた情報を脳で処理した結果である。視神経では、白と黒、青と黄色、赤と緑は同時に見ることはできない。同じ視野で見たと思っているのは、脳で情報処理したからである。

だから、「見た」と思ったものは実際にあるものではなく、脳でそう認識したからかもしれない。他人に見えず自分にしか見えないものは、たいていそれなのかもしれない。目がいい加減なのではなく、脳の処理が個人個人で違うからである。

著者のリチャード・ワイズマンは英国のロンドン大学を卒業した大学教授で心理学を研究しているが、学者になる前はプロのマジシャンとして活動していたというから面白い。”wise man”(賢い人)という名ファミリーネームも芸名なのかと思ってしまう。

語り口は非常にフランクで、最初のうちは竹内久美子的な軽口コラムかと思って読み進めるのだが、実際は最新の実験結果や知見、科学者の共通認識を分かりやすく説明してくれる。その昔、超心理学に興味をもった頃を思い出してなつかしい本である。

[Feb 17, 2022]

「魂はない」の原稿を書いた後に図書館で見つけた本。自分で書いた内容を裏付ける内容だったのでびっくりした。とはいっても、私に予知能力があるのではなく、関心を持っていた分野なので目についたということでしょう。