すぐそばに来ているインフレ

おすすめ
この記事は約4分で読めます。

最近、クレディ・スイス銀行の経営危機が表面化し、同業大手のUBSに買収されることとなった。米国でも金融機関が破綻している。原因は過剰貸し出しとかそういうことではなく、金利上昇による債券価格の下落である。

金利上昇により経営が悪化するのは日本の銀行も同じなのだが、なぜかわが国のメディアには危機感がない。以下は2021年5月に書いた記事。
——————————————————-

自分でもよかったと思うのは、リタイアする何年も前から年金生活の準備をし、そうなった場合に備えてシミュレーションや予行演習を怠らなかったことである。その意味で、いま考えておかなくてはならないのはコロナ後に何が起こるかである。

もちろん、何も起こらないでこれまで同様の生活が送れるのなら問題ない。しかし、リスクがあってその確率は小さくなく、一方でほとんどの人がそれに向けて準備をしていないという場合、えてして何か起こってしまいがちなのである。

GW前後はステイホームが推奨されたので、図書館に行って何冊か本を借りてきた。1年前の今頃は図書館が閉鎖になってしまったが、今年はオープンしているのがいいか悪いか分からないけれど、それはさておき借りてきたのは野口悠紀雄先生の本である。

野口先生には40年前、会社のいわゆる「背広ゼミ」で半年間教えていただいた。だからおそれ多くて呼び捨てにはできない。

その中で、現在まさに行われている異次元金融緩和について書かれていて、その本質は国債を日銀で引き受けて実質的な債務から逃れようとするもので、歴史の教えるところ、いずれインフレを招かざるを得ないという。

異次元金融緩和前の2013年3月末、日銀の保有する国債残高は94兆円、国債残高に占める割合は11.6%であった。この本の書かれた2018年9月末には、それが455兆円、45.7%に急増している。

現在はさらにすごいことになっていて、今年3月末では532兆円、推定で57%程度である。バランスシートの反対側は日銀当座預金の増、つまり、金融機関が日銀に置かされている残高で、預金者から金融機関に支払い請求があればすぐにお札になる。

つまり、金融機関全体のバランスシートを合算すると、国民が預けた巨額の預金は、知らない間にほとんどすべて国債となり、政府の支出に使われているということである。みんなが払い戻そうとしたら、いっぺんに足りなくなる。

そして、国債の総残高はもうすぐ1000兆円。GDPが540兆円くらいだから、その倍である。税収が60兆円弱、約30兆円は年金とか福祉関係にあてられるから残りは30兆円、利率3%になれば全部利払いで飛んでしまう。

もちろん、日銀が実質的に引き受けているということは払った利息は政府に戻るということだし、税収が足りなければ消費税を上げるんだろうからそう簡単には破綻しないが、危ない綱渡りであることは間違いない。

過去の歴史は、こうした政策はいずれ悪性のインフレを招くと教えている。実質成長率は2%とか3%なのにマネーサプライが年率5%以上増えていて、お気楽な日銀総裁が「物価が2%くらい上がらないのはおかしい」と言っているのだが、いずれその分まとめて上がるに決まっている。もう7~8年になるから、一気に15%とか20%くらい上がることになりそうだ。

今そうならないのは、デフレはまだ続くと国民が(マーケットが)思っているというそれだけの理由である。新貨幣理論とかいろいろ後付けで理屈は考えられているが、実際は、「みんながそう思っているからマーケットがそうなっている」という同義反復的で根拠薄弱な理由に過ぎない。

何か予期しないアクシデントが起これば、一気に貨幣価値は下がる。GDPはたいして増えていないのに貨幣供給が倍近くなっているのだから、ものの値段が上がらざるを得ない。1万円で買えるものが来週は1万2千円になるなら、みんな今週買おうとする。そういうものである。

その時になって「商品は十分あるので買いだめ・買い占めはしないようにしましょう」といったところで、マスクに殺到しユニクロに殺到し、かつてはトイレットペーパーに殺到した国民が理性的に動けるとは思えない。値上がりは値上がりを呼び、金利は上昇し、インフレが急拡大するまで時間はかからないだろう。

ご関心があれば続きはこちら
なんとなく思うこと、バックナンバーはこちら

にほんブログ村 ニュースブログ ニュース感想へ
にほんブログ村 シニア日記ブログ 60歳代へ