093 ロマチェンコ、ライト級統一 [Dec 8, 2018]

WBA/WBO世界ライト級タイトルマッチ(2018/12/8、ニューヨークMSGシアター)
Oワシル・ロマチェンコ(11勝9KO1敗) 1.06倍
ホセ・ぺドラサ(25勝12KO1敗) 12.5倍

いまや、実力的にも興行的にも、ボクシング界の中心にいると言っていいほどの勢いにあるロマチェンコ、リナレス戦の次はいきなり統一戦である。相手は、ベルトランを完封したペドラサであるが、正直なところ役者が違うだろう。 “093 ロマチェンコ、ライト級統一 [Dec 8, 2018]” の続きを読む

091 村田、ラスベガスで大差判定負け!! [Oct 20, 2018]

WBA世界ミドル級タイトルマッチ(2018/10/20、米ラスベガス)
O村田諒太(14勝11KO1敗)
  ロブ・ブラント(23勝16KO1敗)

村田2度目の防衛戦は、ラスベガスで行われる。パークシアターは昔のモンテカルロだから、MGMグランドからはNYNYを挟んで結構近い。私ごとになるが、ホプキンスvsデラホーヤを見てからリゾカジオフ会に向かったルートである。たいへんなつかしい。

HPをみると収容人員5200人というから、そこそこのキャパシティである。村田がこの会場を埋めることができるかどうか注目だが、なんといっても電通所属の総合スポーツタレントだから、日本からも行くだろうし現地駐在員にも総動員をかけて何とかするのだろう。

ボクシングの試合に話を戻すと、相手のロブ・ブラントはWBA3位である。1位はレミュー2位がGGGだから、チャンピオンクラスを除くと最上位にランクされているが、逆に言えばチャンピオンクラスではない訳で、GGGやカネロを目標とする村田にとって勝たなくてはならない試合でもある。

両者の戦績をみると話はそう簡単ではない。ブラントはたいした相手と戦っていないが、それは村田も同じことである。ブラントはヨルゲン・ブレマーに判定負けしているが、村田もヌジカムに1度は判定負けしている。ヌジカムよりブレマーの方が強いが、ブラントは大差負け、村田は論議を呼ぶスプリット・デシジョンだった。

とはいえ、戦績をよくみると、ブラントはラスベガスでの試合は初めてである。村田はアンダーカードとはいえトーマス&マックセンター、MGMグランドで戦っているので、場慣れしているというか、アウェイであることはあまり考慮しなくてもよさそうである。

私はこの試合、村田がどういうスタイルで戦うかに興味がある。試行錯誤でいろいろなスタイルを試してはきたものの、結局はガードを固め体力を生かして前に出るという単純明快なスタイルが村田には一番合っているようだ。

となると、武器としてはまっすぐのパンチ、ジャブとストレートしかないのである。前回のブランダムラのようにそれで恐れ入る選手であればKOできるのだけれど、水準以上のディフェンスと打たれ強さがある選手には通用しない。

同じクラスのチャーロ兄も体力で圧倒するタイプであるが、村田と違ってパンチの種類が多彩だし、インサイド・アウトサイドいずれからもパワーパンチを叩き込める。その分、どんな相手にも対応できるのである。

現在において村田の評価はというと、GGG、カネロ、チャーロ兄とは差があり、レミュー、ジェイコブスあたりにはちょっと足りないというあたりだろう。少なくとも、レミューとかいずれ上がってくるチャーロ弟を上回るくらいでないと、ミドル級頂上決戦を挑むには実績・実力とも今一歩ではないだろうか。

一応、村田判定勝ちと予想するけれども、そんなに簡単に勝たせてはもらえないだろう。

 

WBA世界ミドル級タイトルマッチ(10/20、米ラスベガス)
ロバート・ブラント O 判定(3-0) X 村田諒太

私の採点は116-112だが、ジャッジはそれ以上に差が付いた。村田についていえば、ヌジカムより強い相手とやったことがないにもかかわらず米国のリングで指名挑戦者と戦う訳だから、こういう結果も十分ありえたし村田自身精一杯やっただろうとは思う。

私がたいへん残念なのは、私の生きている間にはおそらく二度と現れない重量級の金メダリストを、こんなキャリアしか積ませることができなかった帝拳の体たらくである。

およそ1年前、山中vsネリ戦の時、こんなことをやっていては帝拳の栄華は長くないと書いた。あれからわずか1年、五十嵐は王座返り咲きを果たせず、リナレスは陥落し、村田も敗れた。ロマゴンとクアドラスもV字回復は難しいだろう。

功成り名を遂げたリナレスやロマゴンはともかくとして、村田はまだ将来があると思われていた選手であった。それがこういうワンサイドの負けを喫したのは、多くの部分がマネージメントの失敗に起因すると考えている。

老害御大としては、村田の実力を過大評価し、ブラントの実力を過小評価したものだろうが、村田が世界的強豪と全く戦っていないのは戦績を見れば明らかだし、もともとヌジカムと接戦するくらいの力では、世界ランキング上位とやれば苦戦は必至なのである。

だとすれば、実力を底上げするためにそれなりのキャリアを積ませるか、さもなければ未知数のままビッグマッチを組んでしまうかどちらかしかなかったのではないか。

ブラントの実力は、「世界に掃いて捨てるほどいる」とまでは言わないが、「両手の指に入るか入らないか」レベルである。あの程度のハンドスピード、パワー、スタミナでは、いまの世界上位クラスの誰とやっても苦戦は免れない。

思い起こせば、竹原からタイトルを奪ったウィリアム・ジョッピーは、当時のミドル級で間違いなく五本の指に入る実力者だった。その後フェリックス・トリニダードと戦って敗れはしたものの、ジョッピーにタイトルを取られたことは竹原にとってマイナス評価にはならない。

ひるがえって、ブラントにワンサイドで負けた村田は20年経ってどう評価されるだろうか。ブラントがチャーロ兄やアルバレスと戦っていい勝負ができるとは正直言って考えられず、結局村田の評価もその下ということにならざるを得ない。

セニョールに選手を見る目、実力評価が適確にできる戦略眼があったとしたら、WBAレギュラーのタイトルなど返上して、GGGとの直接対決をしただろうと思う(そういう予測もあったのだ)。ブラントにタイトルを取られた男と、GGGと打ち合って倒された男、どちらが歴史の評価に耐えうるかという話である。

GGGはカネロ第2戦に判定負けしているので、再起戦の相手として村田は打ってつけであった。東京ドームは無理でも、国技館か武道館くらい満員にできたかもしれない。でも、こういう負け方をした後では、無理である。お客さんも集まらないし、TVも付かない。

強敵だと思ったらせめてホームで戦って地元の利で何とかするか、そもそも足りないと思えばビッグマッチで乾坤一擲の勝負をするか、その程度のことも判断できないマネージメント能力だから、結局すべてが中途半端になってしまうのである。

ロブ・ブラントにワンサイドで判定負けを食らうくらいであれば、まだGGGに粉砕されるべきであったと思う。

[Oct 21, 2018]

090 井上、衝撃KOでスーパーシリーズ緒戦突破!! [Oct 7, 2018]

WBA世界バンタム級タイトルマッチ(2018/10/7、横浜アリーナ)
O井上 尚弥(大橋、16戦全勝14KO) 1.04倍
ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ、20勝9KO1敗) 15.0倍

井上の初防衛戦としてより、階級最強を決めるワールド・ボクシング・スーパーシリーズの緒戦として注目を集める一戦。バヤノも世界チャンピオン経験者だが、ここから先勝ち進むと相手はすべて現役の世界チャンピオンとなる。
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089 HBO、ボクシングから撤退 [Oct 2, 2018]

米国の大手ケーブルテレビ局HBOが今年いっぱいでボクシングから撤退することを発表した。

アメリカのことだから、儲けにつながるのであれば手のひらを返すことなど平気で、このまま撤退となるのかどうかは分からない。ただ、個人的には、ボクシングがビッグマネーを生み出してきた時代が終わったという感慨を持っている。 “089 HBO、ボクシングから撤退 [Oct 2, 2018]” の続きを読む

088 木村vs田中、全国ライブ中継のない熱戦 [Sep 24, 2018]

WBO世界フライ級タイトルマッチ(2018/9/24、武田テパオーシャンアリーナ)
O木村 翔(17勝10KO1敗2引分け)
田中恒成(11戦全勝7KO)

対照的な両者である。デビュー戦KO負けから後楽園ホールの前座を続け、アウェイのUnderdogで金メダリストのゾウ・シミンをKOして檜舞台に上がってきた木村と、キャリア11戦にして2階級制覇、今回3階級目を狙う田中。このところボクシング人気の低迷を背景に日本人対決が増えているが、その中でも最も注目したいタイトルマッチである。 “088 木村vs田中、全国ライブ中継のない熱戦 [Sep 24, 2018]” の続きを読む

087 ジョシュア、ポベトキンをKO [Sep 22, 2018]

WBA/IBF/WBO世界ヘビー級タイトルマッチ(9/22、ロンドン・ウェンブレースタジアム)
アンソニー・ジョシュア O 7RTKO X アレクサンドル・ポベトキン

名古屋で行われる日本人選手同士の世界タイトルマッチでライブ中継がないというのに、ロンドンで開催される世界タイトルマッチのライブ中継が見られるとはたいへんありがたい反面、情けないことである。 “087 ジョシュア、ポベトキンをKO [Sep 22, 2018]” の続きを読む

086 パッキャオ9年振りKO勝利 [Jul 4, 2018]

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ(2018/7/15、クアラルンプール)
Oルーカス・マティセ(39勝36KO4敗)2.7倍
  マニー・パッキャオ(59勝38KO7敗2引分け)1.6倍

ただでさえ格下とみられるWBA正規王者のタイトルマッチで、出て来るのが昔の名前で出ていますの二人である。5~6年前ならビッグマッチだったかもしれないが、いま現在この二人がクロフォードと戦ったらホーンと同じことになるだろう。いつまでもこのレベルの試合に大金を払っていてはいけない。 “086 パッキャオ9年振りKO勝利 [Jul 4, 2018]” の続きを読む

085 リナレス遂にビッグマッチ vsロマチェンコ [May 12, 2018]

WBA世界ライト級タイトルマッチ(2018/5/12、ニューヨークMSG)
   ホルヘ・リナレス(44勝27KO3敗) 7.0倍
Oワシル・ロマチェンコ(10勝8KO1敗) 1.08倍

10代の頃から日本で戦ってきたリナレスが、とうとう待望のビッグマッチである。ニューヨークMSGのメインイベント、ファイトマネーは100万ドル、相手はP4P最強に推す声も多い「ハイテク」ロマチェンコ。リナレスがこういう舞台に立てるということは、井上だってがんばれば手が届くところにあるということである。とにかく、いい試合をしてほしいと思う。

オッズは大差が付いてロマチェンコFavorite。リナレスとしてもデビュー以来これほどのUnderdogで戦ったことはなく、かえってリラックスして臨めるかもしれない。

ロマチェンコについては、いまや多言を要さない。スーパーフェザーに上げてから、ローマン・マルティネスをKO、続く防衛戦は4戦とも相手を戦意喪失させる「ロマチェンコ勝ち」で、BoxrecのP4Pランキングでもカネロ、クロフォードに次ぐ3位に上がってきた。

この順位の急上昇は、ニコラス・ウォータースとギジェルモ・リゴンドーに勝ったのが大きかったと思われる。ともにロマチェンコと戦うまで無敗で、しかも多くの強豪を倒してきた両者に、全くパンチを当てさせなかった。少なくともスーパーフェザーでやる限りは、ベルチェルトだろうがジャボンタ・デービスであろうが問題にしなかっただろう。

しかし、ロマチェンコも更なるビッグマッチを求めてクラスを上げてきた。スーパーライトからライトまで5ポンド、しかも転級初戦でリナレス戦である。さすがに体が違うのでこれまでのようには行かないとみることもできるし、リナレスだってもともとフェザー級じゃないかという見方もある。どちらの見方があたっているのか、考えどころである。

先週のWOWOWのインタビューでロマチェンコは「リナレスの弱点は分かっている。試合ではそこを攻める」と言っていたが、私が思うリナレスの弱点は、パンチを避けるのにガードをほとんど使わないということである。目の良さや動きの速さに自信を持ち過ぎているので、手や腕、ヒジを使って相手のパワーを減殺させることを若い頃からしてこなかった。

それが裏目に出たのが2009年の初黒星となったサルガド戦で、それ以降ガードに意を用いるようにはなっているが、それほど巧くはない。それと対応しているのか、相手のガードの上を叩くとこともあまりしない。打つ場所がないと極端に手数が減るという特徴がある。

だから、ロマチェンコのようにスピードがありステップワークの巧みな相手に対して、うまく自分のコンビネーションを当てられるか、相手の攻撃をディフェンスできるかというと、なかなか厳しいものがあると思う。結果的にディフェンス一方となり、手数が出ないままラウンドを支配されていく可能性はかなり大きい。

そして、衆目の一致するリナレスの弱点は「打たれ弱い」ということである。3度の敗戦はすべて一発貰ってそのままKO・TKOされてしまったもので、テクニックをパワーで粉砕された試合であった。下の階級から上がってきたロマチェンコにそこまでのパワーがあるとは思わないが、抽斗の多いロマが何をしてくるかは分からない。

逆にロマチェンコについていえば、唯一の敗戦であるサリド戦のような乱戦に弱いということがある。だから、打たれ強くて打ち返してくる相手、階級は違うがジェームス・トニーのような選手と戦えば、いまでもあまり得意ではないだろう。もっとも、いまのロマチェンコであればラフな展開に持ち込ませず12R判定で勝つだろうとは思うが。

そして、リナレス自身が乱戦は得意でない。速いコンビネーションを当てられれば活路は開けるが、ロマチェンコがまともにもらう場面は考えにくい。とはいえロマもライト級緒戦であり、リナレスのパワーを感じることがあるかもしれない。その場合にはロマが安全運転で中差の判定という展開が考えられる。

ロマが階級の違いを苦にしなければ、リナレスの悪い癖である手数の少なさを突かれて大差が付くだろう。とはいえ、リナレスも勘がいいのでカウンターをもろにもらうことはなさそうで、「ロマチェンコ勝ち」は避けられそうだ。ロマチェンコ判定勝ちを予想するが、かつてメイウェザーがライト級に上げてホセ・ルイス・カスティージョに苦しんだ試合の再現を期待したい。

WBA世界ライト級タイトルマッチ(5/12、ニューヨークMSG)
ワシル・ロマチェンコ O KO10R X ホルヘ・リナレス

私の採点は9Rまで86-84ロマチェンコ。WOWOWのお二人は身内なのにリナレスに厳しいなと思っていたら、公式採点では1-1のイーブンでたいへんな接戦だった。今年のシンコ・デ・マヨはカネロの失態でビッグマッチなしだったので、MSGは結構な盛り上がりに見えた。リナレスもデラホーヤの顔を立てたし(左ボディで負けたのも同じ)よかったですね。

予想していたよりもロマチェンコが一杯一杯の試合で、さすがのハイテクも階級の差は感じたかと思っていたら、リナレスが定評ある打たれ弱さを発揮して突然のKOとなった。せっかく互角の展開だったのに、惜しい試合というべきか、双方一度ずつ倒れて盛り上がってよかったと言うべきか、いずれにしても手に汗握る白熱の攻防で見ごたえある好試合だった。

ウェイインでの二人の体を見て、リナレスはきっちり絞ったのに対しロマチェンコに余裕があったので、パワーの違いをみせれば結構いい試合になりそうな気がした。試合前の映像でもロマチェンコの緊張が伝わってきて、これまでの相手のように一方的には勝てないとロマチェンコも考えていたようだ。

試合が始まると、ロマチェンコはいつものように華麗なステップで相手を翻弄するという訳にはいかなかった。リナレスの左ジャブも右ストレートも当たるので、互角の攻防。ただし手数ではロマチェンコの方が上回り、スタミナ面でもリナレスの消耗が大きいように見受けられた。

試合が動いたのは6R。そろそろロマチェンコがリナレスの動きが分かってきて、いつもの通り相手のパンチは一つも貰わないモードに入ったかと思ったところ、リナレスの右ストレートをもろに食ってダウン。これを見てリングサイドのデラホーヤも大喜び。ロマチェンコはすぐ立ち上がったものの、これまでの試合で中盤以降こういう余裕のない展開になったことはなかった。

ロマチェンコにもダメージが残り、いよいよ終盤。勝負の行方はあと3R次第と思っていたところ、連打を受けたリナレスが突然うずくまり、立ち上がったもののレフェリーが続行を認めなかった。VTRで見るとガードがらあきの左ボディをロマチェンコが打ち抜いていて、見事なKOでリナレスを仕とめた。

リナレスも簡単には勝たせないというところをみせたのはさすがだったが、結果的には予想した2つの弱点「ガードが巧くない」「打たれ弱い」をロマチェンコに突かれて、くやしい結果となった。とはいえ、サウスポーに左のボディをもらうということは完全に懐に入られていたということで、まあ仕方のない結果だったと思う。

ロマチェンコがこのクラスで苦しむとしたら転級緒戦だけと思っていたので、後は誰とやっても「ロマチェンコ勝ち」になる可能性が大。どうやら次はベルトランらしいが、ドーピングとウェイトオーバーの常習犯とあまり絡んでほしくない。とはいえ、あとはリナレスに負けた相手ばかりだから試合が組めない。案外、早くにスーパーライトに上げてマイキーとやるかもしれない。

負けたリナレスの商品価値も、ロマチェンコをこれだけ苦しめたことでかえって上がったように思う。日本で育ったボクサーがMSGで一万人の観衆を沸かせたのはたいへんうれしい。ただ、今回は非常にモチベーションが高く、フェザー級で負けなしだった頃の出来に戻れたけれども、年齢的にこれを維持するのは難しいかもしれない。

[May 13, 2018]

083 山中vsネリ、最大のルール破りは誰か [Mar 5, 2018]

山中の試合については予想記事も書かなかったし、TV録画も結果が分かってから見た。このまま素通りするつもりだったが、コメントもいただいたし報道・WEBの論調とは全然違う考えであるので、忘れないうちに整理しておきたい。 “083 山中vsネリ、最大のルール破りは誰か [Mar 5, 2018]” の続きを読む