085 リナレス遂にビッグマッチ vsロマチェンコ [May 12, 2018]

WBA世界ライト級タイトルマッチ(2018/5/12、ニューヨークMSG)
   ホルヘ・リナレス(44勝27KO3敗) 7.0倍
Oワシル・ロマチェンコ(10勝8KO1敗) 1.08倍

10代の頃から日本で戦ってきたリナレスが、とうとう待望のビッグマッチである。ニューヨークMSGのメインイベント、ファイトマネーは100万ドル、相手はP4P最強に推す声も多い「ハイテク」ロマチェンコ。リナレスがこういう舞台に立てるということは、井上だってがんばれば手が届くところにあるということである。とにかく、いい試合をしてほしいと思う。

オッズは大差が付いてロマチェンコFavorite。リナレスとしてもデビュー以来これほどのUnderdogで戦ったことはなく、かえってリラックスして臨めるかもしれない。

ロマチェンコについては、いまや多言を要さない。スーパーフェザーに上げてから、ローマン・マルティネスをKO、続く防衛戦は4戦とも相手を戦意喪失させる「ロマチェンコ勝ち」で、BoxrecのP4Pランキングでもカネロ、クロフォードに次ぐ3位に上がってきた。

この順位の急上昇は、ニコラス・ウォータースとギジェルモ・リゴンドーに勝ったのが大きかったと思われる。ともにロマチェンコと戦うまで無敗で、しかも多くの強豪を倒してきた両者に、全くパンチを当てさせなかった。少なくともスーパーフェザーでやる限りは、ベルチェルトだろうがジャボンタ・デービスであろうが問題にしなかっただろう。

しかし、ロマチェンコも更なるビッグマッチを求めてクラスを上げてきた。スーパーライトからライトまで5ポンド、しかも転級初戦でリナレス戦である。さすがに体が違うのでこれまでのようには行かないとみることもできるし、リナレスだってもともとフェザー級じゃないかという見方もある。どちらの見方があたっているのか、考えどころである。

先週のWOWOWのインタビューでロマチェンコは「リナレスの弱点は分かっている。試合ではそこを攻める」と言っていたが、私が思うリナレスの弱点は、パンチを避けるのにガードをほとんど使わないということである。目の良さや動きの速さに自信を持ち過ぎているので、手や腕、ヒジを使って相手のパワーを減殺させることを若い頃からしてこなかった。

それが裏目に出たのが2009年の初黒星となったサルガド戦で、それ以降ガードに意を用いるようにはなっているが、それほど巧くはない。それと対応しているのか、相手のガードの上を叩くとこともあまりしない。打つ場所がないと極端に手数が減るという特徴がある。

だから、ロマチェンコのようにスピードがありステップワークの巧みな相手に対して、うまく自分のコンビネーションを当てられるか、相手の攻撃をディフェンスできるかというと、なかなか厳しいものがあると思う。結果的にディフェンス一方となり、手数が出ないままラウンドを支配されていく可能性はかなり大きい。

そして、衆目の一致するリナレスの弱点は「打たれ弱い」ということである。3度の敗戦はすべて一発貰ってそのままKO・TKOされてしまったもので、テクニックをパワーで粉砕された試合であった。下の階級から上がってきたロマチェンコにそこまでのパワーがあるとは思わないが、抽斗の多いロマが何をしてくるかは分からない。

逆にロマチェンコについていえば、唯一の敗戦であるサリド戦のような乱戦に弱いということがある。だから、打たれ強くて打ち返してくる相手、階級は違うがジェームス・トニーのような選手と戦えば、いまでもあまり得意ではないだろう。もっとも、いまのロマチェンコであればラフな展開に持ち込ませず12R判定で勝つだろうとは思うが。

そして、リナレス自身が乱戦は得意でない。速いコンビネーションを当てられれば活路は開けるが、ロマチェンコがまともにもらう場面は考えにくい。とはいえロマもライト級緒戦であり、リナレスのパワーを感じることがあるかもしれない。その場合にはロマが安全運転で中差の判定という展開が考えられる。

ロマが階級の違いを苦にしなければ、リナレスの悪い癖である手数の少なさを突かれて大差が付くだろう。とはいえ、リナレスも勘がいいのでカウンターをもろにもらうことはなさそうで、「ロマチェンコ勝ち」は避けられそうだ。ロマチェンコ判定勝ちを予想するが、かつてメイウェザーがライト級に上げてホセ・ルイス・カスティージョに苦しんだ試合の再現を期待したい。

WBA世界ライト級タイトルマッチ(5/12、ニューヨークMSG)
ワシル・ロマチェンコ O KO10R X ホルヘ・リナレス

私の採点は9Rまで86-84ロマチェンコ。WOWOWのお二人は身内なのにリナレスに厳しいなと思っていたら、公式採点では1-1のイーブンでたいへんな接戦だった。今年のシンコ・デ・マヨはカネロの失態でビッグマッチなしだったので、MSGは結構な盛り上がりに見えた。リナレスもデラホーヤの顔を立てたし(左ボディで負けたのも同じ)よかったですね。

予想していたよりもロマチェンコが一杯一杯の試合で、さすがのハイテクも階級の差は感じたかと思っていたら、リナレスが定評ある打たれ弱さを発揮して突然のKOとなった。せっかく互角の展開だったのに、惜しい試合というべきか、双方一度ずつ倒れて盛り上がってよかったと言うべきか、いずれにしても手に汗握る白熱の攻防で見ごたえある好試合だった。

ウェイインでの二人の体を見て、リナレスはきっちり絞ったのに対しロマチェンコに余裕があったので、パワーの違いをみせれば結構いい試合になりそうな気がした。試合前の映像でもロマチェンコの緊張が伝わってきて、これまでの相手のように一方的には勝てないとロマチェンコも考えていたようだ。

試合が始まると、ロマチェンコはいつものように華麗なステップで相手を翻弄するという訳にはいかなかった。リナレスの左ジャブも右ストレートも当たるので、互角の攻防。ただし手数ではロマチェンコの方が上回り、スタミナ面でもリナレスの消耗が大きいように見受けられた。

試合が動いたのは6R。そろそろロマチェンコがリナレスの動きが分かってきて、いつもの通り相手のパンチは一つも貰わないモードに入ったかと思ったところ、リナレスの右ストレートをもろに食ってダウン。これを見てリングサイドのデラホーヤも大喜び。ロマチェンコはすぐ立ち上がったものの、これまでの試合で中盤以降こういう余裕のない展開になったことはなかった。

ロマチェンコにもダメージが残り、いよいよ終盤。勝負の行方はあと3R次第と思っていたところ、連打を受けたリナレスが突然うずくまり、立ち上がったもののレフェリーが続行を認めなかった。VTRで見るとガードがらあきの左ボディをロマチェンコが打ち抜いていて、見事なKOでリナレスを仕とめた。

リナレスも簡単には勝たせないというところをみせたのはさすがだったが、結果的には予想した2つの弱点「ガードが巧くない」「打たれ弱い」をロマチェンコに突かれて、くやしい結果となった。とはいえ、サウスポーに左のボディをもらうということは完全に懐に入られていたということで、まあ仕方のない結果だったと思う。

ロマチェンコがこのクラスで苦しむとしたら転級緒戦だけと思っていたので、後は誰とやっても「ロマチェンコ勝ち」になる可能性が大。どうやら次はベルトランらしいが、ドーピングとウェイトオーバーの常習犯とあまり絡んでほしくない。とはいえ、あとはリナレスに負けた相手ばかりだから試合が組めない。案外、早くにスーパーライトに上げてマイキーとやるかもしれない。

負けたリナレスの商品価値も、ロマチェンコをこれだけ苦しめたことでかえって上がったように思う。日本で育ったボクサーがMSGで一万人の観衆を沸かせたのはたいへんうれしい。ただ、今回は非常にモチベーションが高く、フェザー級で負けなしだった頃の出来に戻れたけれども、年齢的にこれを維持するのは難しいかもしれない。

[May 13, 2018]

083 山中vsネリ、最大のルール破りは誰か [Mar 5, 2018]

山中の試合については予想記事も書かなかったし、TV録画も結果が分かってから見た。このまま素通りするつもりだったが、コメントもいただいたし報道・WEBの論調とは全然違う考えであるので、忘れないうちに整理しておきたい。 “083 山中vsネリ、最大のルール破りは誰か [Mar 5, 2018]” の続きを読む

084 カネロも陽性 再びドーピングの話 [Mar 8,2018]

Fightnewsによると、カネロ・アルバレスがさきに行われたドーピング検査においてグレンブテノールの陽性反応を示した。これはゴールデンボーイ・プロモーションの声明によるもので、GBPは汚染された牛肉によるものだと主張している。 “084 カネロも陽性 再びドーピングの話 [Mar 8,2018]” の続きを読む

082 激闘!! ワイルダーvsオルティス [Mar 4, 2018]

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ(2018/3/3、米NYバークレイズセンター)
Oデオンティ・ワイルダー(39戦全勝38KO)  1.6倍
ルイス・オルティス(28戦全勝24KO)  3.5倍

クリチコの天下で長らくビッグマッチのなかったヘビー級だが、ようやく盛り上がりの気配がみえつつある。クリチコを倒したジョシュアはジョゼフ・パーカーと戦ってタイトル統一に向かう一方、ワイルダーもビッグマッチを望んでいる。衆目の一致するところ、最終決戦はジョシュアvsワイルダーとなるだろうが、その前にお互い何人かのライバルを倒しておく必要がある。 “082 激闘!! ワイルダーvsオルティス [Mar 4, 2018]” の続きを読む

081 2017年末ボクシング 井上・田口・木村翔 [Jan 1, 2018]

今年の年末ボクシング中継については、10月以降あわただしい動きがあった。ジム会長である父親との確執が伝えられた伝説・井岡が休養~王座返上となり、代わってTBSがメインに持ってきたのが12チャンネル所属だった田口。まあ、ワタナベジム自体、亀田の片棒担ぎとの噂も伝えられTBSとの相性は悪くないはずだが、田口がTBS色に染まるのは残念である。 “081 2017年末ボクシング 井上・田口・木村翔 [Jan 1, 2018]” の続きを読む

078 山中TKO負け、ネリのドーピング陽性はうやむやに [Nov 6, 2017]

WBC世界バンタム級タイトルマッチ(2017/8/15、京都)
ルイス・ネリ O TKO4R X 山中慎介

世界的にほとんど無名の挑戦者で、技術的にも負ける相手ではなかったように思われるが、それ以上に山中の衰えの方が大きかった。内山に続いて長きにわたって日本ボクシング界を支えてきたチャンピオンが敗れるのは寂しいが、ともあれお疲れ様でしたの言葉を送りたい。 “078 山中TKO負け、ネリのドーピング陽性はうやむやに [Nov 6, 2017]” の続きを読む

080 GGG vs カネロ [Sep 16, 2017]

WBA/WBC/IBF世界ミドル級タイトルマッチ(2017/9/16、ラスベガス・Tモバイルアリーナ)
Oゲンナディ・ゴロフキン(37戦全勝33KO) 1.57倍
カネロ・アルバレス(49勝34KO1敗1引分け) 2.37倍

GGGの試合にしては、意外なほどオッズが接近している。私がハンディキャッパーなら1対3くらい付けるかもしれない。おそらくカネロ陣営も、チャンスありとみているから挑戦したのだろう。私の意見は、GGG乗りである。ゴロフキンにあってカネロ・アルバレスにないもの、それが勇気であり、試合になればそこが違ってくると思うからである。 “080 GGG vs カネロ [Sep 16, 2017]” の続きを読む

079 シーサケット、ロマゴンを返り討ち [Sep 9, 2017]

WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ(2017/9/9、スタブハブセンター)
  シーサケット・ソールンピサイ(43勝39KO4敗1引分け)3.2倍
Oローマン・ゴンサレス(46勝38KO1敗)1.3倍

世界的な関心はスーパーシリーズに持って行かれてしまったけれど、日本のファンにとってスタブハブセンターの3試合はたいへん楽しみである。欲をいえばここにジョンリエル・カシメロが絡んでくれるとよかったが、まあ米国でのスーパーフライの興行ということが重要だから、欲張っても仕方がない。カシメロは日本で誰かに呼んでもらおう。

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077 パッキャオ劣化の上敗戦 [Jul 2,2017]

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(2017/7/2、豪ブリスベーン)
Oマニー・パッキャオ(59勝38KO6敗2引分け)1.16倍
ジェフ・ホーン(16勝11KO1敗)7.0倍

ウェルター級の覇権はキース・サーマンなのかそれともエロール・スペンスなのかがファンの関心であって、昔の名前で田舎で試合するパッキャオには「まだやるんですか」というのがまともな反応だろう。まあ、統轄団体が認めるだけMMAのマクレガーと戦うメイウェザーよりましといえなくもない。

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076 ウォードvsコバレフⅡ(Jun 17,2017)

WBA/IBF/WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ(2017/6/17、LVマンダレイベイ)
Oアンドレ・ウォード(31戦全勝15KO)1.7倍
セルゲイ・コバレフ(30勝26KO1敗1引分け)2.3倍

早いもので、前回対決からもう半年たつ。前回はジャッジ3者がいずれも114-113ウォード。私の採点では114-113コバレフなので再戦は妥当ともいえるが、村田vsヌジカムとの違いはそれほどなかったように思う。村田の判定をあれほど大騒ぎするのは、よく分からない。 “076 ウォードvsコバレフⅡ(Jun 17,2017)” の続きを読む