年金問題とカシノ解禁の話

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年を取ると時間の経つのがどんどん速くなる。年金の記録漏れで大騒ぎしたのはもう15年も前のことである。

以来、支払った保険料や受取年金額が「ねんきん定期便」として定期的に来るようになったのは何よりだが、その当時話題になっていたもう一つが、カシノ解禁であった。

東京オリ・パラも終わり、いくつかの自治体が夢中になっていたカシノ法(統合リゾート法)もどこかに行ってしまった。以下は、16年前、2007年6月の記事である。
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毎日、年金の加入記録漏れの報道でうるさいくらいである。しかし、これで肝心要の問題の議論が後回しになっているということに、気がついていない人の方が多いような気がする。それどころか、そのあたりを気付かせないために官僚と議員とマスコミが一緒になってカモフラージュをやっているのではないかなどと勘繰ったりしてしまう。

年金の構造を分解すると、例えば私が40年間サラリーマンをやって積み立てたおカネを、65歳以降年金として受け取るというものではない。そうであれば年金の加入記録は銀行預金の入金記録と同じだから、記録漏れがあれば大変なことで何やってるんだということになるのだが、実はそうではない。

じゃあどうなんだというと、その年度(例えば平成19年度)に「年金保険料」として集めたおカネを、その年度の受給資格者に「年金」として配ってしまうというものなのである。だから国にとって重要なのは「年金保険料を集めること」であって、「それを正しく記録しておく」ことは二の次なのであった。

年金制度ができた当時、年金受給者(老齢者)は圧倒的に少なく、集めた年金保険料から年金支払額を差し引いてもかなりの金額が残った。だから、最初に年金法ができる時に、国会議員の先生方には「この余ったおカネを土地とか施設(後のグリーンピアですね)で運用することにすれば、地元対策になるんじゃないですか?道路とかも作りやすくなるし」と説明しただろうし、官僚の上の方には、「年金資金を運用する機関を作ればOBの天下り先が増えますよ。退職金も車も飲み代も使い放題、秘書でも雇えばセクハラのし放題ですぜ・・・」なんて根回しがあったことは間違いない。

もともと「お年寄りが老後の不安なく暮らせる世の中を作りたい」「日本を北欧並みの福祉先進国家にしたい」という崇高な理想があったことは間違いないけれど、法律・制度を作るということはおそらくそういうことで、きれい事ですべて片付くことはほとんどない。介護保険だって同じだ。大体ジュリアナ東京がまともな老人福祉をしないことくらい、最初からみんな分かっていたことじゃないか。

いま、企業の厚生年金基金という機関が続々とつぶれている。ここでは、一般の厚生年金より上乗せの年金を支給できますよという約束になっていたのだが、その約束はみんな反故にされた。でも、もともと支払った年金保険料の半分以上が会社負担だから、大騒ぎになっていないだけである。この厚生年金基金がなぜつぶれたのか。バブルがはじけて運用がうまくいかなくなったからだとみんな思っているのだが、実は違う(正確にはそれもあるのだが、もっと大きい要因がある)。

それは、年金保険料より、支払年金額の方が大きくなっているからである。年金受給者は毎年確実に増えていくのに、リストラやら正社員以外の就労者が増えたために年金保険料は増えないどころか減っている。だからどんどん過去の蓄積分を取り崩して収拾がつかない状態になっているのであった。そしてそれは、実は企業の厚生年金基金だけの問題ではない。

2万円以下の掛け金で6万円以上の割戻しなんて、ちゃんと運用したとしてもかなり無理がある。ところが運用はグリーンピアや塩漬け株で収益があがらない。長期国債の利率は雀の涙。その上誰もまともに年金保険料は払わない、年寄りだけが律儀に年金を受け取りに来る。しばらくは差額を消費税とかで埋めてごまかすんだろうけど、すでに制度として破綻しているということは、目に見えているのだ。6万円じゃなくて6万5千円もらえるはずじゃないかとかそういうレベルじゃなくて、6万円自体が危ないのである。

それでもお国を信じるかどうかは人それぞれ。どうやって身を守るか守らないかも人それぞれだが、ここからカジノ解禁への一つの方法が示唆される。どうやって、国会議員や官僚の上の方に利益誘導するかということである。議員さんには地元対策とか箱モノとかなんだろうけど、官僚にはやっぱ天下り先なのだろうか。そんなことしなくても、まともに議論して外国並みにしてほしいとは思うけれど、なかなかそこらへんは難しいような気がする。

当時の「何となく思うこと」、時事問題その他の考察記事はこちら

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