この温泉に来たのは、本当にたまたまであった。
つい1時間前に、昭和温泉に行って汗を流してきたばかりなのである。再びバス通りに出て、五稜郭方面行きのバスに乗った。ところが、この日もう一つ片づけなくてはならない用事があった。洗濯である。
今回泊ったホテルは朝食が付いて1泊5500円と安いのだが、ネット環境がないのと、コインランドリーが付いていないのであった。ネットは歩いて5分のネットカフェに行ったり、市内にいくつかあるフリーwifiを使ったのだけれど、コインランドリーが見当たらないのには参った。
だからこの日は、前日着替えたシャツや下着をリュックに入れて、五稜郭から四稜郭、昭和温泉まで回ったのであった。しかし途中で見かけたコインランドリーは、朝のうちに通った五稜郭公園の北にある一軒だけであった。
仕方なく、午前中に見かけたコインランドリーに向かおうと、適当なところでバスを下りた。ところが、バス停から東、五稜郭の方向に向かうとすぐに、コインランドリーがあったのである。もちろん、また何kmも歩くことを考えれば、ここを使う一手である。しかしよく中を見てみると、設備が古い。それはがまんするとして、何しろ暑いのである。
思うに、冷房が効いてないのは函館ではありがちなことだけれど、このコインランドリーはクリーニング店に併設されていて、隣のクリーニング店から尋常でない熱気が来るのである。あまりの熱気にがまんできずに外に出る。しかし外もまた暑い上に、近くに座る場所さえないのであった。
5分10分とがまんしたけれども、とても30分もこんなことをしてはいられない。すぐ隣りにあったのが「富岡温泉」である。このまま汗みどろになるよりは、風呂でくつろいだ方がいいに決まっている。1時間前に入ったばかりの温泉だけれども、行くことにした。幸い、こちらも庶民価格の420円である。スタバに入るよりも安い。
さて、この富岡温泉。入口近くに貼り紙がしてあって、「この温泉は約60度の源泉をかけ流しており、そのまま捨てています。毎朝、いったんお湯を抜いて浴槽を洗い、新しいお湯を張っています」とのことだ。純正の源泉かけ流しということである。ただ、こういう温泉には一つだけ問題があって、加水しないからゆっくり浸かるには熱すぎるということである(こちら)。
階段を2階に上がると、下駄箱があってその奥が休憩所である。タオルや備品、飲み物が置いてあるカウンターが番台を兼ねていて、おばちゃんが「いらっしゃい」と迎えてくれる。後から見ていたら、来る人ごとに個人的な会話をしていたから、ほとんどの客は顔なじみということであろう。
休憩所から右に入ると女湯、左が男湯である。更衣室は広い。カギのかかるロッカーと着替えを置くだけのザルがあるので、近所の人はロッカーなど使わないのだろう。浴室へ入ると、カランは赤い栓と青い栓の昔ながらのカランである。そして、浴槽は3つに分かれていて、一番右の浴槽に源泉が流れ込み、そこからあふれたお湯が真ん中、左端と流れる仕組みになっている。
当然、一番右が人のあまり使っていないお湯な訳で、さっそく入ろうとすると、足の先をつけただけで異常な熱さである。思わず「あちっ!!!」と大声を出して先客に笑われた。とてもじゃないけれど、私に入れるのは左端の浴槽がやっとである。それでも44度くらいはあったはずだ。
ただ、肩まで浸かっているとだんだん慣れてきたのは不思議であった。食塩泉だけあって、肌にひりひりしみてくる。午前中の歩きで日焼けしてしまったので、余計塩分が効いてしまったのであった。そして、後から入った水風呂の快適だったこと!熱いお湯でふやけてしまった肌を引き締めてくれるような気がした。
あまりに熱くて長い時間入っていられなかったけれど、地元の人たちは浴槽の脇に座ってしばらく休んでまた入ってを繰り返していました。私はというと吹き出る汗を拭きながら休憩室でポカリスエットを飲み、コインランドリーが終わる頃合いまでゆっくりさせてもらったのでした。
実は、翌日になって千代台公園の正面口を出たら、真向いに近代的なコインランドリーがあるのを見つけた。ここならホテルから歩いて5分くらいだし、初めから知っていれば当然ここを使ったと思う。でも、そうするとこの地元密着の源泉かけ流し温泉も入れなかった訳で、何がよくて何が悪いかなんてことは一概には言えないということでしょうか。
[Oct 25, 2016]
昭和温泉から市街へ戻る途中にある富岡温泉。たまたま入ったのですが、湯量豊富な庶民の湯でした。