014 与論島のさとうきび畑 [Feb 17, 2015]

与論島を歩いていて目立つのは、サトウキビ畑と牛である。特にサトウキビはいまの時期が刈入れなので、手作業で刈入れている農家の人達や、刈入れたサトウキビを細断する機械、大きなネットに入って工場に向かうトラックをたびたび見かけた。町役場の近くには製糖工場があって、煙突から白い煙が強風にあおられて真横に流れていた。

そういえばテニアンも、戦前は全島サトウキビ畑だったということである。港近くには国策会社・南洋興発の製糖工場があり、高い煙突が写っている古い写真が名鉄フレミングホテルかどこかにあった。牛の牧場もある。海の色とかも、すごくよく似ている。与論島を歩いていて、戦前のテニアンもこんな風だったのかなあと思った。

さて、現実の問題として、サトウキビの生産だけで農家の生活が成り立つかという今日的な課題がある。江戸時代以前であれば砂糖というだけで貴重品であり、米の代わりに年貢として納められたくらいであった。ところが現在では、黒糖を料理に使う人はそれほど多くはないし、精製糖(上白糖や三温糖)の原料として考えた場合、国内生産のサトウキビはかなり不利である。

サトウキビもイネ科の植物だが、イネのようにまっすぐ伸びないし、茎も竹のように太いので、刈入れはほとんど手作業で行われている(機械もあるらしいが、見かけなかった)。刈るのも力仕事だし、余分な葉や枝を切って茎だけにするのも手間である。しかも、苗を植えて収穫まで1年以上かかる。

これだけの労力をかけて、1a(10mⅩ10m)あたりの収穫量は約0.6t。tあたりの金額はWEBによると約2万円だから、1aでは約12,000円分の収穫にしかならない。私がやったら1日1a収穫するなんてとても無理だし、仮にできたとしても売上が1日分の人件費くらいにしかならない。植え付けから収穫までの手間を考えたらとても採算に合うとは思えない。

それでは、サトウキビを仕入れる側の製糖工場が不当に安く仕入れているのかというと、そういう訳でもない。サトウキビをそのまま船で運ぶのはかさばるばかりなので、ほとんどの島には製糖工場があって、粗糖に精製して運搬している。そして粗糖は国際商品市場で取り引きされる商品であるため、どこで作ろうが何が原料だろうが、価格は大きくは変わらない。工場としても採算を確保するために、仕入れ価格を抑える必要があるのである。

まずサトウキビを絞る。重さにして半分以上は絞りかすである。絞って出てきた汁を濾過した後に延々と煮詰めていく。最初はうす茶色のさらさらした液だったものを、飴状になるまで水分を蒸発させる。こうして黒糖ができる。それから遠心分離機にかけて糖蜜分を分離して、ようやく粗糖になってさまざまな加工が可能となる。つまり、歩留まりがきわめて悪い。

サトウキビの主な生産地は熱帯地域であり、人件費も日本に比べて格段に安い。そこで生産された粗糖と競わなければならないのだから、大変である。そして、サトウキビと同様に砂糖の原料となるテンサイは、別名サトウダイコンと呼ばれるようにダイコン状の作物であり、サトウキビのように堅い茎を絞る必要がない。つまり、作る手間も製糖する手間も少ないのである。

こうした現状を受けて国内のサトウキビ生産は減少傾向にあり、与論島においても平成初めと比べて、サトウキビ生産は半分に減り、逆に畜産出荷額は3倍に増えている。あと何年かしてまた与論島に行ったとしたら、サトウキビ畑が減って牧草地が増えているなんてことがあるのかもしれない。


与論島はいたるところサトウキビ畑が広がっている。この時期がちょうど収穫期で、刈入れ中の畑やサトウキビを運ぶトラックをよく見かけた。


手作業で刈り取られたサトウキビ。ここまでするに、相当な労力が必要なはず。


この写真は沖縄・読谷町にある沖縄黒糖の工場。手前の圧搾機でサトウキビを絞り、タンクに集めた液を濾過した後に煮詰めていく。

[Feb 17, 2015]