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610 江戸川競艇場[May 3, 2005]

江戸川競艇場は江戸川ではなく中川にある。河川で行われる競艇は全国でもここだけであり、幅員が狭いためピットからターンマークまでの駆け引きの余地がほとんどない。従って、内枠の選手がそのままインコースに入って有利にレースを進めることとなる。河口に近いことから、満潮のときには川の流れとは逆方向の流れが生じる上、風の影響をうけやすい。そのためこの競艇場では決して大レースは行われないし、有力選手の多くはこの競艇場では走らない。

実はこの競艇場に直通バスを出しているJR平井は、私が生まれた場所である。幼稚園に入る前に船橋に引っ越したのであまり記憶がないのだが、近所に、ここの競艇場に通うおやじがいたそうだ。

普段は夫婦ゲンカが絶えないが、たまたま大きな舟券を取った時には盆と正月が一緒に来たような状態となり、ごちそうを並べて近所の人にも振舞ったそうだ。そういえば、昔はギャンブルというと、「子供の給食費まで博打に注ぎ込む」ということがよく言われていた。

無料バスの出発点からして、総武線のガード下である。暗いガード下で新聞を読みつつバスを待っていると、それだけで前途が不安になる。競艇場に近づくと、スタンドの背面一面に書かれた「人類一家・世界兄弟」の文字がいやでも目に入ってくる。

ここにはギャンブルをしに来ているのであって、思想信条を議論しに来ている訳ではないので、この競艇場に来るとどうも釈然としない気分になる。そのせいか、そこそこプラスでは帰れるのだが大儲けをしたことがない。それでもこの競艇場によく来たのは、何ともいえないうらぶれた雰囲気が好きだったからである。

大きなスタンドには特別観覧席もあるのだが、一般用のスタンドはなんと堤防である。コンクリの段になった堤防に、申し訳程度にプラスチックの長椅子を打ちつけているのだが、その椅子はいつも水しぶきで濡れていた。

そのため、観客の多くは椅子に座らずその上に立ち上がってレースを見る。前の奴にそれをやられると後ろは座っていては見えないからやはり立つ。そうして、椅子が椅子としての役割を果たさないまま全員が立つ。最後方は堤防に立つ。そんな競艇場であった。

レースは上に述べたように内枠が有利で、1枠と2枠でより上手い選手を買っていればほぼ間違いない。逆にいうと、外外で決まると大穴になるが、その確率はきわめて低い。ラーメンやそばが食べられる食堂はあるが、大してうまいものは置いてない。くつろげる場所もないので、結果的に足が遠のいてしまったが、行き帰りに見る平井や小松川あたりの街並みと併せて、昭和30年代の雰囲気をいまだに残す数少ない場所であった。

[May 03, 2005]