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615 ボストン美術館・日本美術の至宝特別展[Apr 4, 2012]

さて、先日は体力面で2年間のブランクからの回復を図るべく、養老渓谷の長時間踏破を行ったのであるが、今回は文化面での回復を図るため、上野・東京国立博物館で開催中の「ボストン美術館・日本美術の至宝特別展」に行ってみた。

よくご一緒する方はご存知のように、博物館は好きである。地方に行くとその土地の博物館や資料館によく行くし、マカオでもラスベガスでもその手の施設にはとりあえず行ってみる。展示資料を見て、その土地の全体感がつかめるような気がするからである。そして今回のテーマであるボストン美術館は、日本の国宝級の作品が多数展示されているので有名なところである。

その中でも特に有名なのは、大山古墳(仁徳天皇陵)出土品と吉備大臣入唐絵巻だと思うのだが、今回はその吉備大臣入唐絵巻が展示されるのである。因みに、大山古墳出土品の方は、昨年宮内庁が調査し、仁徳天皇陵である可能性は低いのではないかとする鑑定結果を示している。

さて、今回特別展を見るまで、ボストン美術館が日本の古美術品を入手したのは、黒船来航以来のアメリカの高圧的外交により、政府も強く流出を阻止できないまま海外に運ばれてしまったからと思っていた。ところがそれは大きな勘違いで、明治政府の廃仏毀釈令により、多くの寺院が二束三文で所持する美術品を売りに出したのを、フェノロサや岡倉天心がスポンサーを見つけて入手し、散逸を防いだのが本当のところであったという。

明治以前には神仏混交であった日本の宗教的バックグラウンドが、明治の国家神道推進により「寺=仏教」の地位が急落し、貴重な仏像や仏画が廃棄されたり焼却されてしまった話はよく知られているが、文化的には決して先進国とはいえなかった当時のアメリカに価値が分かるのに、日本人には分らなかったというのは情けない話である(当時、東大寺の歴史はアメリカ合衆国の10倍以上の年数である)。

今回の目玉である吉備大臣入唐絵巻には人だかりができている。昔から「きびのおとど」と覚えていたので、「きびだいじん」と言われるのはやや違和感があるけれど、ともかく吉備真備の唐での活躍を絵巻物にしたものである。英語の表題が”Minister Kibi’s Adventure in China”というのは面白い。Adventureといわれると途端にアメリカっぽくなるから不思議である。

後白河朝の作品というから、約800年前のものになる。さすがに色あせているし、折皺なのかところどころ見えなくなっているのは残念。また、絵巻のストーリーはもちろん、後白河法皇がなぜ吉備真備なのかと考えると楽しい。後白河法皇の有力な財源は平氏であり、平氏の収入源は宋との貿易だから、本場中国で知られた日本人ということで真備と安倍仲麻呂ということになったのだろうか。

今回のメイン的な扱いを受けていた作品がもう一つあって、江戸時代の水墨画家・曽我蕭白(そが しょうはく)である。約350年前の作品であり、かつ本格的な補修がなされた後の作品であるため、墨跡も鮮やかである。「雲龍図」は巨大な襖絵であるが、それでも真ん中にあった胴体部分が欠けているというのだからすごい。

特別展を見た後は、法隆寺宝物殿へ回って仏像を見る。坐像、立像、半跏思惟像の他に、「倚像」(いぞう)という仏像があることを初めて知った[英語でいうと”on the Bench”ベンチに腰掛けた姿の仏像である]。まだまだ勉強が足りない。

[Apr 4, 2012]

開催中の特別展。一番奥が会場である平成館。上野駅からたっぷり歩きます。