080 保手見峠から嵯峨山 [Dec 19, 2018]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

 
檜洞丸に登った次の週くらいにいっぺんに10℃ほど気温が下がった。こうなると、暖かい房総の季節になる。2018年12月19日、年末であわただしくなる前にと、今シーズン初めて房総の山に向かった。

今回は、鋸南保田ICを下りてすぐの「道の駅保田小学校」に車を止めて歩く計画である。このあたりは昨年も来たが、長狭街道沿いに駐車できる場所はなく、奥に入る道は細い。道の駅に止めるのが安心である。

ただ、ここで計算違いが二つあった。一つ目は、車を駐めて早々、どこに引っかけたものか爪を割ってしまったのである。それなのに、いつも持っているはずの爪切りもバンドエイドも見当たらない。近場ということで油断していたようである。

割れたのが左手の人差し指という頻繁に使う指だったので、この日は一日中不便な思いをすることになった。何かのはずみですぐ血が出てくるし、痛くて使えない。リュックの紐を結ぶにも何をするにも、人差し指というのは大切なのである。

もう一つは、7時59分発のコミュニティバスに素通りされてしまったことである。通りの片方にしかバス停がないのでその前で待っていると、バスが通っているのは反対車線である。手を上げたのだがそのまま素通りされてしまった。

反対車線の時刻表も載っていたので、バス停の前で待っていれば大丈夫だろうと思ったのだが、ローカルルールというやつである。コミュニティバスなので勝手の分からない余所者は使わなくて結構ということなのかもしれないが、近距離以外は300円という料金設定からして、町外利用者を想定しているはずである。

せめて、「青バスは反対側でお待ちください」くらい書いてあってもよさそうなものだが、行ってしまったものは仕方がない。歩くのはお遍路で慣れている。バスで10分の道のりがどのくらいかかるか不明だが、あと2時間待つよりは早く着くだろう。

バスが走るのは長狭街道、鋸南と鴨川を横断する房総の幹線道路である。トラックが多く通るのは、砂利の運搬が多いためだろう。道はほとんど平坦なので右足と左足を交互に出していれば前に進む。時刻は9時前なので、まだ山の陰で日が差さない場所も多い。

意外と早く、見覚えのある小保田バス停を過ぎたが、そこから先が結構長くて、市井原のバス停まで着いたのは9時5分過ぎ、バスで来るより50分近く多くかかってしまった。バス停の前に、北へ向かう舗装道路が分岐している。ここを進めば第一目的地の保手見峠である。

車とも人ともすれ違うことなく、道は舗装道路から簡易舗装となって登って行く。しばらく民家はとだえていたのに、上水道の加圧ポンプ場の先にいきなり民家が集中している。瀬高という集落のようだ。

道なりに登って行くと、最上部の民家の前で行き止まりになってしまった。リュックを下して「房総のやまあるき」のコピーを確認すると、途中で分岐を見逃したらしい。そういえば、民家の入口だと思って入らなかった分岐があった。


道の駅保田小学校は、朝早くても駐車場に入れる。ただ、コミュニティバスに素通りされてしまった。


バスで10分の道のりを1時間かけて市井原バス停へ。長狭街道から分かれて北に向かう。


民家も田畑もない道をずいぶん登ってきて、山の上に水道施設がある。さらに上に集落があった。

 

さきほど通った時には、分岐の奥に、民家とたき火をしている人が見えたので遠慮したのである。戻ってそちらに登って行くと、目印となる石仏があった。「おはようございます」と挨拶する。意外にも、若い人であった。

「保手見峠は、この道でいいんですか?」

「ああ、この道から向こう側に出られますよ」

御礼を言って先に進む。「房総のやまあるき」には、昔の鎌倉街道でいまは廃道寸前と書いてあったが、まさにそういう状態であった。山の中腹をスイッチバックしながら登る道で、かなり古い石垣で補強してあったけれど、いまはハイキング客も含めて誰も入っていないように見えた。

日がほとんど差さない暗い道を登って行く。ところどころ赤テープが見えるのは、「房総のやまあるき」の内田栄一氏が付けたものだろう。ピークまで登らず、道なりにトラバース道に進む。右手から稜線が下がってきて、ぶつかったところで保手見林道に出た。

林道とはいってもダート道である。ここまでの登山道とは全然違うものの、舗装はされていない。車も通れる幅があり轍の跡もあるが、もちろん車の姿は見えない。ずいぶん山奥に来たという感じである。

今回のネタ本は例によって「房総のやまあるき」の「保手見峠から嵯峨山へ」である。昨年も嵯峨山には登ったけれどもその時は小保田回りで、今回は逆回りということになる。行程3時間のショートコースだが、バスに素通りされて1時間余計に歩いた上、保手見峠までコースタイム40分のところ、すでに1時間かかっている。

保手見峠からは「富山が雄大な山容を見せ。太平洋の彼方には大島が」見えるとネタ本にあるのだが、残念ながら枯れ枝に遮られて向こうに海がありそうだというくらいの視界しかない。

ただし、少し進んだところからは東側の眺望が開けていて、北からいくつかのピークをつなぐ稜線を見ることができる。方向的に、これは房州アルプスと思われたが、逆方向から見たせいか見覚えのある山には見えないのは残念であった。

さて、ネタ本の3時間を鵜呑みにしていたので、すぐ近くにあるはずの三浦三良山を探そうという計画であった。林道を進んでから、「鎌倉街道」というカードの下がっている道に進む。

さきほど瀬高から登ってきた道と同様、あまり人の入っていない道である。おまけに、「猪・鹿用の罠が設置してあります。ご注意ください」などと書いてあるので、藪の中に入りづらい。しばらく進んだ後ピークらしきものはあるのだが藪ばかりで、道はそこから下って行くようであった。

メインルートの段階ですでに荒れていて、脇道に入ると罠の危険がある。これではちょっと無理なので引き返すことにした。帰ってからGPSを調べたところ、もう少し奥まで進まなければならなかったようだ。


道なりに進むと瀬高集落の最上部の民家で行き止まりになる。引き返して、石仏左の山道に入る。


ここはかつての鎌倉街道だという。確かにところどころ古い石垣で補強されてはいるが、登山道というより廃道に近い。


三浦三良山を探すけれども見つからない。害獣除けの罠があるそうなので、藪の中には入りたくない。

 

5分ほどかけて戻って、嵯峨山への尾根道に進む。林道からの入り口に赤テープがあったので場所は間違いないが、道とおぼしきところには笹薮が伸びていて、たいへん歩きづらい。そして、結構アップダウンがある。やせ尾根を急降下して、再び登るのを繰り返すような道である。

房総なのでこうした尾根道はよくあるのだが、今回の場合登り下り以上に不安だったのは道が斜めっていることで、滑ると十数m止まらないだろうという急斜面であった。保手見峠から間もなくあるはずの鋸南町三角点峰も、どこだったのかよく分からなかった。

赤テープを頼みにさらに進むが、藪がどんどん濃くなる上に踏み跡が見当たらない。半年や一年、誰も入っていないような状態である。藪だけならまだしも、斜めった斜面は滑ったら登って来れる保証はないような状態であった。

少し先の藪の斜面に赤テープは見えたものの、そこまで踏み跡の見つからない状況で先に進むのは危険である。三浦三良山に続き、嵯峨山への尾根道も撤退せざるを得なかった。やむなく、安全確実な林道経由で嵯峨山に向かうことにした。

時刻はすでに11時近く。保手見峠付近でうろうろして出発から3時間近く経過している。予定どおりバスに乗っていれば、そろそろネタ本のコースを完走していておかしくない時間である。なのに、まだ予定の半分も来ていない。再び保手見林道を先に進む。この道を進めば、昨年嵯峨山から下りてきた場所に合流するはずである。

この林道は尾根の北側を歩くので日当たりが悪く、水たまりが大々的に残っていた。ちょっと驚いたのは、昨年嵯峨山から下った時ほとんど廃屋だったと思ったのだが、それより奥にあるあたりで、人の住んでいる農家があったことである。

規模は小さいものの畑に野菜が植えられており、庭先には軽トラが止められていて犬が吠えていた。ずいぶん人里離れたところに住んでいるものだと思っだ、よく考えると軽トラを使えば10分かそこらで長狭街道に出られる。びっくりするほどの山奥ではないのであった。

嵯峨山の裏登山口まで、結構長かった。途中でさきほど断念した尾根道と合流するが、やはり人の入った気配はなく、見る限り荒れてしまっている。山慣れた人は房総に来ないし、ハイキング客ではとても歩けないコースなのである。

さて、前回下ってきた民家脇の登山口まで30分ちょっと歩いた。「嵯峨山→」の小さなカードがあり、民家横にU字溝で作ってある階段を登る。ここの民家はしばらく前まで老夫婦が住んでいたらしいが、現在は無人のようである。

踏み跡伝いに登ってゆくと古いお墓に行き当たるのだが、その前に平らになって日当たりのいい場所がある。ここまで3時間以上、全く腰を下ろしていなかったので、ここで休憩をとらせていただいた。

テルモスに入れてきたお湯でインスタントコーヒーを淹れ、ジャムとチーズのパン、レモン味のチキン、いつものフルーツパックでお昼にする。この日は快晴の予報だったが、曇って風も出てきた。とはいえ、寒くないので歩くには申し分ない。


保手見峠から北方向。見えているピークが三浦三良山のはずだが、たどり着けなかった。


保手見峠からは東側の眺望が開けている。並んでいるのは、方角的に房州アルプスのはず。


「房総のやまあるき」の道は、しばらく誰も入っていないらしく藪。赤テープはあるのだが、道が完全に斜めっていて滑ったら大ケガ必至である。途中で断念。

 

休憩したし栄養補給もできたので、体力回復して嵯峨山の登りにかかる。見た感じ標高差50mくらいしかなかったのでそれほど時間はかからないと思ったが、実際10分ほどで金平様の祠を過ぎ、ひと登りで嵯峨山頂上に着くことができた。

嵯峨山頂上はあまり日が当たらず、展望もないので休憩するのにあまりいい場所ではない。標高は315mあって房総では高い部類に属するのだが、伊予ヶ岳や富山のように整備されていないし、ベンチもない。房州アルプスもそうなのだが、房総でも人のあまり登らない山なのである。

そして、保手見から回ってくる今回のルートは、嵯峨山まではそれほどハードではないのだが、ここから先の道が結構きつい。傾斜がきついし、道は荒れている。逆に下貫沢回りだと、嵯峨山まできついが下りはそれほどでもない。

特に今回は、バスに素通りされて1時間多く歩いた上に、三浦三良山・鋸南町三角点尾根といずれも途中で引き返してHPに余裕がない。嵯峨山から水仙ピークまでの登り下りは、こんなにきつかったかと思うほどだった。

やっとのことで水仙ピークまで来たけれども、残念ながら水仙はほとんど見ることができなかった。道端には結構咲いていたので時期でないということはないだろうけれど、かなりの急斜面なのでもう栽培するのをやめたのかもしれない。「栽培しているので勝手に抜かないでください」と書いた看板が寂しそうだった。

水仙ピークの先でちょっと迷う。ヤセ尾根に向かう道と、左に急降下する道があり、どちらもそれらしいしどちらも違うようにも見えるのである。1/25000図と電子国土を確認すると、前回通った道は尾根伝いに西に伸びているのでヤセ尾根の方向である。

ところが急降下する道も破線で載っていて、これも下貫沢の集落まで通じているようなのだ。とはいえ、ロープも張ってない道を急降下するのは危険である。ということで、ヤセ尾根を進む。

前回は登り方向だったので気にならなかったヤセ尾根だが、下り方向だとかなりこわい。何とかクリアすると、今度は林道に向けての急傾斜である。ロープはあるものの、足下が堅い地盤で滑りやすく、後ろ向きになって下って行く。富津市の注意看板のある林道まで下りた時にはほっとした。

さて、ここから先の林道も、朝方歩いた旧・鎌倉街道と甲乙つけがたい状態である。倒木が道をふさぎ、雨水でえぐられた道に落ち葉が積み重なって、足を平らに置くことができない。昨年来てから、いったい何人の人が通っただろう。遠からず、廃道に近い状態になってしまうだろうと思われた。

結局、嵯峨山から1時間かかって下貫沢駐車場まで下りてきて、さらに1時間かかって道の駅保田小学校まで歩いた。房総の山はあまり人が入っていないのがいいとも言われるのだが、あまりにも人が入らないと、それはそれで危ないし歩くのもきつい。よしあしだなあと思ってしまったのであった。

この日の経過
道の駅保田小学校 8:05
9:05 市井原バス停 9:10
9:35 瀬高集落最上部 9:40
10:10 保手見峠付近 10:40
11:20 嵯峨山登山口 11:40
11:55 嵯峨山 12:00
12:40 旧林道分岐 12:40
13:10 下貫沢駐車場 13:10
13:30 小保田バス停 13:30
14:10 道の駅
[GPS測定距離 16.2km]

[Mar 4, 2019]


嵯峨山に登るのは、廃民家横の登山口から15分ほどで、こちらの方がずいぶん楽。


逆回りだと、こんなにアップダウンがあったかと思うほどで、水仙ピーク先のやせ尾根もこわかった。


倒木や雑草で去年よりさらに荒れてしまった登山道を下りて、ようやく水仙畑へ。この後、1時間かけて道の駅に戻った。