119 NFLの次は将棋 ~せいうち日記119 [Mar 13, 2019]

2月第1週にSuperbowlが行われ、今シーズンのNFLはペイトリオッツ6度目の制覇で幕を閉じたが、その後頻繁に見るのは将棋である。

しばらく前にNHK-BSで順位戦最終局をライブ中継したときにはたいへん興奮したものだが、時代は移り、TV放送ほどのコストをかけなくてもインターネット中継ができるようになった。加えて将棋中継の興趣をいちじるしく引き上げたのは、ソフトによる評価値がリアルタイムで出ることである。

以前は、どの手が勝負を決めたのかは感想戦を経なくては明らかにならず、後日の新聞記事や将棋雑誌を待つしかなかった。ところが現在では、指している棋士本人には分からないのに、見ている人間にはリアルタイムで形勢が数字で示されるのである。

いまの局面でどちらが有利か、どちらが勝ちそうなのか途中経過が数字で出て来る。だから、スポーツ中継と同様、見ていて臨場感があり、ライブの迫力がある。その点において、新聞記事では太刀打ちできないのである。

将棋といえば最近は藤井君である。いくら才能があっても四段になってプロ入りするのは相当難しい。何しろ、毎年4~5人しかプロになれないのである。その中で藤井君は、初めて参加の三段リーグで三十数人のうち上位2名に入り、中学生にして四段昇段を果たした。

いまや、赤旗街宣車までもが、「藤井君の活躍する新人王戦も、赤旗で読むことができます」とアナウンスしている。藤井君も共産党の宣伝に使われるとは思わなかっただろうが、彼の受け取る対局料の一部であるので仕方がない。

その藤井君が2月のC級1組順位戦で、近藤誠也五段に敗れて自力昇級を逃した1戦など、+400とわずかながら優勢であった藤井君が、詰みがないのに踏み込んでいった1手でいきなり1000点以上のマイナスとなった。こういうことがあると、やっはりライブで見なければということになる。

そして先週は、そのC級1組の最終局であった。C級1組からB級2組への昇級は2名、最終局前の段階で8勝1敗は、藤井君を含めて4人。勝ち星が同じ場合、昇級できるのは前期成績(順位)が上の棋士である。前期は下のクラスであった藤井君は、最も条件が厳しい。

昇級候補4人の相手はいずれも強敵である。順位戦はその年の成績が翌年の昇級を左右するから(実際、藤井君も星は同じなのに31位という順位が効いてしまっている)、相手だって必死である。午前10時から始まった戦いは、例によって深夜まで続いた。

結果は昇級候補4人とも勝って、藤井君の昇級はお預けとなった。とはいえ昇級した面々と同じ勝ち星なので順位は今年の31位から来年は3位(B2から降級する先崎九段・同じく9勝1敗の船江六段の次)にランクアップし、たいへん有利な位置につけることになる。

ボクシングでも思うことだが、「最年少」だの「最短」だのという記録にはほとんど意味はない。勝敗という見地だけ考えても、大切なのはどれだけタイトルをとったか、A級に何年いたかということであって、「早く」ランクを上げることは、それだけ「長く」活躍できることにおいて意味がある。(もちろん、勝つことだけに意味がある訳ではない)

藤井君の歳であれば、普通はまだ無給の奨励会員で切磋琢磨している時期であり、同い年の集団の中で五本の指に入る才能があったとしてもそうなのである。当然、どうして勝てないのか、プロになれるかなれないのか悩む時期でもあるはずだ。

そうした中から飛びぬけた才能の持ち主として、藤井君には将棋の奥義にできるだけ近づいてほしいと思う。コンピュータの進化によりソフトが人間より強くなってしばらく経つが、それでも人間と人間の対戦する将棋には血が通った迫力がある。

江戸時代と現代の将棋は違うし、戦後まもなくと現代とも違う。ここ二、三十年でも大きく様変わりしている将棋が、私の生きている間どう変わっていくのか、たいへん楽しみにしている。そして、その先頭に立つ一人は間違いなく藤井君なのである。

[Mar 13, 2019]


インターネットTVで一日中将棋中継を楽しめる時代になりました。ありがたいことです。(special thanks to AbemaTV)