064 カルロス・ゴーン騒動とニッサンの遺伝子 [Apr 3, 2019]

カルロス・ゴーン氏の逮捕から保釈にかけての大騒ぎは、TVの恰好のネタにされてしまった。国際的には人質司法との批判があると言われるが、日本で企業活動をしていれば日本の法律に従うのが当たり前だし、嫌なら日本企業の親玉になどならなければいい。私が思うのは、ちょっと別のことである。

いまから何十年か前、ニッサンの経営陣がどんな面々だったかは覚えていないが、実質的に会社を仕切っているのは労働組合という時代があった。その頃といまと、働いている人間は当然違うのだけれどニッサンという会社は同じようなことをするんだなあということである。企業の遺伝子といってもいい。

企業は生物ではないので、遺伝子とかDNAはないという意見もあるが、かのドーキンスも「利己的な遺伝子」の中で、ミームという概念で類似の例を説明している。生物の遺伝子と同様、そうすることによって組織内で生き延びようとする傾向なり選好があるというのである。

ここまで書いていて、日産自動車とかニッサン関連にお勤めの方が読んでいたら気分が悪くなるだろうなと思ったのだが、おそらく働いている個人個人の問題ではない。ニッサン組織内の人々が従っているであろう力学のことなのである。

かつてのニッサンは労働組合幹部にいいようにされていたが、だからといって労使共調で働きやすい職場を作ろうと思ってやっていた訳ではない。次に連れてきたのがコストカッターというところに如実に現れている。労使共調とコストカットは水と油のようなものである。

彼らは企業体質強化は至上命題だと言うのだろうが、コストカットはひとつの手段であって、他にもやり方はいろいろある。売上増もあるし財務体質強化もある。当時だってM&Aは盛んに言われていた方法である。

そして、どのような手段で企業体質強化を図るとしても、その大前提となるのは遵法精神である。昨今は違法すれすれでも儲かればいいという風潮だが、そんなことが長続きしないのは江戸時代以来の例をみても明らかである。

つまり、ニッサンという組織は、「労使共調」「企業体質強化」ときれいごとを並べているが、実は会社としての本音は別のところにあり、しかも声がでかいだけの特異な人物に弱いという遺伝子があるようなのである。

かなり前のことだが、ゴルゴ13にフランスの自動車会社ルドーのゴンザレス会長というのが出て来て、政界の黒幕に「コストカットしか能のない移民の息子」と罵られていた。ことほど左様に、彼がうさんくさい人間であることは広く知れ渡っていたのである。

そういう人物に長きにわたり経営を任せてきて、逮捕されたいまになって被害者のような顔をしたって遅いのである。もちろん、検察が動いたのは内部からのタレコミだろうが、それも含めて企業の危機管理の問題であり、こういうことが起これば売上に響くくらい考えないのがおかしい。

こういう会社だから、近い将来、監督官庁や銀行からの天下り、あるいは外部有識者とやらに経営を壟断されて、同じような騒ぎを起こす可能性はかなり大きい。それまで私の寿命がもつか、会社の寿命がもつか分からないが。

話は変わるが、保釈の時に交通整理の恰好をさせたのは、「市中引き回し」以来の日本の法務省(外務省か?)の遺伝子だろう。まさに「見せしめ」のためにあれをやったのは間違いない。成田空港の金正男を思い出したのは、私だけではあるまい。

[Apr 3, 2019]


ホームページを見ると、逮捕も起訴もひとごとみたいです。あまりお詫びするつもりもなさそう。