084 筑波山 [Mar 19, 2019]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

わが家から奥多摩よりも丹沢よりも、さらには房総より家に近いところに山がある。それも深田百名山である。その名は筑波山、晴れた日には平野部から立ち上がった双耳峰が家からでもよく見える。

でも中学の遠足以来約半世紀、ドライブに行ったことはあるが登ったことはない。高尾山や鋸山と同様、頂上までロープウェーやケーブルカーが通じていて売店がにぎやかなところに、あえて登りたいと思わなかったからである。

ただ、よく調べてみると結構おもしろそうだ。遠くからは2つの峰だけが独立して立ち上がっているように見えるが、山塊が南北に連なっていてとても1日ですべて歩ける広さではない。

朝ゆっくり出発して、歩けるのもいい。という訳で、まずは主峰の筑波山を目指すことにした。珍しく奥さんも来るというので、天気の良さそうな日を選んで行ってみることにした。

2019年3月19日、やや曇りがちながら風はなく、穏やかな山日和であった。7時前に家を出て、神崎ICから圏央道でつくば中央まで。学園都市は通勤時間帯なのか少し混んでいて、筑波山神社の門前町に着いたのは9時前だった。つくば市営の大きな駐車場に停める。1日500円の前払いである。

「神社近道」の道案内に従ってまずは筑波山神社へ進み、安全祈願のお参りをする。筑波山神社のご神体は筑波山そのもので、祭神は伊弉諾尊・伊弉冉尊、イザナギ・イザナミ両神である。男体山・女体山と一体の神とされ、それぞれ頂上にお祀りされている。

最初にお参りしたのは山麓にある拝殿で、ここから上はすべて神領となる。したがって、登山道はすべて筑波山神社の境内ということである。ただし月山のように撮影禁止ということはない。登山道に沿った説明板も数多く掲げられている。

頂上に至るルートには御幸(みゆき)ヶ原ルートと白雲橋ルートがあり、前者が男体山に、後者が女体山に通じている。WEBによると御幸ヶ原ルートの方が傾斜が急だということなので、あえてそちらから登ることにする(やっぱり、簡単だと思っていたのだ)。

御幸ヶ原ルートはケーブルカーに沿って、筑波山頂駅のある御幸ヶ原まで登る。ケーブル駅のある宮脇まで道案内のとおり進むと、途中から登山道が分かれている。登山道入口には、大きな石造りの鳥居があるので迷うことはない。

登山道に入ると、いきなりの急登である。途端に息が上がる。身軽な奥さんは元気に先に進むが、体の重い当方はそう簡単に持ち上がらないのである。最初のベンチまで20分かその位なのに、すでに汗びっしょりになった。

今回は短時間で往復できると思っていたし、頂上近くにも売店があるから水もペットボトル1本しか持っておらず身軽である。にもかかわらず、やっぱり登りは簡単ではない。空身で歩いたとしてもスピードは出ないだろう。

登山道はケーブルカーに沿って進む。おそらく工事の際に資材置場に使われたのだろう、ところどころ広くなってベンチが置かれている。そして、20分置きにケーブルカーが動くので、ケーブルのかたかた動く音が走っている間響いている。歩いている間にも行ったり来たりしていた。

約1時間で、ケーブルカーのすれ違い地点まで登る。すれ違うということは中間地点である。あと半分。ここから先、ケーブルカーはトンネルにもぐるので、その上を登って行く。いったん下りまた登ると、男女川(みなのがわ)源流に出た。

男女川は百人一首の陽成院「つくばねのみねよりおつるみなのがわ」の歌で知られる歌枕である。水神様の祠のところに塩ビパイプが2本出ていて、そこから1滴2滴としずくが落ちており、すぐ下にも水の湧いている窪みがあった。

奥さんがHP切れだというので玄米ブランで栄養補給して先に進む。男女川源流まで進めば残りは約4分の1だが、ここからは丸太の階段が頂上まで続く。登っても登ってもまだ階段が続く難所であった。

ようやくケーブルカーの頂上駅が見えたのは、午前11時になる頃だった。90分のコースタイムを2時間弱、決して楽なコースではない。お参りや休憩時間を勘案すればほぼコースタイムで歩けていると思うけれども、考えていたのと違って本格的な登山コースであった。


登山道は筑波山神社から始まる。安全を祈願してお参りする。筑波山そのものがご神体であり、男体山・女体山頂上にイザナギ・イザナミ両神をお祀りしている。


御幸ヶ原コースは、ケーブルカーの線路脇を通って登山道が通じている。ケーブルカー工事の際に資材置場に使ったのか、休憩ベンチが頻繁にある。


2kmほどの間に標高差600mほど登るので、傾斜はかなり急である。ただ、岩場・ガレ場は少ないので、どちらかというと下りに使った方が楽かもしれない。

 

ケーブルカー山頂駅のある御幸ヶ原は平日なのに結構な人がいて、空いているベンチは1つだけだった。望遠鏡脇のベンチに腰掛け、テルモスのお湯でインスタントコーヒーを淹れ、ファミマで買ってきた菓子パンでお昼にする。

ぽかぽかと日差しは暖かく、風もなくていい天気なのだが、ベンチに座っていると汗が引いてくる。登ってきた当座は「ビール」とか「ソフトクリーム」の幟が魅力的だったが、落ち着くと温かいコーヒーがうれしい。

さすがに百名山で、登ってくる途中も抜かれたりすれ違ったりする人が多かったが、御幸ヶ原でもケーブルカーが着くたびに十数人下りて来た。登山道の脇を通っている時は誰も乗っていないように見えたが、徐々に人出が増えてきたようである。

御幸ヶ原から女体山方面はなだらかに開けていて、土産物店と数台のアンテナが見える。昔と同じ筑波山頂の風景である。振り返るとすぐ後ろから男体山が立ち上がっていて、こちらの頂上にもアンテナと、何やら鉄筋コンクリートの建物が見える。

一休みした後、男体山を目指す。見た目では標高差50mほどなのだが、結構ハードな登り坂である。筑波山神社からの登りでも感じたけれど、ケーブルカーが通っているから軽い山だと思いがちであるが、そんなことはない。

駐車場から御幸ヶ原まで570m、男体山まで650mの標高差に対して、距離は2kmほどである。つまり、傾斜が相当きついということである。秋に登った檜洞丸が4.8kmで標高差1050mだから、平均斜度は檜洞丸よりきついということである。誰もそんなことは思わないだろうが。

がんばって男体山頂上へ。こちらはイザナギノミコトをお祀りしてある。お宮脇にある小さな建物は、正月に開けてお守りとかおみくじを売るらしく、多くのおみくじが結わえつけられている。

お宮の前からは、西に向けての景色が広がっている。筑波山の西だから筑西。下妻、結城、下館といった地域が足下に、そしてはるか彼方に雪をかぶった日光連山が見える。

「まだ雪降ってるんだ」と奥さんが意外そうに言うので、「だってまだ尾瀬の山小屋やってないじゃん」と答える。尾瀬の山小屋が開くのはGW過ぎ。春が来るのはしばらく先である。

そして、頂上に建っていた建物は、戦前に建てられたという気象観測所であった。50年前に来た時見た記憶がないから、もしかするとその時は男体山には登らなかったのかもしれない。

この気象観測所は山階宮が私費で建設して国に寄贈したもので、建物自体はケーブルカー建設後に建て替えられたものという。それでも昭和はじめだから、すでに80年以上が経過している。

門はロープでぐるぐる巻きにして閉じられており、外壁やコンクリートはところどころ剥がれ落ちている。にもかかわらず内部にはいまでも気象観測機器が置かれていて、筑波大学が管理しているということだ。

気象衛星がなかった頃、天気予報の精度を上げるためにはこうして標高の高い地点で観測することが重要だった。山階宮といえば山階鳥類研究所が有名であるが、自然科学に造詣の深い宮家だったようだ。

さて、男体山頂はそれほど広くないし、腰を下ろすところもない。次々と後続組が登ってきてゆっくりしていられないので、早々に下る。登るのは一苦労だが、下るのはあっという間である。

御幸ヶ原は素通りして、女体山に向かう。こちらは見た目どおりなだらかな坂道である。アンテナや管理用建物と、カタクリ保護育成中の一帯があって柵に囲われている。いくつかあるベンチでは、団体がコンロに鍋を乗せて何か作っている最中であった。(「火気厳禁」と掲示はあるのだが)


御幸ヶ原はケーブルカーの終点。登ってきた人達で、平日なのにかなり賑わっていた。


御幸ヶ原のすぐ横から、男体山に登る。頂上近くの建物は、山階宮が私財で建設したという気象観測所が建つ。現在は筑波大学の施設として、観測機器等が置かれている。


男体山頂上からの眺め。この日は少しもやがかかっていたが、それでも日光連山あたりまでは見ることができた。

 

ゆるやかな坂を登ったり下ったりして十数分、女体山に到着する。「日本百名山」の石碑があり、眺望の開けた岩の上は先着組で一杯。イザナミノミコトをお祀りする女体山御本殿にお参りして、すぐに下りに移る。

さて、女体山到着の時点で、すでに予定より30分遅れていた。登りの御幸ヶ原ルートが予想外にハードだったため、休憩時間はそれほどとっていないにもかかわらず押していたのである。

そして、女体山からの下りは御幸ヶ原ルート以上にきつかった。頂上直下では岩場の鎖場で、登ってくる人も多いので通り過ぎるのを待つ時間もある。このルートは下りる方が登る以上にきついのではないか。

とはいえ、帰りのバス時間がある訳ではないので、奇岩巨石の写真を撮りながらのんびり進む。巨岩のいくつかには神社の末社がお祀りされていて、山全体がご神体というのもなるほどと感じる。

それでも、平らに道が続くのはわずかの間で、すぐに岩の段差がある山道となる。こうしたハードなルートを、小さな子供を連れた家族とか、中高年女性ばかり30人ほどの団体が登ってきていた。やはり、茨城県唯一の百名山である。

こちらのルートは白雲橋コースといって、WEBでは初心者向けと説明されているのだが、少なくとも下りで使うには、結構気を使うコースであった。下りのコースタイムは95分なのだが、ほとんど休みなしで2時間以上かかった。

登りでは軽快に飛ばす家の奥さんも、下りはヒザが痛いといって私より遅れるのはいつものことである。弁慶七戻りという、巨岩が下の岩に微妙に支えられてトンネルになっている箇所を過ぎると、つつじヶ丘との分岐、弁慶茶屋跡である。

ここはかつて、弁慶茶屋というお店があった跡ということだが、ずいぶん昔のことのようだ。すでに建物があった名残りもなくなっている。広くなっているもののベンチは少なく、座れないのでそのまま下る。

分岐の後は木立の中を淡々と下る。傾斜は山頂直下に比べると緩やかになったものの、展望が開けないまま道だけがずっと続く。ようやく下山口の鳥居が見えてきた時には、もう午後3時近かった。

土産物店の店先を抜けて、朝通ったはずの近道を見過ごしてしまい、最後に駐車場への登りを余計に歩いてしまった。車に着いた時には夫婦ともかなりバテてしまって、奥さんは「もう歩くのやだ」と言っていた。

結局予定していたよりも1時間多くかかってしまい、1/25000図で10cm四方の場所を1日かかって歩いたということになる。どんな山でも、甘く見てはいけないということであった。

[Jun 10, 2019]

この日の経過
つくば市営駐車場 9:05
10:00 ケーブルカー中間地点 10:05
10:30 男女川源流 10:40
11:10 御幸ヶ原 11:30
11:45 男体山 11:50
12:25 女体山 12:35
13:25 弁慶茶屋跡 13:25
14:55 駐車場
[GPS測定距離 7.3km]


女体山頂上には日本百名山の石碑が立つ。


下山路は白雲橋コース。奇岩巨石が次々と現れ、それぞれに筑波山神社の末社が祀られている。


登山道も岩だらけで、下るには時間がかかる。1/25000図で10cm四方もないくらいの広さを歩くのに、1日かかるとは思わなかった。