610 六十一番香園寺 [Oct 10, 2018]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

注.2018年の台風被害により、横峰寺への遍路道が通行止となりました。そのため、六十一番から六十三番をお参りした後、平野林道経由で六十番横峰寺をお参りしています。

第9回目のお遍路区切り打ちは、出発直前になって急きょ予定変更となった。1週間前に来襲した台風24号により、横峰寺への遍路道が通行止になったのである。霊場会HPに次の告知が掲載されたので気がついた。

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59番国分寺より60番横峰寺への歩き遍路道が台風24号の被害で通行不能になっております。徒歩巡拝の方は無理をなさらず、車道への迂回をお願い申し上げます。
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わざわざ問い合わせるのもどうかと思ったけれど、横峰寺に電話して聞いてみた。お寺の方が言うことには、山道は土砂崩れで通行できない、車道でしか登って来れないとのことであった。

「車道ということは、六十三番まで回って、平野林道を歩いて上がるということでしょうか。」

「そうですね。その他の道は、通れなくなっています。」

横峰寺までの登山道はいくつかあり、どれか使えるだろうと思ったのだが、登山道はすべて無理のようである。実際に登ってみて、歩けるようであれば下りで別のルートをとるとしても、少なくとも登りについては、車道で行くことになる。

直前までの計画では、前回の終着点である壬生川駅まで特急に乗った後、別格霊場の西山興隆寺・生木地蔵と歩いて、翌日横峰寺に登り香園寺に下りてくる予定であった。そのため、宿泊も生木地蔵と横峰登山口の途中にある「小町温泉しこくや」を予約したのである。

ところが、この道が通れないとなると、抜本的な計画変更を余儀なくされる。直前なのでホテルの変更は難しいが、ルートは変えなければならない。残念ながら別格霊場二つをまたの機会として、壬生川から六十三番まで先にお参りし、林道経由で翌日横峰寺というのが唯一可能な方法のように思われた。

2018年10月10日、朝一番の羽田発で松山空港に着いた。松山は四国4県の中で唯一、市街地からすぐに空港である。リムジンバスもJR松山駅に着いてから伊予鉄松山市駅に向かうので、20分そこそこでJR松山駅まで到着する。この日もスムーズに動いて、予定したよりも1本早い各駅停車に乗ることができた。

特急と到着時間はほとんど変わらないが、料金が安く済むのと、前回歩いた経路をゆっくり確認しながら進むのがいい。伊予和気は今治への長距離をスタートした駅だし、伊予北条にかけて瀬戸内海を望む景色は、ちょうど前回歩いたところである。お昼を食べた海賊うどんも見えた。

菊間あたりの石油コンビナートもなつかしい景色だし、瓦屋さんが続く一画はあっという間に通り過ぎてしまった。大西を過ぎると遍路道と分かれ海沿いを進み、ほどなく今治、今治を過ぎるとすぐに壬生川である。

壬生川に着いたのは11時過ぎ。ここで特急との接続となり、各駅停車は特急の出発待ちとなる。お昼にしようと、前回もお世話になった駅前のパン屋さんでカツサンドとあんドーナツを買う。歩きながら食べるつもりである。


今回のスタート地点、JR壬生川駅。平屋の緑屋根が駅舎で、右の白いビルが行政施設。乗ってきた各駅停車は特急が発車してもまだ止まっている。


跨線橋の上から、これから向かう横峰方面を望む。この時点で雨は降っていなかったが、雲でほとんど山並みを見ることはできない。


小松の街が近づき、うっすらと横峰前衛の山々が見えてきた。この後雨になり、翌日の横峰寺はきびしい登りとなった。

 

さて、この日出発するにあたり、たいへん気がかりだったのは、体調がすぐれないということであった。

お遍路歩きの準備として、8日前に伊豆ヶ岳で山歩きをし、4日前には近所を15kmほど歩いたのだが、この時たいへんに暑くて、家に帰る頃にはへとへとになってしまったのである。

まあ、遠い四国でへとへとになるくらいなら近所でなった方がましなのだけれど、疲れは足腰よりも体調に来てしまい、どうにも調子がよくなかった。とはいえ、宿やエアを予約してあるから日程を動かす訳にはいかず、この日も、松山までの道中ずっと目をつぶって体力回復を図っていた。

壬生川のパン屋さんで入手したカツサンドとあんドーナツを食べても、なかなか頭がすっきりしてこない。ホームセンターの前で県道を左折し、小松市街方向に向きを変える。すっきりしない頭と同様、行く手の山々は雲に覆われてよく見えない。

それでもがまんして1km2kmと歩いている間に、頭より先に足がペースを思い出してくれた。大きな川を一つ渡ってミニストップでソフトクリームを買う。ようやく頭の方もピントが合ってきた。

小松の街が近づくと、横峰方向がぼんやり浮かび上がってくる。山の中腹に建物が見えるあたりが香園寺だろうか(建物は小松高校で香園寺はその前あたりになる)。左にショートカットできそうな道が見えるけれども、様子が分からないので安全策で県道を直進する。体調が今一つの時は、リスクを最小限にした方がいい。

国道11号にぶつかって左折すると、そこからは案内板があるので安心である。スーパーのある角を案内にしたがって右に入り、ほどなく六十二番納経所が見えてきた。その横に六十一番の山門があり、心配していた登り坂がなかったのはありがたかった。

栴檀山香園寺(せんだんさん・こうおんじ)、古くは「香苑寺」と書いたようで、霊場記にはその名前が使われている。弘法大師がこのあたりを通りかかると栴檀の芳香がしたので寺を建てたという伝説がある。

たびたび引き合いに出す五来重氏によると、香園寺は「とめてとまらぬ白瀧の水」とご詠歌に謳われている白滝の霊場があって、もともとそこにお参りする施設として開かれたという。白滝の霊場は香園寺の奥ノ院であり、横峰寺から下りてくる経路にあるので今回はお参りすることができなかった。

山門の向こうから本堂が見えてきた。昭和50年代に本堂を大改装し、八十八ヶ所では大変珍しい鉄筋コンクリートの巨大な本堂である。本堂には右側の階段から2階に入り、スリッパに履き替えてご本尊のいらっしゃるステージ前に進む。後ろには備え付けの客席があり、コンサートでもできそうである。

ご本尊は大日如来。今回はじめてのお経を上げさせていただく。このホールは大師堂を兼ねていて、向かって右奥にお大師様がいらっしゃる。そちらにもお伺いして読経。私のいた時には4、5人の参拝者がいるだけで静かだったが、バス遍路でも来て大声で唱和されたら、ずいぶんにぎやかなことになりそうだ。納経所へはいったんホールを出て、山門の方に戻る。

霊場記挿絵をみると境内にはほとんど建物がなく、説明には周囲は田畑であると書かれている。そういう状況から今日の大きな施設に成長させたのだから、香園寺代々のご住職には経営手腕があったということであろう。

この香園寺はあの種田山頭火が頼りにしていたお寺さんでもあり、当時から経済的には余裕があったことを窺わせる。札所であるだけでなく「子安大師」が有名で、ご本尊お姿のほかに子安大師のお姿もいただける。各地から、子育て祈願のお参りが多いようである。

この日の経過
JR壬生川駅 11:15 →[6.2km]
12:50 香園寺 13:25

[Apr 27, 2019]


国道11号から案内表示にしたがって右に折れると、ほどなく香園寺の山門が見えてくる。すぐ横には六十二番礼拝所がある。


木立ちの向こうから迫る巨大なホール(大聖堂)。納経所はこのホールの前、この写真では左側になる。


香園寺大聖堂。本堂と大師堂を兼ねる。ホール右側の階段を上がって2階から、スリッパに履き替えてお参りする。ホールの中には備え付けの客席があり、まるでステージのようだ。