083 仏果山・経ヶ岳 [Feb 18, 2019]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

2019年の冬は、雪が少なかった。2度ほど積もった日はあったが、どちらかというと沿岸部で降雪量が多く山では根雪とならなかった。となると、ヒルが出ないうちに丹沢である。

1月に大台山から御殿山に登った際、最後の階段で息が上がってしまった。誰も通らなかったからよかったようなものの、誰か来たら邪魔だしみっともない。房総の300m級でへたばるとは、いかにアップダウンが激しいとはいえ無様である。

そんなことがあったので、この春はいきなり1000mを目指さず、低山から始めることにした。低山とはいえ、丹沢は低い山でも房総の倍はある。今回は、本厚木からバスで行ける仏果山・経ヶ岳を歩く計画を立てた。

このルートの大部分は、個人的に高速登山道と呼んでいる関東ふれあいの道である。環境省の指導のもと、国・都道府県が予算をつけて整備・維持管理している。房総の奥の方には鎌倉幕府以来維持管理されていないような登山道もあるけれど(w)、高速登山道ならそのようなことはないだろう。

2019年2月19日、前の週は寒かったが、この日は高気圧が張り出していい天気になりそうだ。もっとも、あまり暖かい日が続くとヒルが出るので、このくらいの季節がいい。

朝一番の電車で都心に出て、小田急で本厚木まで。本厚木から宮ヶ瀬行きのバスに乗って、仏果山登山口に着いたのは午前8時半。雨も雪も少なかったせいか、宮ヶ瀬ダムの水位はかなり下がっていた。バス停前から登山道への階段がある。

宮ヶ瀬ダムは、塩水林道から丹沢山に登った時以来である。階段を上がってすぐに登山届ポストがあり、ヒル除けスプレーも置いてある。スプレーは空だった。まだヒルは出ないということでひと安心である。

それでもさすがに、道案内と同じくらい多く「ヒル注意」の看板が立てられていた。登山道入口には「クマ注意」の立札があり、つい最近クマの目撃情報があったということで驚いたが、登山道に入ると「ヒル注意」ばっかりだ。

山肌に沿ってなだらかに登山道が登って行く。房総ではあまり見かけない景色で、登りが長いのは厳しいけれど歩き甲斐がある。やがてスイッチバックの急坂になった。

この日は朝一番で3時間半の移動、しかも前日あまりよく眠れなかったにもかかわらず、体調は悪くない。足がスムーズに前に進むし、息もそれほど切れない。ちょっとうれしい。

ひとしきりスイッチバックを登ると、共同アンテナのような設備の横にベンチがあったので小休止。この日は寒くなさそうなので夏ズボンをはいて来たけれど、2月にしては暖かく汗もよく出る。

ベンチで一休みの後、再びスイッチバックの登りがあり、峠地形が見えてくると宮ヶ瀬越で稜線に出た。宮ヶ瀬越の「越」とは「峠」のことで、このあたりにはなんとか「越」という地名がいくつかある。

宮ヶ瀬越では休憩せずにそのまま高取山に向かう。15分ほど尾根道を進むと、話に聞いていた鉄骨造りの展望台が見えてきた。かなり高くて立派なものだ。9時55分、登山口から1時間20分で高取山頂上に到着した。


登山口からヒル除け設置場所を過ぎると、いかにも登山道らしい登りとなる。房総ではあまりみかけない道である。


登山口から1時間、峠地形が見えてくると間もなく宮ヶ瀬越である。ここからまず左へ進み、高取山を目指す。


高取山頂上には十数mの展望台が建つ。仏果山にも同じ仕様の鉄塔があるが、位置が違うので見える景色も微妙に違う。

 

鉄骨製の展望台に登ってみる。この日登った山々は標高も低いので、登山道の周囲を木々が取り巻いて見通しがよくない。せいぜい、葉の落ちた隙間から向こう側が見えるくらいだったのだが、20m近くある展望台の上は一番高い木よりさらに上にある。

さえぎるものは何もない絶景である。足下には宮ヶ瀬湖が広がり、湖にかかった2つの橋もすぐ近くに見える。橋を渡った向こう側が三叉路バス停で、そこから歩いて丹沢山に登ったのだった。ということは、三叉路から立ち上がる稜線が丹沢三峰、左に高く見えるのが丹沢山である。

南に目を転じると、見覚えのあるアンテナは大山、送電鉄塔の見えるあたりがヤビツ峠である。すると、そこから続くのが二ノ塔、三ノ塔から塔ノ岳への表尾根。塔ノ岳から丹沢山の間のピークが日高、龍ヶ馬場になる。

さらに蛭ヶ岳への稜線に見えるピークは、不動の峰と鬼ヶ岩、このあたりは手前の丹沢三峰の後ろになるので見え隠れしている。そして、蛭ヶ岳から伸びる最後方の稜線が、黍殻山から焼山の東海自然歩道ということになる。

これまで相模湾側からの丹沢主稜線に見慣れていたので、こうして逆側から見るとなんだか印象が違う。そして、丹沢から道志側に下っている山並みはあまり見たことがなかった。昨年蛭ヶ岳から下りた時は、一番向こうに見える稜線の逆側に出たのだ。

高取山の頂上には展望台だけでなくいくつかベンチやテーブルが置かれている。まだ時間が早かったので小休止にとどめ、水分補給だけで10時15分出発。再び宮ヶ瀬越まで戻って仏果山に向かう。

1/25000図を見ると、宮ヶ瀬から高取山と仏果山はほぼ同じ距離に見えるが、仏果山に行く方が時間がかかる。というのは、稜線が微妙に左ドッグレッグしていて、その間3つ4つコブがあって登ったり下りたりしなければならないからである。

そういえば以前、高原山の釈迦ヶ岳で同じようなことがあったのを思い出した。今回は幸いに、釈迦ヶ岳ほど苦労することなく、アップダウンを繰り返しているうちにピークが近づいて、ロープのある急登を登ると広くなった仏果山頂上に出た。午前11時、高取山から45分かかった。

高取山は私の他には1人しかいなかったのだが、仏果山はすでに3グループ4、5人がいて、お昼休憩をしている間にもさらに何グループも登ってきた。すべてシニアである。平日でこれだから、休日だとさらに人が多くなることだろう。混む前にお昼にする。

この日のお昼は、ジャムとクリームのコッペバン、定番のフルーツパック、パックのぜんざい、テルモスのお湯で淹れたインスタントコーヒーである。風もなく、お昼休みには何よりである。とはいえ、どんどんシニアが登ってきて騒がしくなってきた。少しあわただしいが出発する。

高取山と同様、仏果山にも鉄骨製の展望台が建っている。同じ景色だろうと思ったけれども登ってみた。すると、位置が違うので景色が微妙に違って面白かった。宮ヶ瀬ダムが遠くなり、代わりに大山が近づいていた。東側には、相模原市から多摩への景色が広がっている。

備え付けられていた展望台の銘板によると、発注者は愛川町で有限会社佐藤建設の施工、1988年2月完成とある。高さは13mで、もっとあるかと思った。高取山と構造も姿形も同じなので、おそらく同時期に作ったものと思われた。

1988年ということは昭和から平成に代わる時期であり、官房長官が小渕で総理大臣が竹下である。ということは、あるいはこの展望台は、例の「ふるさと創生1億円」によるものなのかもしれない。


再び宮ヶ瀬越に戻って、逆方向の仏果山に向かう。木々の間からピークが見えて来るが、尾根伝いに右から回り込むので結構時間がかかる。


山頂直下ではロープも登場する急登となる。


仏果山頂からの眺め。アンテナの立つ大山頂上から、表尾根、塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳から黍殻山・焼山に至る丹沢山系が一望できる。

 

仏果山からの眺めを楽しんだ後、ちょっと失敗してしまった。当然まっすぐの道を進めばいいだろうと思って、展望台から下って行くのだが、これから進むべき経ヶ岳が見えて来ないどころか、どうみてもこれは宮ヶ瀬へ下りる道である。

すでに5分ほど下りてしまったので、面倒だからこのまま下山してしまうかと一瞬思ったが、時刻はまだ正午前。午後1時には麓に下りてしまう。それではいくらなんでも時間を余し過ぎる。仕方なく、いま下った道を登り返す。幸い、ほどなく展望台が見えてきて安心したが、10分ほどのタイムロスをしてしまった。

経ヶ岳方向へは、先ほど登ってきた急登のすぐ脇にあった「この先道幅狭く注意」の立札の横を進む。実は、さっき下りかけた道とこれから進む経ヶ岳への道は、高速登山道・関東ふれあいの道なのだが、朝から登ってきた道より厳しい道になってしまったのは予想外であった。

丹沢の低山でヤセ尾根というと、梅ノ木尾根の「この先は登山道ではありません」の標識がすぐ思い浮かぶが、ここのヤセ尾根も負けず劣らずのヤセ尾根だった。両側が鋭く切れ落ち、踏み外したら大変である。

関東ふれあいの道だと、こういう危険個所には両側手すりを設置していたりするところが多いのだが、ロープが引いてあるだけである。千葉の高速登山道とはレベルが違う。よく見ると谷の深さは梅ノ木尾根ほどではないが、それでも落ちたら大ケガ必至である。

そして、梅ノ木尾根の危険個所よりこちらの方が距離が長いような気がする。高速登山道どころか、関東ふれあいの道に入ってから急激にスピードが落ちてしまった。

半原方面への分岐あたりでようやく尾根が広くなり、足下も安定した。ゆるやかなアップダウンを乗り越えていくと、1/25000図の640ピーク、革籠石(かわかごいし)山に出た。ここで一休み。ずいぶん歩いたように思ったがまだ12時20分、仏果山から40分しか歩いていなかった。

さて、この日登ったのは仏果山といい経ヶ岳といい抹香臭い名前である。関東ふれあいの道なので山名由来など多くの説明看板が掲げられていたが、仏果山は室町時代の仏果禅師が座禅修行した山で、経ヶ岳は弘法大師がお経を納めた山という。

弘法大師がここまで来たとは思えないとしても、塔ノ岳を中心とした丹沢山系は古くから山岳修験の盛んだった土地である。また、大山は別名雨降山で、やはり古くから雨乞いの山であった。そうした背景があって、鎌倉時代以降、地域が開けて行くと同時に仏教も浸透していったものと思われる。

革籠石山から先、ようやく高速登山道らしく歩きやすい道が続く。とはいえ、朝から登り始めてすでに4時間、そろそろ足腰に疲れが出てきた。これから半原越まで150m下って、経ヶ岳まで150m登るのは、分かっていたとはいえ気が重い。

591ピークのあたりでは黒板を持った工事中の人達がいて、ちょうどお昼を食べている最中だった。付近には柱や網が何ヵ所か置いてあったから、鹿除け・猪除けの設置工事だと思われる。そこから半原越まで下りて行くと、林道にトラックが何台かとオートバイが止めてあった。

林道に交差したところが峠で、林道の逆側から経ヶ岳への登りが始まっている。いきなりのスイッチバックだ。ここまで下ってきたのに、その分また登らなければならないと思うと気が重い。この日一番高かったのは仏果山747mだが、累積標高差は優に1000mを超えていたと思う。

スイッチバックを登り切ってようやく稜線に出たと思ったら、今度は擬木の階段である。例によって土留めの土が流出していて、大変歩きにくい。下りてきたおじさんがやけにゆっくり歩くと思っていたら、すれ違う時に「足が痛くなっちゃって」と言っていた。標高が低いからといって楽とは限らないのである。


仏果山からは高速登山道のはずなのに、まるで梅ノ木尾根のようなヤセ尾根が続き油断できない。


1/25000図の640ピークには、革籠石山の山名標が立つ。このあたりまで来ると、道幅が広がり高速登山道らしくなる。


いったん標高488mの半原越まで下りて、経ヶ岳633mへの登りとなる。かなりきつい。

 

経ヶ岳への最後の登りはきつかった。長い階段が終わったと思ったらそこはまだ経石といういわゆる肩にあたる場所で、その先にまだ急登が待っていた。ようやく登り切った山頂は意外と広かった。半原越から35分、13時55分に到着。

私のすぐ後に登ってきたおじさんも、「今日一番きつかったですね」と言っていた。おそらく私と同様、仏果山から縦走してきたようだった。1/25000図で見るより、アップダウンがあって歩き応えのあるコースだった。

高取山・仏果山のように展望台はないけれども、ベンチがあって眺めがいい。三角点が置かれており、確かに測量するには具合のいい場所である。近くに、「丹沢の三角点」という案内看板が置かれている。塔ノ岳、丹沢山をはじめ主だった山にはほとんど三角点が置かれているが、檜洞丸だけはない。おそらく、昔は見通しが利かなかったためだろう。

ずいぶん南西に歩いてきたので、もう宮ヶ瀬湖は見えない。代わりに仏果山や半原越を経ていま歩いてきた稜線を見ることができる。東にも西にも、市街地が迫っている。ということは、アプローチには恵まれているということでもあろう。

さて、経ヶ岳から下山口である半僧坊バス停までは、ヤマケイアルパインガイドのコースタイムは1時間である。1/25000図を見ると、仏果山登山口から宮ヶ瀬越の倍近く見えるのだが、高速登山道だし、市街地が近いのでそんなものかと思っていた。

ところが、私の目見当の方がかなり正確で、実際に歩いたら1時間20分かかった。道もスイッチバックの急傾斜が多く、それほど時間短縮ができるとは思えない。

ヤマケイの担当者が歩けばそのくらいなのだろうが、ハイキング初心者も歩くであろう「関東ふれあいの道」なのだから、それなりの数字を載せてほしいものである(それに、経ヶ岳から革籠石山あたりのヤセ尾根は、初心者にはちょっと危険)。

もう一つ戸惑ったのは、千葉県だと関東ふれあいの道の行先表示には、目的地と残り距離がデフォルトで書かれているのだが、神奈川県の場合は目的地だけで残り距離が書いてないのである。同じ高速登山道でも都道府県によってやり方が違うようである。まさか、5kmに1基くらい置かれている石の距離表示を見ろという訳でもあるまいが。

経ヶ岳からしばらくなだらかな尾根が続くが、やがて急傾斜のスイッチバックとなる。林道と交差してそろそろ終わりかと思いきや、そこからがまた長い。

立ち止まってGPSを見て、現在位置を確認しようと思ったのだけれど、こういう時に限ってベンチが出てこない。結局、経ヶ岳から下山口まで休みなしで歩くことになった。

谷に向かって急傾斜を下り、堰堤を過ぎるとようやく道が広く平らになった。いきなり、車の音が間近に聞こえる。カーブをいくつか曲がると、国道に合流した。そのまま150mほど道なりに進んだ所に、半僧坊のバス停がある。

丹沢というとこれまで大山から西を多く歩いていたので、この山域は初めてであった。実際に歩いてみると、標高が低い割にアップダウンがあって時間がかかり、歩き応えがあった。しばらく房総を歩いていたので、2~3日は太ももが痛んだくらいだった。

景色も大変よく、朝一番で家を出ればそこそこの時間に歩き始められるので、移動による疲れも少ないような気がする。心配はヒルだけれど、2月であれば大丈夫そうである。

冬の丹沢は雪が積もったり寒かったりするけれども、このくらいの高さなら歩くのに不便はなく、ぜひまた来てみたい山域である。

この日の経過
仏果山登山口(213) 8:30
9:15 共同アンテナ付近(527) 9:20
9:40 宮ヶ瀬越(659) 9:40
9:55 高取山(705) 10:15
11:00 仏果山[昼食休憩](747) 11:40
12:20 革籠石山(640) 12:25
13:15 半原越(488) 13:20
13:55 経ヶ岳(633) 14:10
14:40 林道横断(430) 14:40
15:30 半僧坊バス停(105)
[GPS測定距離 9.6km]

[May 20, 2019]


経ヶ岳への最後の登りはなかなかきつい。このルートを歩いてきた人と「今日一きつかったですね」と話になった。


二等三角点の立つ経ヶ岳頂上。標高600~700mの縦走だったが、結構歩き甲斐がありました。


経ヶ岳からの下りはたいへん長く、関東ふれあいの道なのに距離が書いてなかった。コースタイム1時間ではとても無理だと思う。