0462 人間魚雷 広木幸生引退を惜しむ [Oct 29, 2007]

先週の島田信広死去に続き、オートファンには寂しいニュース。川口所属で元SMAPの森且行がデビューするまでカリスマ的な人気を誇った「人間魚雷」こと広木幸生選手が先週ひっそりと引退した。まだ37歳であった。

若井、森の25期コンビ(97年デビュー)がデビューする前、川口オートは日本一の売上と日本一のスタンドで日本最弱の選手が走るオートレース場となっていた。かつて川口四天王と呼ばれた広瀬、篠崎、且元、阿部は全国最強の地位を譲り渡して久しく、牛沢や掛川といった若手は川口同士ではそこそこがんばるのだが他地区の選手とぶつかると軽くころがされた。その中で、ただ一人といってもいい光るレースをみせていたのが広木幸生なのである。

広木のレースはその戦闘力に最大の特徴がありまた魅力があった。オートレースは1周500mの楕円形コースを平均時速100km/h以上で走るのだが、高速・小回りで8車が競走する訳だから非常に危険である。だから、原則として前の車を抜く時は「外から」抜かなければならないと決められている。

もちろん、外を回るということはそれだけ走る距離が長くなるということだから、多くの場合はインから抜く。その場合のルールは「十分な間隔がある場合に限り内側から抜くことができる」となっている。

「十分な間隔」とは何cmのことをいうのか?実は、そんな決めはない。このルールの解釈は、「インコースから抜いて、抜かれた選手が転倒したり大きく飛ばされたりしたらアウト、そうでなければセーフ」ということなのである。

さて、広木は強いから他の選手より後ろからスタートする。前の選手を抜かない限り、彼から車券を買っているファンは損をする。その場合、十分な間隔があろうがなかろうが、前の選手のインコースに突っ込んでいくのが広木なのであった。

これを称して、常連ファンの間では彼のことを「人間魚雷」と呼んでいた。十分な間隔がなくても飛び込んでいくものだから、まるで前の選手を狙ってぶつかっていくように見える。また、この人間魚雷はよく命中して前の車を落車させた。

落車させると反則失格となり、完走しても賞金はもらえないし車券の対象とはならない。ただ、どうしてそんなに落車が多いのかというと、川口の選手の多くは下手くそなので、後の気配を察してうまくよけるということができないということもあった。

こうしたレースは選手同士や主催者には大層嫌われて、何度も長期のあっせん停止(出場停止)処分を受けてしまったが、彼のファンは多かった。なぜかというと、おカネを賭けている側からすれば、抜けそうにないからといっておとなしく後ろを回っている選手より、なんとか車券の対象である2着以上になろうと必死になる選手の方が、たとえ外れてもあきらめがつくからである。かなりジャニーズ的なルックスなので、女性ファンも多かった。

わたしの経験で言うと、当時川口の選手で川口以外を走る時に買うことのできる選手は、広木だけであった。実際、山陽オート(山口県にある)に遠征したときに、よく広木から穴車券をとらせてもらった。おそらく、船橋とかに山陽とかに配属されていたとすれば、もう少し成績も上がったし、こんなに早く引退しなくてもよかったのではないかと思われる(そう簡単に転倒する選手はいないので)。

そういえば誰だったかオートレース中継によく出てくるゲストが(”ラブレター・フロム・カナダ“平尾昌晃だったかもしれない)が片平のことを「かたしらくん」、広木のことを「しろきくん」とよく言っていたことを思い出す(「しさかどくん」という選手もいる)。私の古きよきオートレース時代の選手が次々と去ってしまうのは非常に寂しい。心から引退を惜しむものである。

[Oct 29, 2007]