068 自分の仕事に最低限の知識もない経営者がいる不思議 [Jul 8, 2019]

先週末の7payの不正事件。セブンアンドアイは被害者で悪いのは不正アクセスした連中だというのは明らかなのだが、経営者のお間抜け記者会見で、セブンアンドアイのセキュリティがザルだからということになってしまった。当り前である。

組織は万一の場合を考えて、きちんとしたトップなり番頭を置かなければならない。何も起こらなければコネだろうがイエスマンだろうが好きにすればいいのだが、一度トラブルが起こった際にそういう連中では対応できない。傷口を広げた上、組織の存続を危うくすることになりかねないからである。

しかしながら、きちんとした対応ができる人物は得てして上に受けが良くない。だから途中で足を引っ張られて不本意な待遇に甘んじなければならないことが多い。代わりに出世するのがコネかイエスマンである。

私がかつていた職場がまさにそうだった。自分がいままさにしている仕事に十分な知識がなければ、どこをチェックしなければならないのか、もしもの場合どう対応したらいいか分かるはずがない。そういうことでは取引先にも下請け先にも示しがつかないと思うのだが、誰かが言うように「上がバカだと下もバカになる」のである。

セブンアンドアイの決済部門子会社の社長が、「2段階認証???」となった映像は各局のニュース番組で繰り返し放映され、おそらくはネット経由で末永く流されることになるだろう。このダメージは限りなく大きいはずなのだが、記者会見した子会社社長はもちろん、セブンアンドアイの経営者はその程度だということである。

そもそもネット決済の不正について記者会見しようというのに2段階認証で絶句してしまうというのは、トップも番頭もお間抜けで、なおかつ担当者は想定問答集すら作っていないということである。それでも大企業の経営者が務まるのだから、普段の経営でもどれだけ見当違いのことをしているか分かるくらいである。

経営者なり番頭に求められるのは、うまくいっている時にどうやってその時流に乗るかではなくて、うまくいかない場合にどうやって被害を最小限にとどめるかということである。うまくいっている時の対応は誰でもできるが、うまくいかない時の対応は誰にでもできるものではない。

今から三十数年前、流通革命の最先端として注目されていたのはダイエー、イトーヨーカドーとそごうであった。その中で、ダイエーとそごうは野放図な多店舗展開を図った結果、バブル崩壊とともに破綻して当時の経営者は退陣を余儀なくされた。ヨーカドーだけが、セブンイレブンに経営資源を集中することで今日の地位を築いたのである。(ダイエーもローソンを持っていたが、本体の赤字が大きすぎた。現在、ローソンの親会社は三菱商事。)

とはいえ、コンビニ業界の競争は熾烈である。セブンイレブンにはブランドの強みがあるといっても、商品の魅力ではファミマやミニストップに追い上げられている。そして、そもそも日本の人口が減少に転じているのだから、マーケット自体これから縮小していくことは明らかである。

そうした中で、ネット決済のセキュリティに不安があり、なおかつ経営者がそのことを分かっていないということが満天下に明らかとなったことは、あと数十年経ったときに「あれがセブン凋落のきっかけだった」ということになる可能性がかなり大きいのではないかと思う。

私自身もセブン銀行を使っているのだが、あれを見たらセブン銀行は大丈夫かと心配せざるを得ないし、nanacoに残高を置いておくのは最低限にしようと思う。こういうことが積み重なってセブンイレブンの売上に響いてくるのである。

私が就職した頃よく言われたことが、「かつては鉄鋼業が花形といわれていた。それが数十年経って斜陽産業になってしまったのだから、いま現在ではなく長期的な見通しをもって就職先を選ぶように」ということであった。

実際、当時もっとも人気があったのは証券会社であり金融機関であったのだが、その後バブル崩壊時には山一証券や拓銀、長銀、日債銀などが破綻した。今日でも、斜陽産業とまで言わないにしても時代の最先端でないことは明らかだ。

以前は駅前に軒を連ねていた銀行が、合併やら支店統廃合でどんどん店仕舞いして自動機だけになってしまったのはついこの間のことである。50m100m間隔で店を開いているコンビニが、同じ運命をたどらないとは限らない。

繰り返すけれども、そうならないよう細心の注意を払うのがトップなり番頭の仕事なのだが、それをしないでコネとかイエスマンを選ぶからこうなるのである。長期的なトレンドそのものは致し方ないとしても、衰退を可能な限り遅らせて、少しでも生き延びるのが経営だと思うのだが、そう思わない人が多いのは不思議である。

[Jul 8, 2019]


いまを去ること三十数年前、ダイエーとヨーカドーが流通革命の最先端企業としてもてはやされた。中内氏が表舞台から去って久しく、いままたヨーカドーの先行きも怪しい。