990 歩き遍路モデルプラン・教訓編

このたび、5年間10次にわたる区切り打ちにより、四国歩き遍路を結願することができた。

かつてマカオやラスベガスのカシノを回ったり、スポーツブックについて勉強した時と同様、お遍路歩きをするにあたってはWEBに上げられている経験談やモデルプランを参考にして計画を立てた。一方、参考書としては「四国遍路ひとり歩き同行二人」がほぼ唯一の歩き遍路向けルート案内図であり、当然これも参考とさせてもらった。

ところが、そうしたデータのほとんどが健脚向けに書かれているか、とにかく八十八を早く回ろうという趣旨で書かれているので、実際そのとおりに歩くと面食らうことがたいへん多い。面食らうだけならいいが、納経の時刻は午後5時までと決まっているから、それに間に合うために休みもろくに取れないというケースが結構あった。

だから教訓の最初にあげたいことは、スケジュールは自分で考えるということである。

スタンプラリーではないのだから、早く回るというのはお遍路の趣旨に基本的にそぐわない。せっかくお参りしても、本堂・大師堂・納経所を回って終わりというのでは寂しい。歩いている途中にも、周辺案内があり休憩所がある。有名でなくても、気になるお社やお堂を見かけることも多い。

そうした場所で余裕をもって時間を過ごすためには、歩行速度は4.5km/hとか1つの札所に20分とか25分では、とてもじゃないけど足りないのである。もちろん、境内案内図を調べておよその様子は下調べできるかもしれないが、実際に行ってみないとお寺との相性までは予測できないのである。

私は、毘沙門天や聖天、十王信仰関連に興味をもったので、札所でもそれらのお堂に気をつけてお参りした。ベンチがあって座ると、なぜか周囲の空気が自分の波長と一体化して、しばらく動けなくなってしまうこともあった。自分で時間制限をかけていたら、そういう経験ができないのである。

もちろん、境内がこじんまりして20分もかければお参りが終わってしまうというお寺もある。ゆっくりしたくても、バス遍路の団体と鉢合わせて、大声の読経や観光案内に興ざめしてしまうこともある。だから一律何分間とは決められないけれども、個人的に平均30分は確保すればよかったと思っている。

ただ、首都圏から四国に遠征する場合、宿泊代その他でできるだけ日程を切り詰めたいだろうし、事前に宿を押さえることが多いからそこまで歩かなければならないということもある。それでも、他人の作ったモデルプランによらず自分で考えることで、リスクや心配事をより少なくできるのではないかと考えるのである。

あとでもう一度触れるが、スケジュール作成の基本として、朝の行動開始は午前8時・その日最後の札所には午後4時までに到着をベースに計画を立てればストレスが少ないと思う。そして、札所の滞在時間は基本的に30分とすれば、それぞれのお寺の雰囲気を落ち着いて感じることができるのではないだろうか。

WEBには1日当たり25kmとか30kmとか書いてあるけれども、その日回る札所がいくつかで当然歩く距離は違ってくる。1日の行動時間を8時間として、札所3つで1時間半、4つ回れば2時間必要である。となると、4km/hで目いっぱい歩いたとしても24kmが限度、休み時間を入れれば20kmがせいぜいということになる。

もちろん、お寺で過ごすよりも道中の様子を味わいたいという人はそれでいいだろうし、一概に1札所30分というつもりはない。ただ、少なくとも他人の歩いたスケジュールを参考とするよりも、せっかく遍路歩きをするのなら自分で計画を立てた方がずっといいと思う。


本堂・大師堂の他にも、気になるお堂は数多くある。(写真は善通寺閻魔堂)

 

教訓の2点目は遍路地図、詳しく言うと「四国遍路ひとり歩き同行二人」地図編をどう使うかということである。

結論から言うと、参考とするのはいいがあまり頼らない方がいい。その最大の理由は、推奨ルートのとおりに行くと迷わされるおそれが多分にあるということ。もう一つが、距離表示に不正確なところが見受けられることである。

遍路地図の推奨は赤線ないし赤点線で示されており、そのルートで歩いた場合の距離が書いてある。しかし、電柱に貼ってある矢印や案内シールの示すルートとしばしば違うし、目印となる建物の位置が実際と違ったりする。

そうでなくても、遍路地図の方向表示はたいへん分かりにくい。東西南北が地図ごとに違う上に、同じページ内でも方位が違うこともある。まして他の団体(四国のみちなど)が案内しているルートと同じであるはずがない。そうやって迷ったことは、4回や5回ではすまない。

だから私が推奨するのは、曲がり角や残り距離を比較的正確に表示している車道を中心に使うということである。

確かに、かつて真念「道指南」が通った古い遍路道を歩きたい場所はある。焼山寺道や岩屋寺の八丁坂などは、遍路道も札所の一部であるといえるだろう。しかし、かつての遍路道だからといって、民家の勝手口や工場脇の側道をわざわざ通る必要があるのだろうか。

江戸時代と同じルートというのならトンネルは一つも使えないし、昔の峠道は整備されているとは限らない。真念が生きていれば、わざわざ危ない道を通るより安全な国道・地方主要道を歩いたのではないかと思う。

もちろん、国道・主要道の中には交通量が多いところもあって騒がしいし、ひっきりなしに車が通って雨が降ればしぶきをかけられる。だから並行して通っている側道を歩く方が気持ちいいことも多いけれど、基本は国道・主要道で計画して、時間と体力に余裕があれば脇道を通るというのがいいのではないだろうか。

遍路地図に載っている距離で札所間の移動を計画すると、予想外に時間がかかるということがたびたびある。むしろ、計画は車道経由の距離で立てて(ほとんどの場合遍路地図の表示より長い)、それより短縮できれば儲けもの、というつもりでいた方がストレスが少ない。

車道経由の距離は道路に大きく看板があるし、Google mapを使えば事前に調べることが可能である。遍路地図に書いてある遍路道の分岐を探してうろうろするよりも、初めから車道を歩くつもりでいた方がストレスも少ない。

そして、車道で行けば坂道が少ないという利点もある。遍路地図推奨ルートで行くと、地図上では同じ標高で歩いているはずなのに、結構な頻度でアップダウンがあって、距離の割に時間がかかるということがある。国道であればカーブや傾斜が小さいので、たとえ距離は長くなっても所要時間は変わらないことが多いのである。


歩き遍路のためのほとんど唯一のルート案内図である「四国遍路ひとり歩き同行二人」。参考となる点も数多くある一方で、これを頼ると痛い目に遭うことも少なくないのが現実。

 

歩き遍路の教訓3つ目は、健康管理と食事に関してである。

私のように区切り打ちであっても、何日間ぶっ通しで歩くとなると体調管理が非常に大切である。まして通し打ちともなれば言うまでもない。緊急事態になればタクシーを呼んで宿まで送ってもらうということは可能だが、駅伝であればタスキが渡らないのと同じことなので、できればそういうことは避けたい。

そうした観点から、最初にあげた午前8時行動開始午後4時最後の札所という原則で行動することで、リスクを小さくすることができると思う。

遍路宿の多くは朝食を早い時間から用意してくれるし、ホテルであれば朝食を自分で用意してもっと早く出ることもできる。だから、前日に何かのアクシデントで計画通り歩けなかったとしても、1~2時間程度であれば翌日早出することで挽回可能だし、逆にそれくらいが挽回できる限度ということである。

食事についてはちょっと勘違いしていたことがあって、十分に補給しないとシャリバテしてしまうのではないかと思い込んでいた。もちろん、山道を歩くようなケースではそうなのだが、歩き遍路の大部分は平地の舗装道路歩きである。体が重くなれば、逆に疲れるのが早いということになる。

私の場合、遍路歩きをして自宅に戻り体重を測ってみると、出発前より3kgとか5kg増えていることが多かった。それは、歩いている最中に手足がむくんでくることでも見当はついていたのだが、食べてスタミナをつけようというのはよしあしである。

WEBにはお昼をきちんと食べましょうと書いてあるけれども、朝晩どんぶり飯で昼もしっかり食べ、移動中はスポーツドリンクで栄養補給をしていたのでは、オーバーカロリーの懸念がぬぐえない。

実際、朝から10km15km歩いていると昼ご飯はそれほどおいしくないし、私自身はエネルギーゼリーやクーリッシュで補給して終わりというケースが多かった。昼食のおにぎりをお接待してくれる宿も多い。だから、山の中を長時間歩くといった特別なケースを除き、あまり昼食に神経を使う必要はないと思われる。

朝晩についても、いつも和食というのは体が重くなる原因となる。宿坊・民宿を続けるのではなく予定の中にホテル泊を入れて、朝晩の食事を調節した方がよさそうに思う。パン・サラダと乳製品主体の朝食とか、たんぱく質中心の夕食とか。歩いていてお腹がすかないのは、かえってよくないのではないだろうか。

もう一つ注意しなければならないのは水分補給である。汗で体内からミネラル分が流出するので、水よりもスポーツドリンクがいいとよく言われる。私も当初は、水とスポーツドリンクを500mlずつ用意して補給していた。

しかし、スポーツドリンクには多くの糖分が含まれている。飲んでいて、あまり体にいいように思えなかったし、体が求めているとも感じなかったので、最後の方はミネラルウォーターだけにした。それで不具合があるようにも思えなかった(他の要因で体調をくずしてしまったが)。

あと、歩いていて切実に感じたのは、同じ筋肉ばかり連日使うために、体がアンバランスになることである。上にあげたむくみもそうだし、節々の痛みも出る。できれば、普段のように筋トレやプールを交えた方がよさそうに思うけれども、旅先だとなかなかそういう訳にはいかない。

千日回峰行ではそんなことを言ってはいられないだろうが、都市部に入ってきたら一息入れて、ジムワークをする日を作るのが体調維持にはよさそうだ。日程に調整が利けば、雨の日に無理して歩くより休養してジムで体を動かす方が有効だと思うので、今後の課題として考えてみたい。

[Nov 11, 2019]


お遍路歩きではホテル泊を予定に入れて、和食ばかり続けずに食事の内容を調整したい。(写真は高知・大月町のホテルベルリーフ朝食)