106 藤井七段、最年少タイトル挑戦ならず ~第69期王将戦リーグ [Nov 19, 2019]

第69期王将戦挑戦者決定リーグ最終日(2019/11/19)
広瀬章人竜王(5勝1敗) O - X 藤井聡太七段(4勝2敗)

昨日まで行われていた王将戦挑戦者決定リーグで、広瀬章人竜王が藤井聡太七段を破って5勝1敗でトップとなり、挑戦者となった。年明けから渡辺明王将との七番勝負に臨むことになる。藤井七段は屋敷九段の持つ最年少タイトル挑戦記録の更新が期待されたが、惜しくも敗れた。

最年少とかそういう記録にはあまり意味がないし興味もないが、特に挑戦者では尚更である。藤井七段はすでに叡王戦を予選落ちしているので最年少挑戦者の記録更新はなくなったが、まだ最年少タイトル獲得のチャンスはある。引き続き精進してほしいと思う。

さて、今回の広瀬戦、わが家のAIでは終始先手がリードしていて、解説陣の説明しているような手順で一方的に決まる展開ではなかった。2四歩や4一銀が入れば鉄壁に見える後手陣の矢倉もかなり危ないという評価で、300点とか500点先手がリードという展開であった。

実際そういう展開となり、終盤では先手勝勢という場面もあった。ただ気になったのは先手が最善手を指し続けないと逆に後手の勝ちとなる変化があったことである。

藤井七段の最近の傾向で、読みの速さに自信を持っているからか持ち時間を無造作に使い、秒読み、あるいは1分将棋にしてしまうところがある。今回も、勝ちは遠のくけれども自陣に手を入れておけば安全だった場面もあったのに、1分将棋で読み切れなかった。

ただ、まだ17歳であり、それもこれも経験である。前回のタイトル挑戦チャンスは王座戦の準決勝で敗れ、今回は勝てば挑戦という一局で敗れた。おそらく本人もどこか見落としがあって逆転負けしたことは分かっているだろうから、これからは大一番でこういう負け方をしないよう、努力すればいいだけである。

さて、藤井七段は負けてしまったが、4勝2敗の成績は羽生九段と同率3位でリーグ残留である。今回の挑戦者決定リーグで藤井七段以外の6人は、全員A級でタイトル保持者か獲得経験者であり、この成績はたいしたものなのである。

今回リーグ戦の2敗は広瀬竜王と豊島名人で、いずれも将棋界最高峰といっていい強豪である。そう簡単に突破されてほしくない壁であったことも確かなので、この結果はかえってよかったような気がする。

その藤井七段、今回のベスト一局をあげれば4勝目をあげた久保九段戦である。久保九段といえば振り飛車のスペシャリスト、さばきのアーティストとして知られるが、その久保九段にほとんどさばかせなかった。

下図の局面では、先手の藤井九段が交換した桂、駒得した香を要所に打ち、陣形の差は歴然としている。馬の存在も大きく、久保九段は角・桂を打つ場所がない。久保九段がこういう負け方をするのはあまり見たことがない。

さて、王将というタイトルは、いまでこそ餃子の王将のネーミングライツのようになってしまったが、もともと将棋界では名人に次いで古いタイトルである。升田が王将戦七番勝負で時の木村名人に4勝1敗となり、第6局を香落ちで指すという場面で起こったのが陣屋事件である。大山・升田全盛期には、名人・王将・十段しかタイトルがなかった。

われわれの世代には、将棋の王将、囲碁の本因坊は特別のタイトルという印象があるが、順位戦をめぐる朝日・毎日の争いの結果、こういうことになってしまった。当時の朝日新聞の文化部長が契約金をケチらなければ、今でも順位戦は朝日、王将戦は毎日だったはずである(究極のメニューにカネがかかった訳でもあるまいにw)。

王将タイトル保持者の渡辺王将は現在絶好調で、A級順位戦も全勝、今年度の勝率は全棋士中トップである。勝率トップは予選で勝ちまくる若手棋士が占めることの多いポジションで、相手も一流ばかりのA級棋士が8割以上の勝率というのはすごい。ちなみに、4月以降負けたのは豊島名人相手の4敗のみである。

勝った広瀬竜王は、初の王将挑戦。並行して行われている棋王戦でもベスト4に残っていて、こちらも挑戦者になると渡辺三冠と冬の十二番勝負となる。夏は豊島・木村の十番勝負で盛り上がったので、冬はこの二人が盛り上げてほしいものである。

[Nov 20, 2019]


挑戦者決定リーグで4勝目を挙げ、挑戦まであと1勝とした対久保九段戦。交換した桂を7六に打ち、陣形に大差がついている。最近の藤井七段は中盤でリードを奪うケースが多い。