108 本田四段、タイトル戦初出場で挑戦権獲得の快挙(第45期棋王戦) [Dec 27, 2019]

第45期棋王戦挑戦者決定二番勝負第2局(2019/12/27)(2019/12/27)
本田奎四段 O - X 佐々木大地五段

棋王戦は妙なトーナメントである。本戦トーナメントに1回戦スタート、2回戦スタート、3回戦スタートの組があり、条件が異なる。竜王戦や名人戦(挑戦者決定戦)のようなプレイオフ形式であればともかく、それ以外のトーナメントでは例がない。

私見では、本戦トーナメントは勝ち上がり条件を均等にするのがフェアであり、出場者数の関係でそれが難しい場合でも1回戦差が限度だろう。もちろん、予選で差があるのは仕方がないが、本戦で2回Byeがあるというのはどうなのかと思う。

こうしたいびつなトーナメントとなっている要因は、棋王戦の本戦シードの条件にある。シードされるのが、前期ベスト4、タイトル保持者、永世称号者とB級1組以上なのである。これに予選枠8を加えると確実に30を超えるので、前期ベスト4が3回戦シードというのは本当は無理なのである。

まあ、それは運営者と日本将棋連盟の考えることだから仕方がない。ともかくも、前期ベスト4が圧倒的に有利なトーナメントであり、しかもベスト4に残ると敗者復活戦がある。だから棋王戦トーナメントは、ベスト4の攻防を中心にみると流れをつかみやすい。

かつては羽生・佐藤康・森内・郷田といった面々が常にベスト4に残っていたが、最近は若手の躍進が目覚ましく、そうした厳しい勝ち上がり条件にもかかわらずベスト4に残っている。

昨年(第44期)は、ベスト4に広瀬竜王、佐藤天彦名人(当時)、三浦九段と黒沢怜生五段が残った。このうち、広瀬竜王を除く3名は一昨年の第43期もベスト4であった。

そして、今年はどうなったかというと、広瀬竜王は2年連続でベスト4に残ったものの、残る3名は敗れた。代わってベスト4に残ったのが、丸山忠久九段、佐々木大地五段と本田奎四段である。

丸山九段は名人経験者であり、活躍しても全く不思議ではないのだが、昨年来急上昇している。昨年度のNHK杯でベスト4に残ったあたりから好調を維持しており、今期の順位戦B2では全勝でトップを走っている。山崎八段、三浦九段、佐藤康光九段を下してベスト4に進出した。

佐々木大地五段も毎年、対局数・勝数ランキングで上位に食い込んでいる。今年は春の王位戦でリーグ入りし木村九段(現王位)に土をつけたが、残念ながらプレイオフには一歩及ばなかった。今回の棋王戦は予選から勝ち上がり、本戦では谷川九段、黒沢五段、羽生九段と連破してベスト4に進んだ。

本田奎四段は昨年度前期の三段リーグを勝ち抜いてデビューしたばかりの新鋭である。やはり予選を勝ち抜いて本戦に進み、行方八段、佐藤天彦九段、村山慈明七段に勝ってベスト4入りした。

勝者組からは本田奎四段が丸山九段、広瀬竜王を下してみごと挑戦者決定二番勝負に進出した。角換りで丸山九段、相掛りで広瀬竜王と、それぞれ相手の得意戦法で勝ち切った。

敗者組からは佐々木大地五段が勝ち上がった。勝者組準決勝で広瀬竜王に敗れて敗者復活戦に回り、丸山九段、広瀬八段を連破した。広瀬八段は竜王戦第5局の逆転負けから移動日1日での対局で、コンディション的に厳しかったかもしれない。

とはいえ、佐々木五段は各棋戦で上位争いに何度も食い込んでおり、次のタイトル戦初出場は藤井聡太か佐々木大地と前から思っていたので、挑戦者決定戦進出には驚かない。むしろ、いつまでも順位戦C2、竜王戦6組である方が不思議である。

挑戦者決定戦第1局は佐々木五段の勝利。巧妙な序盤戦術の前に本田四段はチャンスがつかめず、右銀が4段目まで上がってまた下がるというようなちぐはぐな戦い方に見えた。

第2局は佐々木五段の先手番。ここまでくると経験の差が物を言うかと思いきや、今回は本田四段が敵陣の角打ちから馬を作り、一気に攻め持ち時間を1時間残して圧勝した。

タイトル戦初出場で挑戦者は史上初。現在進行している王位戦、棋聖戦予選でも予選通過まであと一歩に迫っており、今回の挑戦が決してフロックではないことが分かる。そして、本田四段は三段リーグに一期しかいなかった藤井七段と対戦があり、その時勝っているのである。

タイトル戦初登場は昨年叡王戦の高見泰地、金井恒太以来。現時点で最もキャリアの浅いタイトル挑戦者は千田翔太現七段だったから、一気に5年以上若返ったことになる。渡辺棋王有利は動かしがたいものの、フレッシュな挑戦者登場は楽しみである。

[Dec 28, 2019]


挑戦者決定戦第2局。本田四段は後手番ながら得意の合掛りで速攻、佐々木五段に巻き返しのチャンスを与えず押し切った。馬を作ってからは優勢だったが、6一の香打ちが強烈。