113 コロナ影響も藤井七段が最年少タイトル挑戦へ [Jun 7,2020]

第91期棋聖戦・挑戦者決定戦(2020/06/04)
藤井聡太七段 O – X 永瀬拓矢二冠

コロナの影響により約2ヵ月間対局が進まなかった将棋界、ようやく非常事態宣言が解除されて動き出した。将棋界は新聞社の予算で動くので、1年間のスケジュールは固定である。つまり、伸びた分は収めなければならず、問題なのはスケジュールである。

名人戦と叡王戦の七番勝負が東西対決なので、対局者の移動が伴うため全く進めることができなかった。すでに挑戦者が決まっている時期の王位戦、棋聖戦も遅れており、次の竜王戦まで影響が出ている。

特に、昨今の将棋界においては、豊島竜王名人、渡辺三冠、永瀬二冠、藤井七段の四強が各棋戦で勝ち進んでいることから、手合い係は頭の痛いことであったろう。そうした中、再開早々真っ先に組まれたのが、棋聖戦の準決勝・決勝であった。

最初に聞いたとき、遅れている名人戦・叡王戦を先に組むのが筋で、これは藤井七段のタイトル挑戦で商売をしたい産経新聞の横車かと思った。何しろ、一緒にマージャンした検事長を文春に売った新聞社である。

今回の辞表提出で検事長は退職金を800万円減らしたというから、これまでのマージャンの勝ち分(どうせ接待だから勝ったに決まっている)を全部飛ばしただろうが、それはさておき産経新聞がもっとも疑わしい。

しかしよく考えると、そうではあるまいと思った。今回の日延べでもっとも影響を受けるのが2日制の名人戦に出る豊島と渡辺である。まず朝日・毎日と調整してこの2人の日程を決めるのが最優先であろう。

残った日程から永瀬・豊島の叡王戦と渡辺の棋聖戦をスケジュールしていくと、棋聖戦挑戦者決定戦は第1週にやるしかないということになったのではないか。あまり遅れて、永瀬の王座戦防衛戦まで絡んでくると収拾がつかない。

棋聖戦ベスト4に残ったのは、永瀬・山崎・佐藤天・藤井である。準決勝が東西対決だし、決勝もほぼ半分の確率でそうなる。だとすれば、関西勢は翌日ホテルに待機してもらって、準決勝・決勝を一度にやった方が移動リスクが少なくてすむ。

スケジュールがそういう状況なのに加えて、しばらく露出がなかった将棋界としても、藤井七段の最年少タイトル挑戦が成れば再開早々注目を集めることができる。という訳で、前代未聞の1週間以内に準決勝から番勝負ということになったのではなかろうか。

さて、準決勝2戦も注目すべきところは多々あったのだが、とりあげるべきはやはり挑戦者決定戦だろう。振り駒の結果、永瀬二冠先手番。相掛りから2六に引いた飛車を8筋に展開し、飛車交換を誘った。

藤井七段も交換に応じ、中盤抜きでいきなり終盤戦となった。永瀬二冠の攻勢でやや指しやすいというのが各解説者やAIの評価で、藤井七段の桂と銀を打っての逆襲もやや無理攻めにみえた。

ところが、永瀬二冠がここで1時間を超える大長考。下の盤面で、4八に金を重ねて打つのが手厚く、攻めのペースは落ちるものの守備力は万全。持ち時間が1時間17分対17分ということもあり、「もう一番やりましょう」の永瀬流のように思えた。

しかし、玉を6九に早逃げして評価値大逆転。解説者一同「ええーっ!!!」と絶句である。その後も迫る場面はあったものの、永瀬二冠が逆転負けとなったのである。

もともと永瀬二冠は、千日手上等長手数大歓迎という棋風である。鋭く技を決めるというよりも、自分から悪くしない守備型の棋士と理解していた。ところが、この一戦は序盤の飛車交換もそうだが、かなりリスクの高い戦いを挑んだのである。

一気に攻めきれればよかったものの、終盤大事なところでギアチェンジに失敗したように見える。今回、先手番での負けというのも大きく、再び藤井戦が想定される王位戦は叡王戦との重複日程でもあるので、もし当たっても厳しい戦いとなりそうだ。

とはいえ、藤井七段相手にここまで白熱した戦いとなったのは、永瀬二冠だからともいえそうである。準決勝の佐藤天vs藤井戦が、「手合い違い」とも評すべき一方的な展開だったのと比較すると、さすが四強の一角である。

藤井七段はじめてのタイトル戦は、明日6月8日から、渡辺棋聖との五番勝負となる。渡辺棋聖は名人戦との重複日程、藤井七段も王位戦、竜王戦挑戦者争いと並行しての戦いとなる。どのような戦いになるのか、興味は尽きない。

[Jun 7, 2020]


挑戦者決定戦は、大駒交換から永瀬三冠のペースで進んだが、午後5時過ぎに1時間超の大長考で指した6九玉が変調。2七に飛車を打たれて逆転した。その後も押し引きあったが藤井七段が最年少タイトル挑戦へ。