030 総会屋と社員株主 [Jul 16, 2020]

先月、株主総会のお知らせを見ていたら、時節柄仕方ないとはいえ、昔なら考えられない記載があった。

いわく、「株主様におかれましては、極力、書面またはインターネット等により事前に議決権を行使いただき、株主総会への当日のご来場をお控えいただくよう強くお願い申し上げます。」

昔だって、会社側はすでに過半数の委任状を事前に確保しているのだから、株主総会など開きたくないのが本音である。しかし、商法の定めるところ株主総会は開催が必須であるので、仕方なく開いていたのである。

いまの人達は、100万株の株主は1000株の株主の1000倍の発言権があるのは当然と思っているし、それが国会にまで適用されているのはあまりよくないことだが、昔は違った。

株主総会に出席している以上、一人は一人。1000株しか持っていなくても経営方針に意見が言えて当然だし、疑問があれば質問して回答を求めることができる。それが嫌なら株式公開するなというのが原則であった。そこに、総会屋と呼ばれる人達の突け入る隙があったのである。

総会屋と呼ばれる人達は、さまざまのルートから会社側の秘事を入手し、それを株主総会で爆弾発言することで経営側を威圧し、自分達に有利な取り扱いを求めるのを常としていた。

だから、上場している株式会社は警察OBや検察OBなどその方面に顔の利く面々を普段から総務部に配属しておき、総会が始まる前に話をつけておくのが当たり前であった。

しかし、総会屋にも大小あって、すべての総会屋と事前に接触できるとは限らない。上場企業の株主総会を妨害して名前をあげようとする連中だっていないとは限らない。

そういう時のために、若手職員が株主総会の多くの席を始まる前から占拠しておき、危ない連中が役員に近づかないよう身をもって盾になるのであった。

当時は若かったのでそういうものだと思っていたし、その間だけは通常勤務から解放されるのでありがたいとすら感じていたけれども、よく考えると連中だって直接の暴力に訴える訳ではないし、質問だろうと動議だろうと規則に則って処理すればいいだけのことである。

それを、受付前から職員株主だけ会場に入れて、経営陣に近い席を占拠させておくのだから、肝っ玉の小さいことだし、そもそも株主間の公平に反している。まあ、職員の多くは株主でもあるので、いること自体が問題ではないのだが。

時は移り、現代では株主総会に出席しないよう強く推奨しても、うるさく言う人達はいないようである。もともと株主総会などというものは有名無実であると言えばその通りなのだが、今は昔としか言いようがない。

[Jul 16, 2020]


株主総会の出席者に配られる参加票。受付で議決権行使書と引き換え、総会が終わって返すとお土産をもらえる仕組みになっていた。(社員株主はもらえない)