026 小熊英二・姜尚中「在日一世の記憶」 [Aug 4, 2020]

韓国のどこかの街で、慰安婦像に土下座する安倍首相(?)像が展示され、官房長官が「外交儀礼に反する」とコメントするなどニュースになっている。だからという訳ではないが、今日はこの本について。

コロナによる公共図書館の休業が明けて、借りてきたのはこの本である。集英社新書はどこの図書館でも置いてあるが、この本は普通の本の3倍ほど厚い。内容は、在日一世52人へのインタビューである。

民族問題にも差別問題にも詳しい訳ではないが、宮本常一以来昔の人の体験談を読むのが面白く思えるようになったのと、編者の一人、東大の姜(カン)先生が、内田樹先生のサイトでよく見る名前だったので借りてみたのである。

言葉の意味として「在日一世」というとかなり広くなるが、ここで意味しているのは日韓併合時代に朝鮮半島から日本に移住した人達のことである。つまり、1920年から40年にかけて日本に来たということで、取材当時(2000年頃)、ほとんどの人は80代以上である。

それぞれの体験談を読むと、予想していたより政治的な発言は多くない。それよりも、とにかく貧しくて、ツテを頼って半島から渡ってきて苦労したという経験談が多いように思った。食べるものがないので、繭から糸を取った後の蚕を食べたという話など、身につまされる。

もちろん、強制連行や強制労働で望まないのに日本に連れてこられたという人達の話もある。申し訳ないことである。だが、おそらくそうしたことをしたのは軍隊や警察、大企業本体ではなく、それらの名を騙った、虎の威を借りた連中である可能性が極めて高いと思う。

だから責任がないとはいえない。そういう連中に好き放題させて、朝鮮半島の多くの人々に迷惑をかけてきた責任は、知っていて見過ごしてきた軍部・警察・大企業にあることは間違いないからである。

ただ、軍部・警察・大企業は看板を背負っているのでそれほど乱暴なことはできないし、彼らにも理想がある。そんなものは関係なく、目先のカネだけのために好き放題やりたい放題するのは、そういう連中なのである。

そのことは、この本に載っている経験談からも推察できるし、自分自身の経験もそれを裏付けている。というのは、私自身、戦争中に「満州ゴロ」と呼ばれた連中の末裔と仕事上の付き合いが長く続いたからである。

連中が重視するのは目先のカネだけで、長期的な視野などまったくない。今、ここで、自分が儲けることがすべてというネコ並みの視野しかない。筋道とか道理という観点で考えない。徒党を組むのが大好きで、上位者には絶対服従である。

戦後70年経過してそういう遺伝子が残っているのだから、当時どういうことをしたのか想像するのは難しくない。嘆かわしいことである。ただ、そういう連中の行く末は神にお任せする他はない。

慰安婦問題はじめ、韓国と日本の主張の隔たりは埋まらないが、実際にやったのが軍そのものかどうかは問題ではないと思う。強制連行や強制労働もしかり。日本は、けしからんと言われればすみませんと言い続ける他ないのである。

ただ一つできることがあるとすれば、これから先そういうことをするような連中を野放しにしないよう、自分の目の届く範囲でNOの声をあげることだけではないだろうか。

[Aug 4, 2020]


コロナ休みが明けて、ようやく図書館で本が借りられるようになりました。