095 赤薙山 [Aug 3, 2020]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

2020年は7月いっぱい梅雨が続き、8月に入ってようやく晴れた。

晴れたらいっぺんに暑くなるのは困ったものだし、コロナ第二派も確実に近づいている(というより、すでに来ているかもしれない)。再び自粛要請や非常事態となる前に、行けるうちに山に行くことにした。

候補としたのは、おととし撤退した赤薙山である。暑いとはいえ標高1600mの霧降高原は30℃にはならないはずだし、前回はほとんど登山口までしか行っていない。

前回は東武電車を使ったが、いまの時期登山支度で電車に乗るのは気が進まないし、行動に自由も利かない。今回は車を使うことにした。混まないうちに着きたいので、1時半起床、午前3時前に出発ということになった。まだ暗く、寒いのでフロントガラスが曇る。

往きは安全策で柏から高速に乗る。東の空がぼんやり明るくなる中、東北道を走る。もう30年以上前、家族を連れて毎年のように北海道までドライブ旅行をしたことを思い出した。

青森から函館へのフェリーで寝るためには、夕方までに青森に着かなければならない。必然的に、朝早く家を出る必要がある。当時は、那須高原または安達太良サービスエリアで朝食をとることを目標に、朝3時とか4時に出発したものだった。

当時と比べて途中のインターチェンジやジャンクションが増え、景色は微妙に変わってはきているものの、遠くに見える山の形は当時もいまも変わらない。人口が半減する百年後も、おそらく変わらないだろう。

日光宇都宮道路を日光で出て、駅前を通り霧降高原道路に向かう。まだスキー場があった頃運転して来ているはずだが、あまり見覚えのない道である。登り勾配をずいぶん走って、駐車場のあるレストハウス前に着いた。午前6時前に到着。

赤薙山・女峰山にトレッキングする人は、レストハウス前でなく下の方の駐車場に止めることを推奨される。ほとんど離れていないし、24時間のトイレも用意されている。

それはそうと、支度をしている間も蜂だかアブだかのブンブン飛ぶ音がすぐ近くに迫ってきて、落ち着かないことこの上ない。車に入ると厄介なのでドアをいちいち閉めなければならない。虫よけスプレーは必須である。

虫よけスプレーに加えて、今回用意しなければならなかったのは「ヒルよけジョニー」であった。なにしろ、霧降高原キスゲ平園地のホームページに、「ヒルのご注意」が載っているのである。

丹沢や房総と同様、栃木にもヒルが増殖してしまったかと暗たんたる気持ちになったけれど、記事を読むと東照宮近くの滝のある近辺と並列で記載されており、稜線にはあまりいないような感触である。それでも、ジョニーを靴やスラックスに念入りに噴射した。

レストハウス前の景色は、前回とはまったく違ったものだった。何しろ日光駅前から霧降方面を見ると雲の中で、上では視界が20mほどしかなかったのである。

雲はあるものの今回はすばらしい展望で、小丸山まで登る天空回廊の全貌を一望のもとにとらえることができた。手前に見える丸山・小丸山の背後に、めざす赤薙山一帯のピークも見えた。おととしもこれくらい景色がよければ、無理して登ったかもしれない。

身支度が終わって、午前6時5分登頂開始。前回は9時半スタートだから、3時間半早いことになる。早出早着きは登山の基本。早起きして東北道を飛ばしてきた甲斐があった。


前回ここに来た時とは違い、天空回廊の全貌をみごとに見ることができた。


中間点にある東屋まではフック気味に登り、後半は小丸山まで一直線の登りとなることが、下から見ても分かる。


ずいぶん上に見えた丸山が近づく。後半戦では、この山のピークを下に見て登ることになる。

 

さて、今回の山は3月以来だから、まるまる4ヶ月間が空いたことになる。例年、夏場は足が遠のくのだけれど、4ヶ月以上ぶりというのはここしばらくなかったことである。

もちろん、コロナに伴う自粛が大きく響いている。山登り自体が3密になることはほとんどない(私の行く山では)と言っていいけれど、それでもまったく他人と会わないという訳ではない。当然、布マスクは持参した(奥さんに、一人の時はしなくてもいいんだからねと言われた)。

登りは苦しいのでしなかったのだけれど、早々にすれ違った人はちゃんとマスクをしていた(サンダル履きだったから、天空回廊を歩いてきたのだろう)。私も下りではちゃんと付けようと思って、実際に下りの天空回廊はマスク着用で下った。

おととしは視界がほとんどなかったけれど、登るにしたがって丸山が右前方に大きく見える。丸山に向かうハイキングコースもあるのだが、結構下って登り返すので、楽ちんのコースという訳ではなさそうだ。

さすがにしばらくぶりの山はきつくて、1000段目あたりで息が上がって、誰も来ないのを幸い階段に座り込んで休息。そんなふうにのんびり歩いて小丸山に着いたのは7時5分、まるまる1時間かかった。

前回はここから引き返したが、晴れた日の景色はすばらしい。低木と林の境目の尾根を登る先には、目指す赤薙山が見える。1/25000図によると、見えているのは奥社のある2203ピークで、その前に赤薙山があるのかもしれない。いずれにしても、ここからが初見の道になる。

小丸山は独標点ピークであるが、赤薙山へは下り坂なしでそのまま登る。木々のない道に見えたのだが、くるぶしのあたりまでササが伸びている。朝露に濡れるのと、ハチの巣やヒルに当たらないか不安な道である。

それと、このあたりからトンボをはじめとした虫や、ハチだかアブだかの羽音がひっきりなしに聞こえてくるのに閉口した。トンボはうるさいだけだが、ハチに刺されたりしたら困る。羽音だけでなく、時々体にぶつかるのだ。

「うるさいっっっっ!!!」と大声を上げながら登る。息がきれて立ち止まると、すぐに寄って来る。木々の生えているところなら巣が近いので威嚇しているのだろうが、広いガレ場で岩しかないのにやってくるのである。

このあたりは踏み跡が錯綜していて、それらしき道筋がいくつもある。いずれも、ササが伸びた踏み跡が続くと、突然ガレ場になる。大雨が降ると川になるようにも見えない地形なので、かつての火山活動によるものだろう。

ササ、ガレ場、ササ、ガレ場と歩きにくい道を1時間ばかり登り続けると、ようやく「焼石金剛」の標識の立つ場所に着いた。標識はササ原に立っていたが、名前からするとガレ場に付けられたもののようだ。

コースマップによると、ここでようやく小丸山から赤薙山までの中間点なのであった。すでに8時15分。小丸山から1時間10分かかっている。半分の距離でこの時間では、コースタイムの1時間30分で赤薙山まで着くのはとてもじゃないが無理である。


小丸山。前回は霧の中で何も見えなかったが、赤薙山までの登りルートが確認できる。見えるピークは2203mの奥社ピークで、赤薙山は見えにくいがその前にある。


小丸山から上は、ササが覆う不安な道。蜂がひっきりなしに来て、羽音が神経に響く。加えて、ササの朝露が足元を湿らせて、ヒルの不安が募る。


ササと交替交替に、ガレ場が現れる。いずれにしても歩きにくい道だ。

 

焼石金剛を過ぎると、この日一番歩きやすい尾根に出る。左側がきつい斜面でササ、右側がやや緩い斜面の自然林である。緑と深緑のコントラストの中間を登る。傾斜はそこそこあるが、でこぼこしていないので歩きやすい。

このあたりまで来ると、赤薙山と2203ピークの違いがはっきりする。2203ピークはまだまだ先に深緑の山容を示しているが、赤薙山はその手前にある少し淡い緑のピークであろう。WEB等をみると頂上から展望がないと書かれているが、なるほど林の中にあるように見える。

歩きやすい尾根はほどなく林に入り、暗いうっそうとした木々の中の急登となる。コースマップにはコメツガ、ダケカンバと書かれているが、いずれにせよ森林限界近くに育つ自然林で、幹も枝も曲がりくねっている。

日がさえぎられて涼しい風が吹いてきたのはありがたかったが、いままでにも増してハチの羽音がうるさい。暗くて見えないのか、歩いている私にぶつかるウェイトが結構重い。たまたま止まったのを見たら、結構大きなハチであった。

形的に、スズメバチではないのだが(帰って調べたらミツバチの大きい奴のようだ)、ありがたくないことに違いはない。北アルプスだったか、行動食にミックスフルーツを食べていたらハチが寄ってきた。私の体から甘いものが匂うのだろうか。

立ち止まるとすかさず近づいて来るので、休むに休めない。休めないからますます息が上がって汗をかく。汗をかくからますます虫が寄ってくる。悪循環である。

そんなふうに急ぎ足で歩いていたところが、段差のきついところで左のヒザが急に痛くなった。少しだけ平らで明るくなったところで立ち止まる。まだ頂上まで大分ありそうだ。

ハチは来るしヒザは痛いし、ここまでで引き返すか、と覚悟した。GPSを見るとまだ頂上まで標高差100mある。焼石金剛からかなり登ってきたはずなのに、まだ100mもある。

思えば、1/25000図を見ると小丸山から赤薙山までそれほど距離がないように見えるので、標高差400mにしても1時間と少しで登れるだろうと思っていた。歩き足りなければ、2203ピークまで歩こうと思っていたくらいである。

ところが、小丸山から2時間近く、麓から3時間登っても、まだ赤薙山に着かない。2203ピークどころか、その後に続く3つほどのピークを登り下りして、女峰山に達して戻ってくる人だっているというのに、久々とはいえこのペースはなんとしたことだろう。

実際、帰りに歩きやすい尾根ですれ違った二人連れに、小丸山まで下りる途中に抜かれてしまっている。ただでさえ歩くのが遅いのに、下り途中で3度ほど滑って転んでしまった影響もあって、へっぴり腰になってしまったのである。

5分ほど休んでいると息も落ち着いてきて、この時だけはハチが飛んでこなかった。少し気を取り直して、もう少しだから、と自らを励まして登り続けた。どうやら、ハチのせいで小休止をちゃんと取れなかったのがよくなかったようだ。

休んでから頂上までは、15分くらいだった。岩をつかんで登るような場所があり、急斜面でロープが出てくるところもあったが、この時だけはハチが飛んでこなかったのは幸いした。9時15分、小丸山から2時間、麓から3時間以上かかって、ようやく赤薙山頂上に到着した。


焼石金剛と呼ばれる地点を過ぎると、南側が開けた尾根に出る。ここまで登ると、手前の赤薙山ピークがはっきり区別できる。


後方を振り返ると、丸山の頂上はかなり下になった。


くじけそうになりながら、何とか赤薙山に到着。山名標の手前に三角点がある。

 

赤薙山頂上には、小さな石の祠とたいそう立派な木の鳥居があり、山名標が掲げられている。山名標の周囲は少し平らになって三角点標石が置かれているが、木々に囲まれて展望はあまりない。

ただ、三角点があるのだから昔は展望が開けていたはずであり、いまも祠の後ろあたり枝越しに北西側を望める場所がある。

赤薙山から北西に、日光連山を構成するいくつかのピークが連なっており、主峰である女峰山まで続いている。赤薙山まで3時間かかった私の足では女峰山までさらに5時間かかるので一日で戻って来れないし、そんなに長くハチに追いかけられたら神経が参ってしまう。

景色だけでも撮っておこうと枝の間のよさそうなアングルを探していると、これまでずっと上の方にあった雲が下りてきて、女峰山の頂上あたりを隠してしまった。2203ピークまではまだ下りてきていないものの、それより上は雲の中である。

長く休憩するとまたハチが飛んでくるので、9時半に出発。頂上にいる間は誰も来なかったし、焼石金剛まですれ違ったのも2人組だけ。この日赤薙山からの展望を少しでも楽しめたのは、この3人だけだったということになる。

再び暗い林に入り、足元に気をつけながら下って行く。結構な段差の個所もあり、滑りやすい粘土質の赤土が湿っていて、派手に滑った靴の跡がいくつも残っていた。30分ほどで歩きやすい尾根に戻った。

この尾根にきて再び見通しが開けたが、雲はここまで下りてきていて、南側の斜面から霧が次々と登ってくるのが見える。あれほど開けていた視界がみるみる小さくなり、小雨までぱらついてきた。

焼石金剛まで、1時間以上かけて登ったところを40分で下りる。ここからは再びササで覆われた踏み跡とガレ場の連続で、どこを下りても下には着くのだろうが、3回ほど滑って手と服を汚す羽目になった。

天気が下り坂のせいなのか、あまり休まず歩いたせいなのか、下りでは登りほどハチも虫も寄ってこなかった。はるか下にあった丸山が目の高さに近づくと、小丸山のシカ除けゲートが見えてきた。あともう少しである。

小丸山まで1時間半ほどで下りた。正午には下山できたらいいと思っていたので、ここまで下りてようやくほっとする。小丸山には混むというほどではないものの結構な人が登って来ていた。展望台の上は満員だったので、下のベンチに腰を下ろす。

デニッシュとレモンジュースを用意してあったのだが、赤薙山で昼食休憩はとれなかった。ハチが寄ってくると思って控えたのである。ここのベンチでミックスフルーツを開けて、やっと甘いものを口にすることができた。

下りの天空回廊は途中の東屋で息を整えただけで、休憩なしの30分でレストハウスまで下りた。あたりはすでに霧におおわれていて、一昨年ほどではないものの視界はほとんどなくなってしまった。

早起きして東北道を飛ばしてきただけのことはあって、朝一番で最高の展望を楽しめたのが今回の収穫である。車に戻ってから、麓にある日帰り温泉「ほの香」に寄って汗を流した。

この日帰り温泉は「ユーロシティ」というホテルの付属施設でホテルはかなりお高いのだが、日帰り温泉は600円とリーズナブルである。浴槽はそれほど大きくないが、自家源泉のアルカリ性単純泉で40数度で湧出というから沸かさずそのまま使っているのだろう。

全身びしょぬれになるほど汗をかいた後だったので、お風呂に入ってたいへんさっぱりした。お風呂から出ると、外は本降りの雨だったのでびっくりした。

例によってゆば屋「あしたか」に寄り、経費節減のため一般道で帰った。最後はくじけて高速を使ってしまったが。

この日の経過
霧降高原レストハウス(1329) 6:05
7:05 小丸山(1601) 7:10
8:15 焼石金剛(1876) 8:20
9:15 赤薙山(2010) 9:30
10:10 焼石金剛(1876) 10:10
10:55 小丸山(1601) 11:05
11:35 霧降高原レストハウス(1329)
[GPS測定距離 5.2km]

[Sep 21, 2020]


ここまではすばらしくいい天気だったのに、登った途端に雲が多くなってきた。赤薙山の祠の後ろで景色が少しだけ開けているが、女峰山はすでに雲の中に入ってしまっていた。


帰り道では下からどんどん霧が上がってきた。さすが霧降高原である。下山時の景色は、前回とあまり変わらなかった。


下山後は日帰り温泉「ほの香」で汗を流す。お風呂を上がると本降りの雨になっていて驚いた。