613 ギャンブルの地獄の釜を垣間見る [Sep 22, 2020]

正直なところ、いまの段階でこの原稿を書いていいのかどうか半信半疑なのだけれど、気分的には少し落ち着いたので再び落ち込む前に書いておくことにする。大げさかもしれないが、ギャンブルの地獄の釜の中を垣間見たような気がするのである。

発端は、ネットマージャン「天鳳」である。7月になって、妙にツキのない負け方が増えてきた。よく調べると三段に昇格した時、つまり6月半ばからそういう調子だったことが分かる。

とにかくテンパイが遅い。こちらが一九字牌を整理しているうちにリーチがかかる。あっという間に追っかけリーチ、間の悪い時には私以外の三家すべてリーチである。

こうなると、すべてに通る牌などない。向こうはツモ切りなのに、なぜか私の捨てた牌で当たる。でなければ、すぐにツモられる。裏ドラは100%乗って、たいていハネ満、倍満。三倍満もあった。

なんとか手が整ってリーチをかけても、なかなか上がれない。三面待ちでカンチャンに負けるなど当り前である。何回かに1回ようやくツモっても、裏ドラなど絶対に付かない。

いろいろ試してみた。ツカない日はがまんしてプレイしないことにしたり、上級卓で相手が悪いのかもしれないと一般卓で戦ってみたりした。明カンや後ヅケも試してみた。もちろん、牌譜を見て、どこで負けたのかちゃんと復習している。

結論は、何も悪いことはしていない。ひたすら運が悪いだけである。なのに、1着率から3着率まで2割、4着率4割などという惨憺たる結果であった。

「こんなことは確率的にありえない」と思っていくらやっても、同じなのである。天鳳が悪いのかと思って他のネットマージャンも試してみた。そのゲームでは、16局連続ビリを取らなかったりした。でも、もう一度天鳳をやっても、なぜか同じことなのである。

私自身この歳になるまで、3競オート、カシノゲームをはじめさまざまなギャンブルを経験したけれども、こんなことは初めてである。7月を過ぎ、8月も復活せず、9月に入っても改善の兆しは見えない。たまたま1日よくても、続く6日間は全然ダメである。

7月末に二段に降格し、9月には初段に降格した。天鳳は月550円だが、他のゲームに数千円突っ込んでいる。ここで気が付いた。これが、多くの人がギャンブルで身を亡ぼす地獄の谷底、煮えたぎる釜の入り口なのではなかろうか。

これまで、確率的にありえないほどの負け方をしたことはなかった。しかし、バカラにせよ何にせよ、確率では考えられないことが起こるから破滅するのである。たかだか数千円で気づくことができたのは、間違いなく幸いなことであった。


オーラスの現状3位。親のリーチなので現物の一索を打つしかないが、上家がそれで待っている。技術云々ではなく、この牌をここでツモる時点で弱いということ。3ヵ月もこの状態が続くと、さすがにめげる。

 

私がマージャンに関して大きな勘違いをしていたのは、マージャンはディフェンスさえきちんとしていれば大負けすることはないと思っていたことであった。

捨て牌やその他の所作から当り牌を推理し、それを捨てないように回し打ちしながら自分も聴牌に持っていく。それがマージャンの醍醐味かと思っていた。だがこうなってみると、それは大きな勘違いだったのである。

誤解を恐れずに言えば、マージャンの勝ち負けは卓に座った瞬間に決まっている。弱いからといって常に負けるわけではないが、長くやっていれば必ず弱い奴が負ける。

そして、マージャンの強弱は推理力や判断力ではなくて、ひたすら「引き」が強いか弱いかではないだろうか。昔からそう思っていたけれど、ハイテクで牌譜を分析できるようになって改めてそう思う。

競馬に例えれば、血統の知識や馬場適性の分析、展開の推理がいくら的確にできても、馬券の勝ち負けはそうした要素では決まらない。勝つ奴は語呂合わせだって出目だって勝つ。マージャンもそれと同じではないだろうか。

「天鳳」のレビューを見ていて、運の偏りがひどすぎると口をきわめて酷評している人の記事を見たことがある。その人は相当強い(レイティング2000近い)のだが、2000を超えるかどうかというところで全く手が入らなくなった。操作しているとしか思えないというのである。

読んだ時は、そんな手間のかかることをするほど運営も暇ではないだろうと思っていたが、実際に自分が3ヵ月近くもそういう状態が続くと、確率的にはありえない、つまり何らかの操作が加わっていると思ったのは確かである。

リアルであれネットであれ、マージャンは楽しみのためにやっている。勝ったり負けたりして、ひと時楽しめればそれで十分である。

ところが、テンパイするのは他家だけ、裏ドラがのるのも他家だけ。配牌は一九字牌が流局ぎりぎりの8枚、ツモは全く伸びず、ドラを持てば他家が早上がりという状況が3ヵ月も続くと、平静ではいられない。ましてや、楽しむことなどできるはずもない。

もし、こうした偏りが操作(課金残り日数とか、そういったもの)でないとしたら、上級卓に常駐するプレイヤーは引きが強い連中ばかりで、その中に入って引きが弱い私が勝てるはずがないということしか考えられない。

件のコメント主も、レイティング1900程度までの相手に比べれば引きは強いのだが、レイティング2000と戦うと相対的に引きが弱くなる。それで、ここまで偏るのは何か操作しているのでは、と疑うことになったのではなかろうか。

話を元に戻すと、3ヶ月続いたひどい状況から回復したのは、初段に落ちて一般卓に常駐するようになってからである。何ヶ月ぶりかに3連続トップをとり、肩の力が抜けた。

何しろ6月中旬以降、4位は3回も4回も連続するけれども、トップは決して連続で取れないということが続いていた。おそらくそれは、引きの強い奴にはどうやっても敵わないということであり、そういう卓でないところで楽しむのが利口だということである。

マージャンは楽しむためにやっているのであり、ストレスをためるためにやるのではない。そして、私は数千円の課金で済んだけれど、あの気分なら桁違いの金額を突っ込んでやられてもおかしくなかった。

この歳で、ギャンブルの奥深い谷底、地獄の釜の入り口を見ることができたのは、ある意味収穫であった。

[Sep 22, 2020]