088 多チャンネル放送の予想と現実 [Oct 21, 2020]

ワイドショーやドラマばっかり見ていた家の奥さんが、コロナ以来YouTubeばかり見ている。ミヤネ屋とかよく知らない女優のくさい芝居を見るのは苦痛だが、ひたすら木を伐り家を建て、英語で話すガタイのいいおっさんは、一緒に見ていて疲れない。

上の説明のとおり、奥さんの最近のお気に入りは”My Self Reliance”である。あの映像には相当の手間と費用がかかっているけれども、日本発のYouTubeも悪くない。

「古民家ひとり暮らし」とか「ご飯が美味しいch」「テルさんチャンネル」、ヒロシとかtaimanもよく見る。山歩きや限界集落など、興味ある分野は尽きない。こうした映像を見ていると、もう地上波でも衛星でもなければ、CS、abemaの時代ですらないことを実感する。

50年くらい前のことを「半世紀前の話」シリーズに連載しているが、子供の頃は地上波VHFだけで、1・3・4・6・8・10しかチャンネルがなかった。なぜ自分の気に入る番組がないんだろうと素朴に思っていた。

小学生の頃にUHF放送が始まって、これで50チャンネルできると喜んでいたら、あれは郵政省の電波行政によるもので、千葉県では千葉テレビしか増えなかった。四半世紀前にCS放送ができた時は、今度こそ1000チャンネルと思ったのに、通販とアダルト番組が増えただけだった。

その意味では、社会人になって大阪に行った時、大阪有線がやっていた200チャンネルのBGM放送はすごく新鮮だった。役所の規制がなければこういうことができるのか、と思った。役所が免許を出してやっている限り、50チャンネルの枠があっても使うのは10以下にしかならない。

バブルが崩壊して、次に来たのは世知辛い世の中だった。放送局は増えたが広告費は削減され、結果として通販番組ばかりになった。でなければ、広告の入る視聴率が稼げる番組で、お笑い芸人とかジャニーズ、吉本・秋元関連ばかりになってしまった。

そんなものはつまらないに決まっているので、TV自体見なくなっていた。CSでもNFLを盛んに流していたのは一時期だけで、採算が取れないので次々と撤退し通販番組になっている。

数年前から、子供のなりたい職業にYouTuberが入ったり、YouTubeで高収入などという話が物珍し気に採り上げられた。さすがに、最近ではそんなことに驚く人はいなくなったけれど、考えてみれば全く不思議ではない。

つまり、メディアリテラシーのない年寄りを除いて、いまどき地上波TVなど誰も見ないのである。YouTubeで面白い番組や興味ある内容が流されていれば、みんなそれを見る。企業の広告費はそちらに流れるし、アイデアや才能もそちらに向かう。

YouTubeだからみんな自撮りだと思っていたら大間違いで、人気番組はちゃんとプロダクションが付いてきちんとした映像を撮っている。例えは悪いかもしれないが、田中陽希の自撮り映像とNHKスタッフの撮影した映像くらい違う。行ってQの現地ビデオなど比較にもならない。

昔は最新のヒット曲やかわいいアイドルはTVの歌番組で見るしかなかったが、いまではYouTubeのミュージックビデオとか、かわい子ちゃんが自主制作する番組である。昔の小学生がTV局に入りたいと思ったように、いまではYouTuberになりたいのである。

そして、長い間期待していた多チャンネル放送が、予想とは違った形ではあったけれど、予想をはるかに上回る規模で実現したことになる。UHFとか衛星放送とか、CSといった電波帯域割当てによるものではなく、ソフトウェアで実現したのである。

YouTubeにupされている動画は、全世界で数十万数百万、あるいはそれ以上の数になるはずである。そして、Googleのホストコンピュータの容量が許す限り、いつでも、どこでも視聴可能である。

とはいえ、新聞・雑誌のテレビ欄に代わる機能を提供するのはGoogleのAIで、動画全体は無限に近くあるとしても、候補にあがるチャンネルは限られる。

Amazon StickTVでGoogleのAIとなると、ほとんどGAFAの掌の上と言えなくもないが、日本の偏向マスコミよりはまだしも上であろう。

[Oct 8, 2020]


最近の家の奥さんのお気に入りは”My Self Reliance”。カナダの大自然の中で、ひたすら木を伐り家を建てる。個人的には、奥さんや娘はあまり出さずに、犬だけでいいと思う。