120 第68期王座戦、永瀬王座防衛で藤井二冠に先立ち九段へ [Oct 16, 2020]

第68期王座戦五番勝負(2020/9/3-10/14)
永瀬拓矢王座 O 3-2 X 久保利明九段

予選スタートながら挑戦者の本命とみられていた藤井聡太二冠が予選最終戦で大橋六段に敗れ、その大橋六段を破った久保九段が挑戦者に名乗りを上げた。

久保九段といえば振り飛車のスペシャリスト、さばきのアーティストとして名高い。かたや永瀬王座は千日手・持将棋大歓迎の泥沼流、粘っこさvs切れ味という対照的な両者の番勝負となった。

永瀬王座の最近の充実度は、渡辺・豊島・藤井とともに四強といわれるくらいで、B1ながら現役最強の一角であることは疑問の余地がない。懸念があるとすればスケジュールで、対局が立て込んで最近は2日おき3日おきに組まれている。

ここで相手が豊島とか藤井ということになると、準備期間の差がそのまま形勢に反映してしまうところであったが、久保九段は事前研究よりその盤面での感覚を重視するタイプなので、スケジュールが影響することはなかったようだ。

第1局永瀬、第2局久保とそれぞれ先手番が勝って、迎えた第3局が鍵となる一戦となった。

ともに決め手を与えず終盤の入口。コンピュータの形勢判断は50%。まったく五分というのではなく、お互いに最善手を指せば千日手という局面である(下図)。

永瀬王座としてはここしか拠点がないので、6二、7二を攻めるしかない。対する久保九段が持ち駒の金を使って受ければ、同金同金7三金打ちでまた金で受けて、いずれ同一局面に戻らざるを得ない。

後手番の久保九段としては千日手でもよかったような気がするが、ここをチャンスとみて持ち駒の金を温存して銀で受け、結果的に久保九段に難しい局面となってしまった。

最終第5局が久保先手で永瀬勝ちとなったように、先後逆転したからといって必ず有利になるとは限らない。それよりも、現局面で勝つ変化があると読めば打開して全く不思議はないのだが、相手が永瀬王座だと、千日手は相手の土俵という感覚があったように思えて仕方ない。

永瀬王座は初防衛に成功し、タイトル3期で九段に昇段した。八段もタイトル2期によるものだから、永瀬八段と呼ばれた時期は全くなかったことになる。

そして、タイトル初防衛では豊島竜王より先、九段昇段では藤井二冠より先と、ライバル棋士達にそれぞれ先んじることができた。あとは、全勝で先頭を走るB1順位戦を勝ちぬいて、A級昇級を果たせば名実ともに現役最強組の一角である。

王座戦はオールスター戦なので、タイトル保持者である藤井二冠は来期から予選を戦わず本戦から登場する。残り15人の中に、苦手とする豊島竜王、大橋六段がいるため簡単にはいかないだろうが、永瀬・藤井の番勝負という頂上決戦が期待される来期の王座戦である。

[Oct 16, 2020]


第68期王座戦第3局。この時点での評価値は50%でコンピュータの最善手は千日手だったが、後手番の久保九段が持ち駒の金を温存して打開に動く。結果的には、久保九段に難しい局面となった。