090 再び敗れた大阪都構想と維新の会の今後 [Nov 3, 2020]

11月1日に大阪都構想の賛否を問う住民投票が行われ、5年前と同様に僅差で反対票が賛成票を上回った。松井市長は任期満了をもって政界引退することを発表し、吉村知事は「3度目はありません」と表明した。

前回同様、東京における投票前の報道はほとんどなく、イギリスのEU離脱時の10分の1にもならなかったろう。ところが、反対多数が判明したとたん、トップニュースである。節操のない報道姿勢である。

反対多数の理由は、5年前に考察した時点とほとんど変わらないと思っている。「おもろいやないか」で橋下・維新に投票してきた層が、自分の懐に関係しそうだと思ったとたん反対に回ったということであろう。

5年前に否決された都構想が、なぜこのタイミングで再び住民投票になったのか。思うところを述べてみたい。

発端はおそらく、コロナで人気急上昇の吉村府知事である。維新の会のオーナー・橋下氏は、これが都構想実現の最後のチャンスとみて松井・吉村をせっついたのだろう。おそらく二人は、コロナ対応のさなか不要不急の住民投票などやりたくなかっただろうが、オーナーには逆らえない。

しかしながら、5年前の都構想とはその位置づけが大きく異なる。5年前の都構想は手段であり、行政改革の実績をあげることで国政へと進出することが最終目的であった。それが、橋下氏の遠大な計画の一部だったのである。ところが、今回の都構想は手段ではなく目的であった。

都構想で大阪市を消滅させることになれば、バブル期に国鉄・電電公社・専売公社を民営化したのに匹敵する一大事業となる。そうなると、松井・吉村には荷が重い。自分の出番が来ると橋下氏は思っていたに違いない。

どういう法律・条例を作り、どこの省庁にどういう省令を出させ、大阪府はどう組織替えして、特別区の組織や規則はどうするか、大阪市はどういう手順で整理するか。橋下氏はそういうことを考えるのが大好きなはずである。

あるいは、吉村知事の人気急上昇に対する警戒感もあったかもしれない。賛成多数になれば自分の出番、反対多数であれば吉村知事の力不足をアピールすることになる。どちらに転んでも自分にはマイナスにならない。

とはいえ、多くの人は今回の住民投票を橋下氏の差し金とみているので、吉村知事の人気が下がることにはならないだろう。むしろ、今回形だけにせよ公明党が賛成に回ったのは、吉村知事に貸しを作るためだったように思える。

(前回考察したように、府と市の二重行政は公明党にとってむしろ望ましいので、本気で賛成するはずがない。)

今回の住民投票結果を受けて間違いなく進むと思われるのは、橋下氏の求心力低下である。島田紳助がTV画面から退いて数年、橋下氏もそろそろ賞味期限が切れておかしくない。まだ若いから完全引退とはならないだろうが、かつてのように国政に進出してその先まであるかも、という存在ではなくなる。

松井市長がいなくなれば吉村知事が党の顔になるが、残念ながら吉村知事には橋下氏のようなビジョンがない。既存組織を生かしてやっていきましょうというのは、徳川幕府はそのままで明治になるようなもので、それは維新ではない。

振り返ってみると、維新の会というのは良くも悪くも橋下氏のビジョン、悪く言えば野望で作られた党であった。大阪都構想の敗北とともに、維新の会もこのままの形では残らないであろう。

[Nov 3, 2020]


住民投票で反対票が多数となり、政界引退を発表する松井市長と、「3度目はありません」と肩を落とす吉村知事。