121 主催者から外れたDwangoと叡王戦 [Nov 1, 2020]

第5期の七番勝負が第9局までもつれ込んだ上、第6期の予選がなかなか始まらなかった叡王戦。先週ようやく、日本将棋連盟から第6期の開催要項が発表された。

大方の予想通り、DWANGOが主催者から下りた。代わりに主催者となったのは不二家である。新会館がらみのヒューイックや大成建設は使ってしまったし、新聞社はもう無理ということで苦しい選択だったと思うけれど、旧世代の会社という印象がぬぐえないし、コロナの展開によっては来年はご勘弁ということになるかもしれない。

そもそも、DWANGOが叡王戦を企画したのは、人間代表vsコンピュータ代表で戦わせたいという意図だった。AIの予想以上の進展であっという間に勝負がついてしまったけれど、意義のある対決だったと思う。

問題は、叡王戦をタイトルとする時点でニコニコ動画の後退がすでに明らかだったことである。こんなに早く撤退するなら、銀河戦とかAbemaトーナメント並みにとどめておくべきだった。にもかかわらずDWANGO主催で見切り発車し、のみならず序列第3位のタイトルに格付けしてしまった。

棋士のほとんどは小中学生から将棋一筋であり、将棋が強いからといって経済事情や経営環境の判断に長けている訳ではない。将棋が強いから頭もいいだろうと思い込んでしまうけれども、大山・升田だって中原・米長だって経営者という器ではなかった。そんなことは、書いたものを読めば見当がつく。

タイトル戦は棋士の収入に直結するから、毎年きちんと開催されることが望ましい。今年はコロナの影響で対局できない日が続いたけれども、それは不可抗力であって、主催者の経営がどうなのかは予測できることである。

さて、継続されることになった叡王戦だが、いくつかの大きな変更が加えられている。まず、本戦出場者が24名から16名に減員されたこと、そして七番勝負が五番勝負になったことである。

持ち時間が予選1時間、本戦3時間、タイトル戦4時間と短縮されたこととともに、タイトル戦の序列としてはもっとも低い棋聖戦と同じである。棋聖戦の二次予選は持ち時間3時間だから、考えようによっては棋聖戦を下回る格式ということになる。

それを反映したものなのか、第6期の番勝負は、「第6期叡王決定五番勝負」と銘打たれている。これまでの叡王戦と連続したものではありませんよ、と言っているようである。予選開幕前にタイトル序列の変更が行われ、叡王戦は棋王戦と王将戦の間、6番目に格付けられた。

タイトルの序列は棋士の序列であり、上座・下座もそれにより決まる。現在は豊島竜王が叡王なので問題とならないが(竜王は序列1位)、何年か前のように八冠すべて別の棋士であったら、先週と今週で席次が違うところであった。

予選開始が遅れたことにより、予選の基準日も春のはずが10月6日に後ろ倒しされた。これで割りを食ったのは春にタイトル保持者だった木村九段で、予選から出場しなければならなくなった。その点を考慮したものか、本戦シードは昨年のベスト4だけで、藤井二冠も予選スタートとなっている。(豊島、永瀬、渡辺のタイトル保持者はベスト4以上で、関係するのは木村九段と藤井二冠だけ)

このように、中味をみると全く別物のタイトル戦となっており、叡王戦の特色だった変動持ち時間もなくなった。正直なところ、変動持ち時間にはほとんど意味がないので気にならないけれど、本来タイトル戦というものは、何回続いたからいいというものではない。どのようなタイトル戦なのかというDNAが残ることに意味があるのではなかろうか。

せっかく作ったタイトル戦を残したいという気持ちは分からないではないが、これまでの金額ではスポンサーがつかないから規模を縮小しましょう、持ち時間も短縮しましょう、それに合わせて序列も下げましょうというのは、本末転倒のような気がする。

かと言って、アベマだってそれほど安定している訳ではないし、クラウドファウンディングも一回二回はともかく、何十年も続くかどうか分からないし困ったものである。Googleが何とかしてくれたらいいのに。

[Nov 1, 2020]


ニコニコ動画が撤退して、第6期から不二家がスポンサーになりました。不二家叡王戦とはいわないのかな?(出典:日本将棋連盟HP)