091 アメリカ大統領選、バイデン氏大接戦を制す [Nov 8, 2020]

アメリカ大統領選挙は、二転三転の大接戦を民主党・バイデン候補が制してトランプ再選を阻止した。

一週間前のオッズは、トランプ2.7、バイデン1.4だった。投票日前にはバイデン氏の地滑り的勝利を予想していて、予定稿を5日にupする用意をしていた。ところが、日本時間4日に開票が進むとトランプ氏が激戦州で軒並み優勢となり、深夜に勝利宣言するに至って原稿を書き直した。

翌5日朝起きてみると、また様相が一変していた。トランプ氏が勝ったと主張していたウィスコンシン州とミシガン州が逆転、主要メディアが両州でバイデン当確を打っていた。ペンシルバニアとジョージアも6日に逆転した。

日本時間8日未明、ペンシルバニア、ネバダでバイデン氏が当確となり、主要メディアはバイデン勝利を報じた。トランプ大統領は郵便投票の不正を主張するけれども、「証拠がない主張」として、主要メディアから記者会見中継を打ち切られる始末である。

さて、今回の選挙で気になったのは、主要調査機関の世論調査でバイデン氏約5ポイントリードと報じられていたことである。にもかかわらずトランプ氏が勝ったとすれば、アメリカのシンクタンクは4年前と同じ間違いを繰り返したことになる。

4年前の本稿では、トランプ支持者の多くは世論調査の対象から外されているのではないかと考察した。現地の論調でもそうした指摘はみられたし、当然そのあたりは修正されたはずである。

私は米国シンクタンクの調査能力・知的水準は桁外れであると思っているし、カネもかかっている。主要メディアの当確打ちにも使用されるデータであり、信頼性も高い。(日本のように翌日になれば開票がすべて終わることはなく、メディアの当確で選挙の勝敗が事実上決まる。)

にもかかわらず、世論調査で5ポイント以上リードしているはずの五大湖沿岸各州がトランプ氏優勢で進んでいるのを見て、これはどういうことなんだろうと考えこんでしまったくらいであった。

かなりの差が開いていたテキサス、フロリダでもなかなか当確を打たず、世論調査との違いにパニクっているのかと思ったほどだった。しかし、五大湖沿岸では、結局世論調査が正しかったことが証明された。

思えば、ニューヨークやビバリーヒルズの目抜き通りでショーウィンドーに板が打ち付けられバリケードになっていたのも、バイデンが勝つけれども接戦という予測があったからではないかと思われる。トランブ勝利でも、バイデン圧勝でも騒ぎにはならない。トランプ支持者が暴れるのは、バイデン辛勝の場合のみである。

ジョージア州では票差が数千しかなく再集計になると報じられているし、ペンシルバニア、ミシガン、ウィスコンシンではトランプ氏が不正を主張して提訴しているという。もし本当に不正なら、米国はベラルーシ並みということになる。とはいえ、このままの情勢なら両者の選挙人数の差は60程度になるので、そう簡単にはひっくり返らない。

それにしても、トランプのままでいいという有権者が半分近くいるというのは驚きである。日本から見ると、新型コロナウィルスで20万人以上の死者が出て、警察官による黒人容疑者暴行で世情が騒然とし、米中経済摩擦で株価が乱高下する現状はどうかと思うけれど、半分近くのアメリカ人は、それほど気にしていないのである。

確かに、コロナウィルスは病気であって大統領の責任ではなく、病院や衛生環境整備は州や市の仕事である。秩序を乱す連中に対して警察で足りない場合には、軍隊を動員して当然と考える人もいるだろう。

株価は高水準にあり、経済が悪いと思っていないと言われれば、それはそうである。GMやクライスラーの時代ではないが、彼らに代わってGAFAが世界市場を席捲しており、他の追随を許さない。前世紀の製造業など、中国にやらせておけばいい。

「たいしたことはない。夏になれば治まる」と言いつつ自分が感染したのは褒められないが、すぐに回復して職場復帰したのだから問題ない。感染したらしばらく出てこれないだろうバイデン氏に比べれば、丈夫な分アドバンテージがある。

そう考えると、こちらで考えるほど米国内では気にしていないのも無理はないような気がする。とはいえ、マスクもしないしWHOからも撤退してコロナ死者が20万人というのは、どう考えてもまずい状況である。常識的な感染症対策がとられるとすれば、何よりのことであった。

[Nov 8, 2020]


投票日の深夜、トランプ勝利宣言の時点で、CNNはじめ報道機関は当確を出していなかった。