098 高尾山 [Oct 20, 2020]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

コロナ明けから2回山に行ったが、ともに頂上に立った気分を味わえなかった。

赤薙山はピークではあったのだけれど、すぐ後ろに女峰山へと続く稜線があって、頂上を極めたとはいえなかった。至仏山は入山9時までというローカルルールを知らず、途中で引き返さざるを得なかった。

それを踏まえて、次はどこの山と考えた時、高尾山から陣馬山への縦走がよさそうだと思った。たいへんポビュラーなコースで、以前から候補として考えていたのだが、なかなか行く機会がなかった。

高尾山なら高さも手ごろだし、奥多摩や丹沢で昨年の台風のダメージが依然として残っていることを考えると、今の時期に適しているように思える。

問題は空模様であった。10月に入ってぐずついた天気が続き、しまいには12月並みに寒くなった。困ったなと思っていたら、20、21日の2日だけ天気がもちそうな予報である。

八王子のホテルを予約して、一泊二日で行くことにした。高尾山から陣馬山までは距離があり、家から出ると1日で歩くのは難しい。帰りの便を考えると逆コースの陣馬山→高尾山の方がバスの時間を気にしなくて済む。

だったらいっそのこと、初日に高尾山に登ってしまおうと思いついた。縦走に思いのほか時間がかかった場合、最後の下りはケーブルカーにすることもできる。

ということで10月20日、火曜日。この日と翌日の水曜日だけは晴れる予報である。この日の朝まで雨が残り、木曜日には次の雨、なんとかと秋の空である。通勤ラッシュの終わった8時前の電車で都心に向かう。

都営線経由で京王線に入る。なんと、地下鉄からでも高尾山口行が直通運転していたが(全部笹塚までだと思っていた)、笹塚で特急に乗り換える。10時半過ぎには高尾山口に着いた。

5分歩いた清滝からケーブルカーとリフトが出ているけれど、そんなものに乗る訳にはいかない。高尾山口の駅から高尾山まで自分の足で登る。ハイキングコースは麓から整備されていて、稲荷山コースと琵琶滝コースというのが登山道らしい。

朝まで雨だったので、高尾山境内に近い琵琶滝コースを登ることにした。琵琶滝コースはケーブル清滝駅の左側を奥に入る。ちなみに、1号路の表参道は右側で、ここを下ってくる予定である。

しばらく舗装道路を進むと、左に登山道が分かれる。石碑が立っていて「高尾山琵琶滝水行道場」と彫ってある。琵琶滝とは、行者が滝行をする場所だったのだ。


琵琶滝コース(6号路)はケーブル清滝駅を左に入る。表参道(1号路)は右。


舗装道路から左の登山路に入り、琵琶滝コースへ。傾斜は比較的緩やか。


琵琶滝とは、山岳霊場の行場だった。道の雰囲気が清滝寺に似ていた。そういえば、ケーブルカーの山麓側も清滝駅というのだった。

 

登山道入口から10分ほど、緩やかな坂を登って行くと琵琶滝である。小さなお堂とそのすぐ脇に落差10mほどの滝があり、お堂の向かいに社務所のような建物がある。「一般の方にトイレをお貸しいたしません」「行者の写真撮影はご遠慮願います」と書いてある。

だったらハイキングコースを設定しなければいいのにと思わないでもなかったが、行場へのアクセスを整備するためにその方がいいのだろう。琵琶滝行場からは、参道側に直接上がる道もある。

琵琶滝を過ぎると、登山道には木の根が張り出してだんだん歩きにくくなる。ところどころで、登山道と沢が一体化して道の上を水が流れている。

歩いていて、四国遍路の三十五番清滝寺を思い出した。あそこも沢と登山道が一体化していて、上には滝があった。雰囲気もとてもよく似ている。そういえば、ケーブルカーの山麓駅も「清滝駅」という名前である。

もしかすると「清滝」というのは、滝行の行場を示す普通名詞だったのかもしれない。だとすると、三十五番は三十六番青龍寺より古い修験道の行場で、その名前からさんずいを取ると空海の学んだ唐の「青龍寺」になることから、清滝寺が先、青龍寺が後なのかもしれない。

(青龍寺は空海が唐から独鈷【密教の法具】を投げてここに落ちたから建てられたという伝説があるが、四国のどこに落ちてもその理由は成り立つ。そもそも、唐から投げて届く訳がないし。)

登山道沿いにはところどころ説明版が置かれていて、その場所の由緒や動植物を説明している。この説明板は全部で13あって、9より上は間隔が広くなっている。間隔が広くなったあたりから、いよいよ傾斜が急になる。

これまで傾斜がそれほどでもなかったのは沢筋の道だからで、こういう道は源流に近づくと急傾斜のスイッチバックとなることが多い。ガレ場を進み、沢筋を離れ、いよいよスイッチバックが始まる。そしてその後に、長い階段が現われた。

この階段は、YouTubeのかほちゃんの動画でも紹介されていたもので、いよいよ来ましたかという感じなのだけれども、丹沢のように長く続くことはない。考えてみれば高尾山は599mしかなく、琵琶滝コースのコースタイムも90分しかないのである。

かほちゃんと言えば、今回の高尾山・陣馬山の計画を立てるにあたって、動画を参考とさせてもらった。たいへん参考になった半面、その影響もあるのか思ったより人が多かった。彼女に文句を言う筋合いではないが。

階段を登りきるとベンチのある広場となる。向こうに見える舗装道路が頂上周回の5号路で、頂上はもうすぐのはずである。せっかくベンチが空いているので、いったん腰を下ろして一息ついた。

琵琶滝コースは、とても雰囲気のいい登山道だった。人もそれほど多く通らないし、想像していた高尾山の騒々しさみたいなものがなくて、普通に山登りをしている感じだった。

これまで来たことはなかったけれど、また来てみたい場所だと思った。しかし、そう思ったのはここまでだった。頂上まであと5分ほど登ると、そこはこれまでとは全く違う場所だったのである。


谷道の常として、谷から離れると急傾斜のスイッチバックとなる。


かほちゃんのYouTubeにあったように最後は長い階段。でも丹沢ほどではない。


コースタイム通り90分で山頂へ。平日なのに人だらけ。しかも縁日のような強烈な匂いがする。

 

高尾山頂は、登ってきた琵琶滝コースとは別世界だった。

まず鼻につくのは、縁日のイカ焼きのような匂いである。どこかでBBQでもやっているのだろうか。人もやたらと多い。「高尾山頂 599.15m」の山名標の前には入れ代わり立ち代わり記念撮影組が現われて、大騒ぎしながら写メを撮っている。

ベンチというベンチは、すべて満席である。BBQをやっている連中の一人が、汚れた皿を持ってゴミ箱を探していたが、当然そんなものはないので壁ぎわに放置していた。山にゴミを捨ててどうする。

ケーブルカーやロープウェイで頂上まで登ることのできる筑波山でさえ、ここまでひどくはない。頂上に神社があるのとないのとで違うのだろうか。間違いないのは、この連中に高尾山頂と多摩川河川敷の区別がついていないことである。

琵琶滝コースがよかっただけに、この落差は衝撃的だった。頂上には長居せず、少し下ったビジターセンターへ向かう。ビジターセンターは施設の一部がコロナ閉鎖となっていて、ほとんどひと気がない。騒ぎたい人には興味のないものだからだろう。

ビジターセンターの少し先に、丹沢方向に景色の開けた場所がある。霞んではいたけれども、いちばん背後に丹沢の山並みを望むことができた。

左に蛭ヶ岳、そこから犬越路までずっと下って、再び稜線が上がって大室山となる。その右側に、さらに白く霞んではいるものの、富士山の巨大な山容が立ち上がっている。

左に蛭ヶ岳右に大室山という景色をあまり見たことがない上に、さらにその右に富士山である。地図上で判断すると、高尾山から北東方向でこの位置関係となるが、高尾山より遠くだと高尾山の影になってこの景色は見られない。

もう少し見ていたかったが、ひっきりなしに現れるおばさんグループが、どこが富士山だのなんだのうるさいし、いつまでもいると他人の記念撮影の邪魔になるので場所を移った。

翌日歩く予定の小仏方向に少し下ったり頂上付近を少し歩いて、午後1時になったので下山することにした。

下山は最もポピュラーな薬王院、ケーブル駅経由の1号路である。まず薬王院まで、微妙なアップダウンがありそれ以上に距離がある。薬王院に近づくと、急な石段が続く。

薬王院に手を合わせて、参道を下る。ほどなく分岐があって、階段の男坂、スロープの女坂に分かれる。転ばないように女坂にした。さらにサル園前を過ぎてしばらく歩くと、ようやくケーブルカーの高尾山駅である。ここまで頂上から35分かかった。

思った以上に距離がある上に、急傾斜の石段があって歩きにくい道だ。ケーブルカーに乗らないつもりなら、最初から琵琶滝コースを下った方がいい。

ケーブルカーの高尾山駅から清滝駅までは、山上施設の車も利用する車道である。傾斜は急だが、簡易舗装が施されている。登山靴だったので、足腰に響いた。清滝駅から高尾山口までは、朝通った道である。高尾山口までケーブル高尾山駅から50分、麓まで休む場所はない。

高尾山口から京王線で八王子に出て、この日の宿である京王プラザホテル八王子に向かった。八王子に泊まるのは初めてだし、そもそも下りたこともなかった。ホテルはたいへんよかった。Go To トラベルで5,135円、さらに1,000円の地域クーポンが付く。

京王八王子駅からJR八王子駅まで歩いたけれども、目に付いた店もなくて、結局かつ屋に入った。千葉ニューのかつ屋とは微妙に味が違った。チェーン店なのに場所によって味が違うのはなぜだろう。

この日の経過
高尾山口駅(191) 10:55
11:15 琵琶滝(321) 11:20
12:20 5号路合流点(571) 12:25
12:35 高尾山(599) 13:00
13:35 ケーブル駅(484) 13:35
14:25 高尾山口駅(191)
[GPS測定距離 8.5km]

[Dec 14, 2020]


高尾山頂は臭くてうるさいが、少し離れると丹沢方面の眺めが開ける。一番背後の左の高い山が蛭ヶ岳、峠が犬越路で右が大室山。その右には富士山も見えた。


下りは薬王院・ケーブル駅を経由して1号路で。簡易舗装の急坂が続き足腰に響く。


今日の宿は京王プラザホテル八王子。八王子は下りるのも泊まるのも初めて。