320 宗田哲男「甘いもの中毒」 [Dec 16, 2020]

思い当たる節があって、甘いもの中毒について調べてみた。それで図書館からこの本を借りたのだけれど、期待外れだったことと期待以上だったことがそれぞれあった。

期待外れだったのは、本の表題や、副題「私たちを蝕むマイルド・ドラッグの正体」とは、ちょっとずれていることである。

この本の中には、ラットによる実験で、砂糖の依存性は麻薬、アルコールとよく似ていて、脳内で同様のメカニズム(報酬系)があるのではないかということまでは触れられている。

ただ、それ以上となると全く心もとない。依存性がどのくらいあるのか、治療可能なのかという点まで掘り下げていない。糖質制限食についてこられない人がいる、というだけである。

ヒトは本来肉食で、穀物から栄養をとるようになったのはつい最近という主張だが、じゃあなぜ奥歯があるんですかという反論がすぐ思い浮かぶ。ヒトの歯は、どうみても肉食以外の、草食とか穀物食に適応してきた結果である。

また、依存についても、「白米やパン、うどんをはじめ、菓子や清涼飲料をとらないよう指導している」のはいいのだけれど、指導された患者がおとなしく飲まないならアルコール依存の問題は起こらない。指導されてもできないから問題なのである。

こうした不満な点はあるのだけれど、糖質制限が糖尿病治療に有効であり、糖質のとりすぎが多くの健康被害を招いているという趣旨については、なるほどと思うし認識を新たにさせられた。

私の糖尿病歴は21世紀に入ってすぐからで、当時、糖尿病食といえばカロリー制限のことであった。糖質制限という考え方が出てきたのは、アメリカでちょうどその頃、日本ではごく最近のことである。

だからいまだに、医者の中に糖質制限を疑問視する人はいるし、糖尿病学会は糖質制限を認めていない。糖質制限食は、糖尿病治療の趣旨では健康保険の対象とはならない。YouTubeでもDAIGOが糖質制限はダメだと言っている。

ただDaigoの理由が、「糖質制限が有効だといってもその人だけのことで、神社にお参りしたから宝くじが当たったのと同じことだ」というのは、さすが竹下の親戚だけあって頭が悪い。仮説なのだから納得できる根拠があるかどうかが問題で、みんな当たる神社なら私もお参りする。

糖質制限で糖尿病が改善するという仮説の根拠は、血糖値を上げないためには糖質を体に入れなければいいという単純明快なものだ。それができないとされてきたのは、糖質がなければ体を維持するためのエネルギーが生み出せないと考えられてきたためである。

最新の知見では、体を動かすもとになるエネルギーはブドウ糖だけでなくケトン体(脂肪酸が分解されたもの)からも生み出すことが可能であり、そもそも最低限のブドウ糖は肝臓でアミノ酸から製造できる。だから、本当は糖分を摂取することはないのである。

「糖毒」という言葉があって、医学的にはグルコース・スパイクを指す。簡単にいえば絶対量ではなく血糖値の変化幅が問題ということである。

確かに、血糖値が乱高下することがいろいろな病気に結びついているのだけれど、AGEsの問題とか、血液の粘度の問題とか、血糖の絶対値が健康に及ぼす影響も少なくないと自分自身を省みて思う。これ以上は、書評の範囲を越えるのでまたいつか改めて。

最後に一つだけ思いつきを言わせていただくと、これまでアルコール依存と思われていた症状の中には、実は甘いもの依存があったのかもしれない。甘いものの一種として、白米があり精製小麦があり、日本酒やビールがあったとは考えられないだろうか。

[Dec 16, 2020]


糖質制限が糖尿病治療のみならず、健康維持に必要だという趣旨には異論がないけれど、「甘いもの中毒」がどういうもので、どういう害があるかあまり説明していないのが不満。例えば、アメリカの超肥満の人の食生活とか、調べれば分かるはず。