029 こんなにアンテナを増やして・・・ [Feb 16, 2021]

家の近くの里山を歩いていると、電柱や電線がなくて江戸時代にもこの景色だったんだろうなという場所でも、視線のどこかに携帯のアンテナ塔が入ってくる。千葉ニューの戸建て地域は一種住専か市街化調整区域である。高い建物はほとんどない。

1~2時間のお散歩コースの中に、5つ6つはあるだろう。つい最近も、歩いて5分ほどの小林牧場の近くに、新しいアンテナ塔を建てると掲示板が貼られていた。こんなにたくさんあるのに、なぜこれ以上必要なのだろうか。

調べると、どうやら5Gが関係しているらしい。5Gではより多くの情報量を高速で通信しなければならないため、周波数の高い電波を使う必要がある。中波ラジオ放送よりFM放送の方が音質はいいけれども受信エリアが狭くなるのと同じ理屈で、1つのアンテナ塔がカバーできる範囲は狭くなる。

だから、どこにいてもスマホが使えるようにするためには、いままでより多くのアンテナ塔を建てなければならない。Wifiがある家がほとんどだけれど、公衆通信網で個人の電波を使うのは建前上まずい。

アンテナ塔を建てるには地面を買うなり借りるなりしなければならないし、それなりの高さの構造物を建設しなければならない。電気設備・通信設備がセットでついてくるし、メンテナンスもいるだろう。その経費は、通信料に上乗せされる。

そんな負担をしてまで、5Gにする必要があるのだろうかと思う。110番とか緊急連絡はどこででも発信できるのがいいと思うが、別に田圃の真ん中で動画を見る必要なんてない。歩きながら株の売り買いをする人がそんなにいるのだろうか。

会社の理屈からすると、世界標準なのだから準拠しないとマーケットに取り残されるというのだろうが、利用者がそんなことに気を使う必要はないし、いらないと思ったら使わない自由がある。まして、そのための費用負担まで押し付けられるのは論外である。

国の推計によれば、日本の総人口は長期低落傾向にあり、いまから30年後には20%減少して1億人を割る見通しである。人口推計は経済予測と違って変動要因が少なく、移民受け入れ等のドラスチックな改革が図られない限り大きく変わることはない。

そうした中、アンテナを増やしても利用者が増える見通しはなく、いずれキャリア間の価格競争が激化して撤退するところが出てくるだろう。アフターサービスができなくなるじゃないかと文句を言ったところで、製造後7~8年でそもそも部品がない。新製品と交換しますと言われて終わりだし、その費用は通信料に上乗せされるだけである。

最近、YouTubeで限界集落の動画を見るのだけれど、ほとんど誰もいなくなった集落に電柱だけが建てられているのはシュールである。三相三線の電線が伝っていることもあるが、1本の電線だけが寂しく伸びていることもある。

電力会社も、誰かが住んでいる間はメンテナンスしなければならないし、いなくなったからといって家が残っていたらそう簡単に撤去できない。住民がいなくなってしまう集落は山奥であったり道路がなかったりする場所なので、工事するのも大変なのであろう。

携帯のアンテナ塔もそれと同じようなもので、誰も利用しなくなったからといって撤去するにはそれなりの費用がかかる。つながっているのが空中なので電線こそないものの、高さがあるので重機が必要だ。

(千葉の大台山という山の上に昔KDDの電波塔があったが、現在は更地になっている。現地は山の中にもかかわらずそれなりの幅の道路が作られている。)

そして、携帯のアンテナ塔がたくさん建てられたからといって、電電公社のつないだ電話線がいらなくなる訳ではないのが非効率である。あの線や電信柱は、NTTがフレッツ光を通すのに使っている。

便利な世の中はいいのだけれど、どこまで便利にするかちゃんと考えるべきなのかもしれない。マーケットに任せればいいというのが新自由主義の考え方だが、それだと膨大なムダな投資が避けられない。その費用は、結局のところ貧乏人が払うことになる。

[Feb 16, 2021]


家の近所にはたくさん携帯会社のアンテナ塔が建っていますが、また新設するようです。ただ、工期が昨年11月から今年の3月頃までと書いてあるのに、2月半ばで何もしてません。