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半世紀前の話

130 平安閣・玉姫殿・冠婚葬祭互助会 [Feb 26, 2021]

現代ではターミナル駅の周辺に必ずあるのは「セレモ」だが、半世紀前には平安閣・玉姫殿だった。それも、セレモは目立つ場所から一歩奥まった場所にあるのに対し、平安閣や玉姫殿は電車から見える位置にあった。

年齢ピラミッドの示すところ、50年前には結婚適齢期が人口の最も多い部分を構成していたし、現代では死亡者がそうなっているのだから当り前と言えば当り前だが、実際に目の前でその変化を見ると、まさに今昔の感がある。

年齢を重ねたいまになって思うと、別に結婚を披露するのに大金を掛けることはなく、身内でおいしい料理を食べればいいことである。しかし当時は、昔からの友達とか会社関係とかたくさん招待客を集めるのが当然という雰囲気だった。

同じことは葬式にも言えて、できるだけ多くの参列者を集めるのが供養だと思い込んでいた。だから、会社関係でも友達関係でも不幸があれば香典を持って参列するものだと思っていた。

そこに付け込んだのが、葬祭業者である。みなさんに失礼のないようちゃんとした式を挙げないといけませんよと数百万円の見積りを出し、足らなければ分割払いもありますよ、当方でやっていただけるならお安くしておきますよとセールスしたのである。

専門用語で「前払い割賦(かっぷ)方式」という。結婚式なり葬式なりが挙式されるのに備えて、何年も前から何千円かずつ積み立てるのである。やっていることは、銀行や信用金庫の積立預金と変わらない。

いまでもあるデパートのお買い物券積立や、旅行会社の旅行積立はこの一種である。問題は、銀行と違って信用度に問題がある会社が販売するので、消費者が安心しておカネを払えないという点にあった。

役所に知恵者がいて、互助会が集めた資金の一部を業界団体で強制的にプールしておき、何かあった際に払い戻しの原資にする方法を思いついた。

その業界団体は役所からの天下りが管理するので、ご安心くださいということである。互助会は遠慮なくセールスでき、役所は天下り先を確保できて、八方丸く治まるはずであった。

ところがというか、この方式には盲点があった。将来にわたって市場規模が拡大しないと成り立たないのである。前払い割賦で集めた資金は先々のサービスに充当するものであるが、売り上げが伸びなければ当座の運転資金に四苦八苦することになる。

その問題は、早くも結婚式において現実化した。第二次オイルショック以降出生数は減り続け、晩婚化で結婚自体が減った。加えて、かつてのように大勢の招待客を集めてハデ婚をする時代ではなくなった。結婚式場の多くも、リストラを余儀なくされたのである。

いまのところ葬儀については件数が減るという事態にはなっていないが、家族葬や直葬など、小規模化の流れはとどめようがない。今回のコロナによる3密回避で、その流れは加速しつつある。

規模が小さくなり費用が少なくて済めば、前もって積み立てる必要はなくなる。買い物券や旅行券なら余計にあっても困らないが、葬式が余計にできても仕方ないのである。

おそらく近い将来、葬儀会社もリストラが避けられないだろう。参列者が多く集まるなら公共の斎場を借りるし、家族葬なら小規模な会館でも自宅でも構わないからである。

結婚式や葬式に普通の家族が1年生活できる以上のカネを払うこと自体が本来バカバカしいのであって、それぞれが負担できる費用の範囲内でお祝いなりお悔みなりすればいいだけのことだ。個人的には、冠婚葬祭業界が縮小するのはやむを得ないと考えている。

[Feb 26, 2021]

昭和の時代には、ゴンドラやスモークなど、結婚式がハデハデでした。(出典: zexy)