125 第79期順位戦終了、名人挑戦はさいたろう八段 [Mar 18, 2021]

第79期順位戦が、3月11日のB級1組を最後に終了した。

今回からB1からC1までの昇級・降級枠が2から3に拡大された。永瀬王座、藤井二冠、高見七段のタイトル保持者・経験者は手堅く、横山七段、高崎七段といった頭ハネの常連もまた昇級を果たしている。

A級順位戦は、2月26日に静岡で一斉対局。この日までに降級二人(三浦九段、稲葉八段)が決まり、挑戦権も斎藤、広瀬の二名に絞られたため、多くの棋士にはそれほどプレッシャーのかからない最終局となった。

挑戦者争いは、夕食休憩後早いうちに決着していた。豊島竜王が広瀬八段を破りともに3敗となったので、慎太郎八段の1位・名人挑戦は確定していた。ただ、将棋界の不文律でその結果は他の対局者に知らされなかったはずで、天彦・慎太郎戦は深夜に及ぶ大熱戦となった。

序盤でリードを奪った慎太郎八段だが、天彦九段も決め手を与えず、先に秒読みに入ったのは慎太郎八段。何度か決め時を逃したけれども、日付が変わってから最後は即詰みに討ち取って8勝1敗で名人挑戦権を獲得した。

斎藤慎太郎八段はネット上では「さいたろう」で通っている。これは、NHKにも出ている中村桃子女流がそう言い間違えたことによるが、本名では堅苦しいイメージがニックネームだとさわやかな外見にマッチするから不思議である。

昨年度のB1で2位に入り、A級に初昇級で名人挑戦となった。近年、A級昇級初年度の活躍が目立っており、5年前の74期には天彦八段(当時)、翌75期には稲葉八段がA級初登場で名人に挑戦している。同列にはできないが、昨年の渡辺二冠もA級復帰即挑戦であった。

B級1組最終局は3月11日に行われ、すでに昇級を決めていた山崎八段に続き、永瀬王座がA級昇級を決めた。

山崎八段は2008年、20代半ばで昇級してから13年間B1に在籍した。その間、次々と後輩棋士に追い抜かれ、今期の順位は11位、つまり今年だったら降級してしまう成績であった。

力戦型を得意とする独特の戦法で、タイトル戦になる前の叡王戦やNHK杯で優勝実績があるにもかかわらずA級昇級を果たせずにいた。本人もいろいろな思いがあっただろうが、今期は開幕から勝ち星を重ね、最終局前に昇級を決めた。

永瀬王座は2期でB1を抜けた。今期は開幕6連勝したもののその後負けが込み、最終局は勝つか木村九段が敗れると昇級という条件だった。四強の一角でA級に入っても実力上位で、今年の慎太郎八段に続いて初A級名人挑戦となっても誰も驚かない。

一方、降級は深浦九段、丸山九段、行方九段とベテランの九段勢となった。丸山九段は前期B2首位で再びB1となったばかり、深浦・行方の両者は2~3年前までA級なので、B2では実力上位と思われる。再度の浮上を期待したい。

B級2組は最終局前に藤井二冠、佐々木勇気七段が昇級を決めた。両者とも今期C1から上がってきたので連続昇級ということになる。B2は以前からこうしたケースが多く、C1と実力差がほとんどないともいえる。昇・降級枠拡大で活性化を期待したい。

最終局は3敗6名と4敗筆頭の谷川九段にチャンスがあった。結果的には順位が最上位で自力昇級可能だった横山七段が勝ち、7勝3敗で3つ目の昇級枠を確保した。

横山七段は第62期、2003年に四段となったがその後長くC2にいて、C1に昇級したのは2014年の73期だった。B2でも昨年、一昨年と次点(3位)、特に昨年は7勝1敗からラスト2連敗で昇級を逸していた。3年連続3位で、昇級枠拡大のチャンスを生かした。

C級1組からは高崎七段、増田六段、高見七段の三名が昇級。最終局で自力だった高見七段が敗れたものの、ライバルの船江六段も敗れて辛くも残り1枠を確保した。

高崎七段は2006年四段プロデビューで、4期でC2を抜けたもののC級1組に10期在籍した。これまで順位の差で昇級を逃すことが多かったが、今回は10連勝で文句なしの昇級となった。

増田六段はC2・C1とも3期で抜けた。藤井二冠と比較するから平凡な記録に見えてしまうが、まだ20代前半の若さであり、ますますの成長が期待される。高見七段はご存じタイトル経験者(叡王一期)。再度タイトル戦線への浮上を果たしたい。

C級2組は従来から3名の昇級で、黒田四段が最終局前に、出口四段、大橋六段が最終局で勝って昇級(黒田・出口は五段昇段)を決めた。黒田・出口は2019年デビューの同期で、黒田は昨期好成績で順位がよく早々と昇級を決めたのに対し、出口は昨期降級点で最終局負ければ降級を逃すところだった。

大橋六段は藤井二冠と同じ2016年前期三段リーグの勝ち上がりで、藤井キラーとして知られている。すでに勝ち星と竜王戦連続昇級で六段まで昇っており、他棋戦の成績もすばらしい。連続昇級有望だろう。

第79期名人戦七番勝負は、4月7~8日、ホテル椿山荘(東京)でスタートする。

[Mar 18, 2021]


第79期順位戦最終局、斎藤慎太郎八段は実は夕食休憩後早々に挑戦が確定していたが、日付が変わるまでの激戦で佐藤天彦九段を破り8勝1敗でA級昇級初年度で名人挑戦を決めた。▲8三歩が決め手で、金で取れば▲5四歩で飛車角が働くし、放置すればと金ができる。