060 年金はこれからどうなるか [Apr 28, 2021]

年金財政がたいへんな状況にあることはかねてから諸方面で取り沙汰されている。通勤電車がないので頻繁に見ることはなくなったが、週刊誌の広告にも年金が将来どうなるかセンセーショナルに取り上げられているのを見ることがある。

そもそも、年金制度を作ったのは厚生省が自前の財源がほしかったからである。企業の売上も労働人口も右肩上がりに増え続ける時代に、ネズミ講もびっくりの試算で給付水準を決めた丼勘定である。同様に作られた退職年金や三階建て三階部分がほとんど破綻しているのだから、国民年金・厚生年金だけが無傷で済む訳がないのである。

そう思っていたところ、先日読んだ橘玲の「上級国民/下級国民」に面白いことが書いてあった。本の内容自体はそれほど目新しくも面白くもないのだけれど、年金制度の将来について巷間言われることとは違うことが書いてある。

平成時代に何が起こったか。労働市場についていえば、正社員が圧迫されて非正規労働者が増えているとか、ニートやフリーターなど正社員経験のないまま中年に至った層が増えていると言われるが、これは事実の半面しか見ていないという。

年齢別にデータを分析すると、ある程度以上の年齢層の男性正社員にはほとんど影響は出ておらず、大卒の男に限れば、仕事がなくなった人間は横浜国際競技場の収容人員より少ないというのである。

なのにそうした事実をなぜマスコミが取り上げないかと言うと(橘氏はもともと雑誌編集者。つまりマスコミ関係者である)、新聞・雑誌の主たる顧客層である中高年齢層に不利になる記事は載せられないからというのである。

そして、安倍政権末期から急速に働き方改革だの同一労働同一賃金だの労働分野の構造改革が進められたが、これは団塊の世代が定年になって会社からいなくなったのと軌を一にしているそうだ。

つまり、利害の共通する多くの人間(イコール票数)を有する層には、政治家もマスコミも逆らうことができない。団塊の世代が現役でいる間は労働分野の構造改革ができなかったのだから、彼らが年金受給者でいる間は年金制度改革はできないということである。

これを裏付ける証拠として、氏が若手経済官僚から聞いたという話を紹介している。年金の担当は厚生労働省だから、経済官僚(経済産業省だろう)とは部署が違うけれど、たぶんそうだろうなという話である。

年金財政が悪化するといっても、2040年頃がボトムで(団塊の世代が年金を受け取らなくなる=多くが死ぬ)、それ以降は改善することが見込まれる。それまで対症療法でやりくりしていけば、制度改革などという危ない橋を渡る必要はない。

その対症療法とは、給付水準の見直しであったり、消費税の引き上げだったりするのだそうだが、そうやって後ろ倒しにしている間に、国債残高は積み上がり、財政再建の目途は立たなくなるけれども、制度自体は破綻しないのだという。

それはそうかもしれないが、それでは行きつく先が国債の暴落であり、IMFによる通貨管理だということである。現に、そういうことになった国はいくつかあるので、絵空事ではない。

まして、年金財政が改善するというのは計算上のことで、そうやって丼勘定したから現在の状況を招いているのだろう。確かに、巨大な塊が年金受給層からいなくなるのは大きいだろうが。

話は変わるけれどコロナワクチンを国内生産できないというのはかなりショックで、北里柴三郎や野口英世以来の伝統はどうしたと感じている。その伝からすると、国家財政が行き詰って韓国やアルゼンチン並みになったとしても仕方がないかなとは思う。

[Apr 28, 2021]


年金の将来はどうなるか。週刊誌等では悲惨なことが書かれていますが、橘玲氏は団塊の世代が生きている間、抜本的な改革はできないと予想している。