107 「健康で文化的な最低限度の生活」って、そういう意味じゃ・・・ [May 7, 2021]

5月3日の憲法記念日。何気なくNHKのニュースを見ていたら、憲法で保障された文化的な生活という意味をコロナ禍のこの時期だからこそ考え直す必要があるみたいなニュースが流れてきた。瞬間的に相当の違和感があった。ぞわぞわした。

憲法の条文をどう理解するかは個人個人の自由であり、NHKだから判例・学説に則った解釈をしなければならないということはない。ただ、「文化的」というのは、一般的な理解では演劇とか音楽とかカルチャーを意味しているのではなく、「最低限度の生活」を修飾している、内容を示している言葉と私は理解していた。

つまり、単に食べるものがあるというだけではなくて、清潔で衛生的な環境で暮らすことや、土の上にゴザを敷いたような住居でないことや、毎日水を汲みに行ったり薪を拾わなければならない生活でないことを意味していたはずである。昔、関西圏でアパートのことを「文化住宅」といっていた、その「文化」である。

もちろん、その上に芸術や学問、科学技術に親しむ権利もあるのだけれど、それは「憲法記念日」ではなくて「文化の日」のニュースである。「憲法記念日」にあえてアピールすることではない。

本来、「憲法記念日」にニュースにすべきことは憲法改正の是非であるが、あまりにも政治マターなのでNHKでは取り上げにくいのは分からなくもない。それにしても、コロナの影響で最低限度の生活水準維持が難しくなっている人はたくさんいる。そういう人達には、音楽だの演劇だのってどこの世界ですかというのが正直な感想だろう。

NHKの職員の多くは政治家や役人のコネで、さもなければ優等生が選抜されて入社している。だから、衣食住の確保など当り前で、その上に趣味の生活を送る権利があると憲法で定めているという理解なのだろうけれど、浮世離れしているというか何というか。

そもそも、「憲法」というのは基本的に「国」の行動指針について定めたもので、国民の努力目標ではない。

だから、憲法のこの条文に基づいて、国には生活保護や社会保障、健康保険等々の制度があり、水道・電気・ガス等は基本的に公営企業から安価で提供されることになっている。

本当にNHKが「文化的」を演劇や音楽のことだと理解しているなら、もっと受信料を安くして国民が音楽や芸術に親しめるようにすればいいだけの話だ。市民税並みに受信料を取るのだから、市で社会福祉に負担するくらいの負担をNHKもすべきだろう。

もう一つ違和感があるのは、演劇や音楽がみんなが見て聞いて楽しんだり、自分が演じて楽しんだりするものだと思い込んでいる節があるらしいことである。

演劇や音楽だけでなく、舞踊や絵画、文芸まで含めて、もともと広い意味の芸能は、神様に奉納するものだったはずである。つまり、冠婚葬祭の「祭」である。祭りをするつもりがないのに、芸能だけ独立してあるべきだという感覚が私には理解できない。

何のために、演劇や舞踊、音楽などの芸能を神様に奉納するのか。無病息災を祈り、五穀豊穣を祈り、無事に年月を送れることを神々に感謝するためである。それを神様と一緒に楽しませていただくというのが、もともと祭りのあり方だったはずである。

国は宗教とは関係しないから神様などいない、したがって感謝もお祈りもしない。芸能はみんなが楽しむためにだけあるというならば、するしないは個人の自由で、憲法で権利だの義務だのいう話ではない。

私は伝統芸能もお祭りも大事だし、共同体を維持するためには不可欠だと思っている。でも、多くの人はそう思っていない。まあ、お遍路の札所がコロナなので参拝自粛してくださいというご時世だから、仕方のないことかもしれない。

[May 7, 2021]


憲法記念日のNHKで、国民には文化的な生活を送る権利があるので、コロナ禍でも演劇に親しむべきというニュースがあった。「健康で文化的な最低限度の生活」ってそういう意味じゃないし、そもそも憲法記念日と関連付けるニュースじゃないと思う。