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半世紀前の話

180 赤チン [Jun 23, 2021]

前回、越中富山の配置薬のことを書いていて、そういえば50年前にはあったけれどいまはないものに赤チンがあるな、と思い出した。

赤チンとはマーキュロクロム液のことで、半世紀前には傷の殺菌剤として普通に使用されていた。マーキュロクロムもアスピリン同様に商標で、薬品名はメルブロミン ( 2,7-ジブロモ-4-ヒドロキシ水銀フルオレセイン二ナトリウム塩)である。

薬品名に含まれるように水銀化合物であり、公害・環境保護意識の高まりとともに1970年代に入ると世界的に製造禁止となった。現在では日本薬局方にも含まれておらず、薬品としては残っていない状況である。

しかし、私の子供時代には当たり前に使われており、学校の保健室にも常備されていた。いまと違って子供達は学校が終わると外で遊ぶことになっており、走り回るから転んでケガをする。赤チンをつけたことのない子などいなかっただろう。

加えて、いまのように舗装道路ばかりではなく、幹線道路のほとんどは砂利道であったから、そういうところで転ぶと必ず足に切り傷を負う。ひざっ小僧を砂利でギザギサに裂いてしまい、ヒザ全体を赤チンで真っ赤にした子を見るのも珍しくなかった。

いまのように、バンドエイドや保護テープのようなものもないので、大体は赤チンをつけてあとは乾かすだけ。よほどひどいときにはガーゼと絆創膏を付けたけれど、ガーゼの代わりに包帯を切って使うことも多かった。

いま思うと、多くの家は畳敷で、子供達も正座してご飯を食べていたから、赤チンをつけていたら畳にも座布団にも色が移ってしまうような気がするが、当時はあまりそういうことを気にしなかった。逆に考えると、家もあまりきれいではなかったということだろう。

赤チンとよく似たネーミングのヨーチン(ヨードチンキ)という薬品もあった。こちらも消毒薬として広く使われたが、現在ではほとんどマキロンに取って代わられた。ヨウ素をエタノールで溶かしたのがヨーチンだが、グリセリンで溶かしたものがルゴールで、こちらはまだ耳鼻咽喉科で現役である。

思い出す限り、家庭用救急箱の中にはたいしたものは入っておらず、赤チン、オロナイン、包帯、絆創膏、ガーゼとかそのくらい。いま山に持っていく救急キットとたいして変わらない。後は配置薬として風邪薬、胃薬、痛み止め、湿布薬くらいだったように思う。

歯磨きも親は粉のものを使っていた。だからいまだに「歯磨き粉」という言葉がある。私は当時から現在までチューブの練り歯磨き以外使ったことはないし、海外のホテルでもそれ以外見たことはない。

日用品も含め、衛生面に関する生活環境は、半世紀の間にずいぶん進歩したものだと思う。

[Jun 23, 2021]


子供の頃はオキシフルと赤チンがケガした時の定番でしたが、かなり早い時期にマキロンとバンドエイドになったような記憶がある。(出典:北多摩薬剤師会)