カテゴリー
将棋

134 第92期棋聖戦、藤井棋聖ストレートで初防衛 [Jul 6, 2021]

第92期棋聖戦五番勝負(2021/6/6-7/4)
藤井聡太棋聖 O 3-0 X 渡辺 明名人

渡辺名人が勝ち上がり、直接のリターンマッチとなって注目された第92期棋聖戦五番勝負、藤井棋聖が3連勝で、あっけなく初防衛を果たした。藤井棋聖(二冠)は、これでタイトル初防衛と九段昇段の最年少記録を更新した。

それより注目すべきは、渡辺名人がタイトル戦でストレート負けを喫したのはこれが初めてということだと思う。棋王戦、王将戦、名人戦と若い相手に圧倒的な強さをみせた渡辺名人だが、藤井棋聖を苦手としているようである。

しかも、第1局、第3局と先手番で、作戦選択ができたにもかかわらずである。第3局はお互い秒読みで、最後は指運が結果を左右したように思われるが、第1局は渡辺名人の完敗であった。

下図が第1戦の途中図で、名人が8筋で飛車取りをかけた場面である。通常、この手は利く(手抜けない)はずというのが普通の感覚であるが、藤井棋聖は手抜けると考えた。そして、△8八歩と打ったのである。

△8八歩自体は手筋なので、渡辺名人も当然見えていたはずだが、この場面でというのは予想外だったようだ。インタビューで「見えなかった」と言っている。実際、この歩を銀で取っても、初志貫徹で飛車を取っても、先手は一手遅いのである。

第2局は藤井棋聖の先手番。相掛かりから角交換となり、お互いに筋違い角を打ち難解な中盤戦が続く。171手に及ぶ激戦を制したのは藤井棋聖で、連勝で初防衛に王手をかけた。

第3局は矢倉の急戦となり、後手の藤井棋聖は早々に△7二飛と動く。△7二飛が採用された直近の実戦は2日前の八代・三枚堂戦(竜王戦)で、藤井棋聖はこの日王位戦だった。1日しかない準備期間でここまで研究するというのはすごい(渡辺名人の先手番なので、矢倉になるとは限らない)。

途中、残り時間の差が1時間となり、しかも藤井棋聖は秒読み。形勢は二転三転し、最後はお互い1分将棋となる。飛車を切って攻めた渡辺名人がリードした場面もあったのだが、最後は藤井棋聖が逆転して3連勝、初防衛を果たした。

藤井棋聖もコンピュータではないので、攻め合って1手勝ちの場面は1分将棋で指せなかったが(ABEMA解説の阿久津八段が詰めろ逃れの詰めろを発見した)、それでも負けにくい手を指し続けていたように見えた。

逆に渡辺名人は、すぐに見えるはずの王手銀取りの桂打ちや、角を移動させての飛車成りをせず、飛車を切って最短距離の勝ちを目指した場面がポイントだった。感想戦でも、「飛車を切って勝ちだと思ったけど、錯覚だった」と言っていた。

渡辺名人は、半年間続いたタイトル連戦がこれで一段落。来年初めの棋王戦・王将戦までしばらく充電期間となる。ともに、藤井二冠が勝ち上がってくる可能性がかなりあるので、きっちり準備して巻き返してほしいところだ。1勝7敗というのは、藤井二冠が相手とはいえ偏りすぎである。

一方藤井棋聖は、いままさに豊島竜王と王位戦・叡王戦の十二番勝負中。B1順位戦と竜王戦決勝トーナメント、王将戦二次予選もあるので、今後は過密スケジュールを余儀なくされる。2日置いて火曜日にはさっそく順位戦(対久保九段)、3日置いて土曜日には竜王戦(対山崎八段)、さらに中2日(前日入りなので実質中1日)で来週13・14日には王位戦第2局がある。

[Jul 6, 2021]

渡辺名人のリターンマッチで注目された第92期棋聖戦、第1局は相掛かりから華々しい空中戦となったが、藤井棋聖の8八歩が渡辺名人曰く「見えなかった」。飛車取りを手抜いたこの手が利くという読みで、実際に▲8一香成△8九歩成となると先手は一手遅い。