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なんとなく思うこと

131 魂はない、幽霊もいない [Dec 23, 2021]

脳の機能についての研究が進んで、最新の知見では「心」なんてものが脳や体と独立してある訳ではないということが明らかになってきたそうだ。

こういう話を聞くと思い出してしまうのが若かりし頃のことである。大学へ行って、心理学の講義を受けた。フロイトとかユングのことを教えてくれるのだと思っていたらさにあらずで、ネズミを迷路に入れる話とか、ゴリラの赤ちゃんに何を見せると怖がるかという内容であった。

当時はオカルトがブームで、オウム真理教の騒ぎはすぐ後である。こっくりさんとかエスパーとか、テレパシーとか1999年恐怖の大王とか、そんな本がたくさん売れていた。しかし半世紀経ってみると、講義の方が最新で超心理学なんてものが時代遅れだった訳である。

動画とか、その前提となる動きという概念にしても、脳が作り出した虚構である。脳が認識するのは時間の経過とともに微妙に違う静止画像だけで、それを動いているものと理解するのは脳の働きである。

同様に、われわれが「心」と思っているものも、実は脳が自分の働きを分かりやすくするための虚構であり、脳がないところに心はないというのが最新の知見である。

そのこと自体は昔からうすうす分かっていたことで、改めて証明したということに過ぎないのだろうが、そうなるとこれまで多くの人達が信じてきたいろいろなことの根底がくずれてくる。

以前、ドーキンスの「神は妄想である」の書評で書いたように、神はいないのかもしれないが、神様はいると信じた社会の方が、生き延びるのに有利だったということはあるかもしれない。

しかし、それは人間の知識が自然界の現象を解明できない時代のことで、現代にあっては神の存在を信じても信じなくても、生き延びる確率はそれほど違わないように思える。(むしろ、神の存在を信じる方が生き延びる確率は少ないかもしれない。)

「心」とか「魂」、「霊」が脳の作った虚構だとすれば、ほとんどすべての宗教も虚構ということになる。輪廻もしないし最後の審判もなく、極楽浄土も千年王国もないことになる。それらは、肉体とは別の存在、「霊」抜きには考えられないからである。(仏教では輪廻するのは「霊」ではないが、肉体以外のものであることに違いはない)

次に、「聖霊が現れて私にそう命じた」といった預言者伝説も、実際のところ「私はこう思うからそうしろ」という意味になる。宗教だから誰かを信じることに違いはないが、神や聖霊の命令なら従うけれど同じ人間の命令なら自分で考えて決めるという人は少なくないだろう。

そうした理屈抜きで行動規範としてとらえればいいのかというと、そこがまた難しい。今日の科学からすると意味のないことでも、そう決められていたとしたら反証を挙げてもどうにもならない。議論もできないしバージョンアップもできないということである。

もちろん、今日の科学で分からないだけで豚か牛かどちらかは食べたら問題あるのかもしれない。しかし、少なくとも人間の一生のスパンでは問題ないようだから、致命的な問題とはならない可能性が大きい。

心が体と独立しているというのは、「脳」が作り出した虚構らしい。ということは、魂もいないし幽霊もいないということである。生身の人間がその事実を受け入れられるかどうかというのが、次の問題となる。

前回は、「心」は脳の創り出した虚構であり、魂もなければ霊もない。輪廻もなければ最後の審判もなく、また聖霊のお告げもないので宗教の多くは根拠がなくなることを書いた。

それでは、超常現象もまたないのだろうか。これについては「魂」や「霊」とは別に考える必要がある。いま説明できないからといってすべて神様のなさることと考えていたら、宇宙の成り立ちも病気の原因も解明できなくなる。

日食や月食が太陽や月の軌道をもとに計算できることであり、過去のいつそれが起こって将来いつまた見られるかは分かっている。しかし、ずっと昔は神のなさることと考えられていた。

遠くで起こったことを感知できる「千里眼」は、かつて神の領域に関することとされ、つい最近まで超能力とされていた。しかし、カメラと通信手段があればそれは簡単に可能であり、いまではスマホで数百km数千km離れた場所のライブ映像を見ることも可能である。

同様に、超能力とされたものの多くは、いまでは技術的に可能なこととなったり、手間をかければ分かることである。できないのは「時間を先に進んで未来のできごとを述べること(予言)」だけといっていい。

その昔、「TRICK」というテレビドラマがあった、若かりし阿部寛と、みずみずしかった仲間由紀恵が主演で、超常現象や霊能力はすべて手品のトリックで説明できるというストーリーの人気作品であった。

その第1話は、菅井きん率いる新興宗教団体のインチキをあばくという話であった。教祖の超能力とされた代表的なものが、空中浮揚、透視であるが、ピアノ線で浮いたり、アルコールを手に付けて封筒の中身を見たりしていた。

それらの「超」能力は他にも可能な手段はありそうだが(超小型カメラがあれば透視などすぐできる)、TRICKの中でも、教祖がどうやって裏切り者を事故死させたかの回答は示されていない。

ドラマではあくまで偶然ということにされていたけれど、「あなたは死ぬ」を実現させるためには実行部隊を手配しなければならず、それは予言ではなくて殺人である。(オウムの件があるので当時はやりにくかっただろう)

そういえば、最近では心霊写真とか地縛霊とかこっくりさんの話題をほとんど見なくなった。

約半世紀前のオカルトブームの頃、そうした話が多く提供されていて、その延長線上にユリ・ゲラーとか1999年恐怖の大王があったのである。そうした話題をほとんど見なくなったのは、オウムの反省もあるけれどそうしたことを多くの人が信じなくなったことが大きい。

また、予知とか第六感と言われるものの多くは、すでに起こっていることを感知する能力で、まだ起こっていないことを予知する訳ではない。個人的には、そうした第六感的な感覚は、人間に備わっている能力かもしれないと思っている。

同様に、UFOとか未知の生物も「霊」とは別の範疇に属するものだろう。現在の科学技術で説明できないだけで、「未来に起こることを知る」以外の超常現象はあったとしてもおかしくない。

[Dec 23, 2021]

「霊」がないとすると超常現象もないのか。必ずしもそうとはいえない。時間を先に進んで未来のことを予言することはできないが、それ以外については現在分からないだけかもしれない。