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136 ロシア、ウクライナ侵攻。北京五輪で大騒ぎした人にも責任の一端 [Mar 5, 2022]

とうとう、ロシアがウクライナに侵攻した。

数週間前から、ヨーロッパのニュースはウクナイナ危機一色だった。マクロン大統領やショルツ首相がモスクワを訪れてプーチン大統領と会談、バイデン大統領もジョンソン首相も警告を重ねけん制していたのに、最終的にはウクライナへの直接攻撃が行われた。

この問題が最終的にどうなるのかまさに予断を許さないが、いま思うことをまとめておきたい。

ヨーロッパ各国が危機感をつのらせている中、日本のニュースは北京冬季五輪一色だった。これこそがまさに、ロシアの侵攻を招いた大きな要因のように私には思われる。

というのは、北京五輪に先立って香港の民主化運動が弾圧された。新疆ウイグル地区の少数民族弾圧(少数とはいっても、ヨーロッパの小国よりずっと人口が多い)も見逃されたままである。外交使節団を送らなくたって、放送局からカネが入れば中国としては痛くも痒くもない。

中国の対外政策を担当している部署はそういったことを当然監視していて、オリンピックで周辺諸国の警戒感はなくなったとみているだろう。アメリカだって株価は堅調だし、ヨーロッパも資源価格高騰の方が身近な問題である。

ロシアも当然そのあたりはみている。中国が香港に手出ししてどの国も有効な手段をとれないのなら、われわれがウクライナに進出して何が悪いということである。香港が中国の領土なら、ウクライナだって旧ソ連、プーチン的には自分達の領土ということになる(プーチンだけでなくロシア的には)。

株の値段とか石油の値段が高い安いいったところで、自由に商品をやりとりすることはもっと重要で、その前提となるのは民主的な政治がおこなわれていることである。ところが、ロシアとか中国、他にもいくつかの国はそうではない。

本来マスコミというのは、そのあたりに警鐘を鳴らし、いくらカネ儲けになるからといっても採り上げるべきでないイベントは採り上げないという判断をすべきである。ところが、どの媒体もオリンピック一色で、われわれはよくないと思うので報道しないというマスコミは、少なくとも大手にはなかったようである。

今回のウクライナ侵攻が北京冬季終了のタイミングを測ったように行われたのは、中国との連携とまではいえないにしても、事前の通告があったように思われる。ロシアとしても、国連の場ですべての国を敵に回すのは居心地が悪い。

そのウクライナ、ボクシング界においては近年急速な勢力拡大を果たしている国である。現在のキエフ市長は十年前まで世界ヘビー級チャンピオンだったビタリ・クリチコ。弟ウラディミールとともに兄弟で世界ヘビー級を席巻した。

ビタリ・クリチコはここ半世紀で最強のヘビー級ボクサーのひとりである。モハメッド・アリやマイク・タイソン、それに弟ウラディミールは強い時は強かったが完敗も少なくなかった。ところがビタリの2敗はいずれも負傷TKOで、それまでの途中採点では勝っていた。レノックス・ルイス戦は、私の見たベスト・バウトの一つである。

そして、いま世界のボクサーの中で、カネロ・アルバレスの次にファイトマネーの高いワシル・ロマチェンコもウクライナだし、ヘビー級チャンピオンの一角を占めるオレンサンデル・ウシクもウクライナである。ロマチェンコは現在国内にはいないようだが、ウシクはウクライナにとどまっているという。

ビタリは弟ウラディミールとともに、祖国ウクライナのために戦うとメッセージを出している。早く平和になればいいなどとお気楽なことを言うつもりはない。ただ、オリンピックで大騒ぎした人達には、責任の一端があると言いたいだけである。

[Feb 27, 2022]

キエフ市長ビタリ・クリチコ。ボクシングファンにとって、ロシアのウクライナ侵攻はひと事ではない。(写真出典:Wikipedia)

先週、ロシアのウクライナ侵攻は中国の民主化弾圧と軌を一にするもので、お気楽にオリンピックなどと浮かれて見ていた人達にも責任の一端があると書いた。今日はその続き。

オリンピックに続いてパラリンピックが始まる。会場は引き続き北京である。障害者スポーツ振興のためパラリンピックもオリンピックに続いて開催されることがIOCの開催条件となっているが、こういう状況になるとデメリットの方が大きいと分かる。

というのは、開催都市と同様にメディアや各国オリンピック委員会にも同様の縛りがあって、オリンピックの中継とパラリンピックの中継はセットである。NHKだって、わざわざ好き好んでパラリンピックを長時間放送している訳ではない。

だから、こういう状況下でも中国に好意的な放送が世界各地で行われる。その一方で、ウクライナへはロシア軍の侵攻が続いている。非難するのか見て見ぬ振りをするのか、どっちですかということである。

ウクライナへは、武器の供与など直接軍隊を派遣する以外の手段で欧米各国は支援しているというけれども、どれだけ効果があるだろうか。万一日本が侵略されても、きっと武器だけ来るんだろう。それも高値で買わされて。

こうした中、先週とりあげたウクライナの世界的ボクサーであるワシル・ロマチェンコ、オレクサンデル・ウシクが郷土防衛軍に参加することが伝えられた。

軍隊に入れば、当然日常のトレーニングは続けられない。ボクサーにとって最重要なウェイトの維持(減量)も、普段通りにはできない(ウシクはヘビー級だが)。早急に停戦に至らなければ、4~5月に予定されている試合は中止・延期となるだろう。

ロマチェンコもウシクも、ファイトマネーはおそらく十億円台。日本人トップである井上・村田の約10倍に達するはずだ。しかし、そんなことより祖国ウクライナを守ることがいまは大切ということである。

大したものである。こういう選手たちの決断を仄聞するだけで、日本のメディアやスポーツファンの甘さ加減はひどいものだと感じる。

何かというとマスコミは、「オリ・パラは厳しい練習に耐えた選手達の晴れ舞台」的な論調だけれども、厳しい生活に耐えて家族を何とか食べさせている人達など世界中にいくらでもいる。厳しい練習は、言い方はよくないけれども衣食住が確保できて初めて可能な、ぜいたくな余暇活動である。

そんなものを見て「夢をもらった」などと言っている人達がいるとすれば、それもまた平和ボケもいいところである。そんなにしてまで、他人から夢を見させてもらわなければならないのだろうか。夢ぐらい自力でいくらでも見られるはずだ(寝てればいい)。

ロマチェンコやウシクは若くて健康な男子だから、いざとなれば祖国の一大事に馳せ参じる一員として周りも期待するし、本人もそう思って参加したのだろう。カネとか練習の成果とか、そんなことより優先順位が上ということである。

ひるがえって日本のオリ・パラ選手。自分達が行こうとする北京では人権弾圧が行われているし、それが世界平和によくない影響を及ぼしているとすれば、多少の銭金や名誉は捨ててでも私は参加しないと誰か言ってもよさそうなものだが、寡聞にしてそういう話は聞かない。

メディアの論調をみてもいろんなブログを見ても、「早く平和的な解決を」みたいなお花畑ばかりだけれど、自分達は小さいけれども何かできないのか、もう少し考えた方がよさそうなものだ。

デモに参加したってその効果は知れたもの(北京やモスクワでは何とも思わない)だが、中国やロシアの宣伝になる番組を見ないことぐらい誰にでもできる。そして、少なくとも、デモに参加する以上の効果は間違いなくある。

[Mar 5, 2022]

3団体統一世界ヘビー級チャンピオンであるオレクサンデル・ウシクも、ウクライナ防衛軍への参加を表明した。後列右だと思うけれど、前列右も似てる。兄弟かな。(写真: BOXING MASTER)