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将棋

146 第7期叡王戦、挑戦者は挑戦者は出口五段で新人王戦の再戦に [Apr 5, 2022]

第7期叡王戦挑戦者決定戦(2022/4/2)
出口若武五段 O – X 服部慎一郎四段

DWANGOの撤退で主催者が不二家に代わるごたごたがあり昨年の叡王戦は秋にトーナメントが行われたが、今年は例年の時期に戻った。

当然ニコニコの中継はなくなったものの、引き続きABEMAは決勝トーナメントをすべて中継するのでインターネットで全局見ることができる。しかし、今年のトーナメントは、そろそろ佳境と思って午後3時に見るとすでに終局後という対局が多かった。

持ち時間3時間のチェスクロックというのは、DWANGOの時代から変わらない。午後から夜の対局が午前中からになったからかと思ったが、それにしても持ち時間を相当余しての終局というのがよく分からない。特に高段者のあきらめがいい。

ひとつの理由は、段位別予選ということにあるのだろう。前年度ベスト4以外はタイトル保持者もA級在籍者もすべて予選からだから、今年は渡辺名人、永瀬王座を含めてビッグネームが軒並み予選落ちした。そして、段位別の勝ち上がりでは低段位者の方が激戦を勝ち抜いてくるから、高段位の予選突破者よりも勢いがある。

ただ、私が考えるにそれ以上に上位者の気分を重くしているのは、勝ち上がっても藤井叡王と戦わなくてはならないからではないかと思う。タイトル戦になる前の叡王戦で、優勝するとAI相手に戦わなくてはならなかったのと同じ悩みである。

さて、ベスト4に残った4棋士のうち、一方の山は船江恒平六段と服部慎一郎四段。まさに低段から勝ち上がった両者が進出してきた。

船江六段は2010年10月デビューで、順位戦初参加のC2で10戦全勝、すぐにC1に昇級昇段した逸材である。C1が長いが、4年前に藤井現竜王とともに9勝1敗で頭ハネされた不運もあった。若手棋戦の加古川青流戦とYAMADAチャレンジ杯に優勝実績がある。

服部四段は2020年4月デビュー。今期は絶好調で、すでに40勝をあげて勝ち数・勝率ともランキングベスト5以内に入っている。一回戦で矢代七段、二回戦では豊島九段相手に後手番で、しかも角換わりの難しい将棋を勝ち切った。

この二人の準決勝は、船江先手で矢倉急戦を選択。序盤はやや有利に進めたものの、中盤で疑問手が出て服部が逆転勝ちした。

もう一つの山でベスト4まで勝ち上がったのは、出口若武五段と佐藤天彦九段。出口五段は村田六段、斎藤慎太郎八段に勝った。2019年4月デビューの新鋭で、藤井現五冠と新人王戦決勝三番勝負を戦ったのは記憶に新しい。

最後にベスト4に勝ち上がったのは、天彦九段。糸谷八段、丸山九段とタイトル実績のある実力者を連破した。タイトル昇格前の第2期叡王で、優勝してBONANZAと戦った。名人失冠後は活躍の場から遠ざかっているが、今回は堂々のベスト4である。

この二人の準決勝は出口先手で横歩取り。終盤で、出口2枚竜対佐藤2枚馬の珍しい戦いとなったが、両者1分将棋の難しい将棋を出口五段が間違えずに勝ち切った。

これで決勝は五段対四段のフレッシュな挑戦者決定戦。両者居玉の矢倉急戦となる。と金5枚で先手となった服部四段が時間を使わないまま優勢となり、一時はAI評価で80対20の大差が付いた。

しかし、ここからしぶといのが出口五段。研究範囲でそのまま押し切るケースも多いのだが、悪くなってからしぶとく逆転する将棋も少なくない。でなければ、毎年勝ち数・勝率の上位には残れない。

この将棋も、下図の局面でもう土俵際のように思えるのだが、服部四段の▲2一金が大事をとったつもりが逆転を招いてしまった。ここは、アベマ解説陣も予想していた▲2三銀打がよかったようである。

出口五段は、タイトル挑戦により六段昇段。準決勝の天彦九段戦もそうだったが、残り時間が少なくても力技で逆転のある局面に持ち込むのが大変うまい。どことなく、昔の棋士を思い出させるようなキャラクターである。

藤井叡王との番勝負は4年前の新人王戦以来となる。藤井五冠相手では、悪くしたら終盤逆転は難しい。序盤に一工夫が必要になるだろう。

[Apr 5, 2022]

第7期叡王戦挑戦者決定戦。残り時間でもAI評価値でも劣勢だった出口五段が、終盤に入って逆転した。この局面では、服部四段は無理しなくてもいいと思って指した▲2一金だったと思うが、△1五歩▲4六飛△5四桂となり逆転した。△5四桂は飛車取りだけでなく△6六金からの詰めろになっている。