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半世紀前の話

340 客用布団 [Aug 18, 2022]

今年の春、地元印西市で江戸末期から昭和三十年代まで盛んだった印西大師八十八ヶ所を巡拝した。

その機会にいろいろ聞いたところでは、当時(私の年代が子供の頃である)、その時期になると親戚や知り合いが家に泊まりに来るし、集会所や青年館に泊まる人も多かったので布団や食事・お酒の用意もしたという。

なるほど、旧印西町や旧本埜村にはどこの集落にも集会所や青年館があって、しかもそこそこ大きいのはなぜだろうと思っていたが、そういう歴史があったのである。いまでも行事として続いてはいるものの、大勢が巡拝する訳ではない。

思い出すと、私の子供の頃も家に親戚が泊まりに来ることがあって、客用布団を7セットも8セットも用意していた。家の両親は田舎(東北)から出てきた人達だったので、そういうものだと思っていたけれど、いまでは客用布団などほんど使わない。

そもそも田舎から出てくる親戚などいないし、仮にいたとしてもビジネスホテルに泊まる人が大多数だろう。親子だって一緒にいると気を使うのに、親戚だのに気を使っていられない。ビジネスホテルの方が気が楽だ。

そして、昔は布団は打ち直し(中の綿を入れ替える)して繰り返し使ったけれども、いまや綿を入れ替えて使う人などほとんどいない。買い替えた方が安いし、清潔である。

そんなこんなで、昔だと商店街には布団屋さんは必ずあったものだが、いまではほとんど見ない。洋品店よりもっと少ないかもしれない。ほとんどの人は、通販で買うか、スーパーとかニトリに行く。

おそらく、布団で寝る人はこの先もどんどん減って、ベッドで寝るのが当たり前になるだろう。ワンルームに住む人だって、布団を使わずベッドを置く。押し入れというもの自体、近い将来なくなる可能性が大である。

布団で思い出すのは、山小屋では晴れると屋根とか地べたに布団を広げて干すことである。北岳に登った時、肩の小屋の屋根いっぱいに布団が干してあった。

おそらく、どこの山小屋も晴れた日には布団干しをしているだろう。そして、長らくお客さんを泊めていないにもかかわらず、丹沢の山奥にあるユーシンロッジでは、何年か前まで布団を干していたと聞いたことがある。

ユーシンロッジが休業して15年。丹沢湖方面からの道路が土砂崩れのまま復旧しないので、再開の目途は建たない。建物自体そろそろ無理だが、布団も使えないだろう。おそらく田舎の廃屋にも、同じように放置された布団がたくさんあるんだろうと思う。

[Aug 18, 2022]

半世紀前は田舎から東京に出てきた家族が親戚を泊めるのは当り前だったので、どこの家にも客用布団の用意はあったものでした。現代では、ほとんどみられません。