デフレ脱却はそんなにいいことですか?

おすすめ
この記事は約3分で読めます。

長年デフレ脱却と言ってきて、ウクライナ戦争で一気にインフレに振れた。電気・ガスから食料品・生活用品に波及し、体感では2~3割高くなっているのだが、年金を上げたくないものだから政府は統計数字を操作しているようだ。

デフレもインフレも貨幣vs財の交換比率の問題で、それ自体がいい悪いということはない。それぞれに有利なセクターと不利なセクターがあるだけで、年金生活者はもっとも不利なセクターである。(政府はもっとも有利)

以下は10年前、2013年1月の記事。いまにしてみれば、退職後すぐにインフレにならなかったのはたいへんありがたいことだった。
——————————————

昨年末の総選挙の結果、自民・公明の新連立与党が衆議院の多数を占めることとなった。これだけ勝ってもなぜ自民単独政権ができないのかという疑問はさておき、安倍新政権はデフレ脱却を最重要課題と考えているようである。円安と株高が急激に進んでいるところをみると、マーケットもこれを歓迎しているようである。

ところで、デフレ脱却がそんなにいいことなのかどうか、個人的には首をかしげるところがあるので、今回はその話。

家の奥さんをみていると、世の中の多くの人は、新聞とかTVで言っていることはそんなに間違っていないだろうと思うらしいのだが、彼らは初めから何を言うかが決まっており、その結論は自分の頭で考えている訳ではない。新聞もTVも、広告主の意向で意見が決まる。ちなみに、NHKの広告主は受信料を払っている人ではなく、総務省と国会議員である。

世間の論調の多くは「デフレは悪い」ということだが、そもそもインフレとかデフレは経済学的には「貨幣vs財の交換比率」の問題だから、そのこと自体がいい悪いという訳ではない。それぞれ有利なセクターと不利なセクターがいるだけである。まして、操作できるのは日本国内の金融指標(金利とか通貨量)なので、世界経済の大きな動きには対応しようがない。

今は景気が悪いというのが一般的な認識で、確かにバブルの時代と比べるとおカネの流れやモノの流れが滞っているように感じられる。しかし、その原因がデフレにあって、インフレになれば景気が良くなるという見方はかなり甘い。それに、インフレ歓迎論が盛んであるが、本当のことを言うと、経済的に弱者とされるセクターはインフレになれば不利になるのである。

考えてみれば当たり前のことで、同じ収入で年々より多くのモノが買えるのがデフレである。インフレになれば、収入が変わらないのにモノの値段が上がる。従ってより少ないモノしか手に入らない。過去の内外における歴史を振り返っても、生活不安、世情不安が大きくなるのはインフレの場合が多いのである。

もしかしたら、インフレになるとスライドして時給が上がると思っているのかもしれないが、それはちょっと(というか、かなり)甘くはないか。確かに物価スライドで年金額等は調整されるが、物価が先で調整が後である。ましてや、労働組合が強かった昔と違い、サラリーマンの固定給に反映されるとは限らない。雇用形態も多様化しているし。

景気がよくないのはデフレのせいとされるのだが、インフレになったところで、おそらく時給も上がらないし中小企業の仕事も増えない。気分を変えようというレベルでインフレを歓迎する論調が強いのだが、おそらくそれは悪いチョイスとなるだろう。総量規制でバブルをハードランディングさせ、今日の不況を招いた財務省がまたまた影響を読み誤る可能性は大である。

私にとってバブルの時期は、やたらとタクシーがつかまらなかったのと毎年電車賃が上がった記憶が鮮明だけれど、あの時代をなつかしがる人がいることは理解できないではないし、ましてバブルの頃はまだ生まれてないという人も少なくないのである。インフレ誘導は、きっと行き過ぎてしまうだろうと思う。

われわれにできることは、そうした将来のリスクを勘定に入れて、それでも破たんしないように生活していくだけである。

p.s. 当時の「何となく思うこと」、時事問題その他の考察記事はこちら

にほんブログ村 ニュースブログ ニュース感想へ
にほんブログ村 シニア日記ブログ 60歳代へ